『Cory Wong解体新書』どこよりも詳しいCory Wong――経歴・奏法・参加音源紹介(2)ソロ名義、ゲスト参加まとめ
KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。今回は「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」マガジンの、7回目の連載になる。では、講義をはじめよう。
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ミニマルファンクバンド、Vulfpeck(ヴォルフペック)のギターは、現在、Cory Wong(コリー・ウォン)というギタリストが担っている。
前回は、彼の経歴、ジャズミュージシャンだった彼と、プリンスのバンドNPGのメンバーやVulfpeckとの出会い、そして同バンドでの活躍をまとめた。
今回は、彼のソロ名義、リーダーバンドについてまとめて行きたい。
Cory Wongバンド始動(2016年~)
世界的な成功を収めているVulfpeckだが、実はリーダーのJackの提案で、Vulfpeckはみんなが自分の従来の活動ができるようなシステムで運営されているため、Coryは同時に自分のファンク・プロジェクトを進めていくことができた。
まず、2016年にCory Wong名義で「MSP, Pt. 1」をリリース。
この作品は前回の連載で紹介したプリンスのバックバンドNPGから、マイケル・ブランド(ds)とソニー・T(bs)、さらにNPGのキーボーディスト、トミー・バーバレラ(key)が参加。作曲、プロデュースにもマイケル・ブランドの名前が最初に入っており、実質的に準NPGのような作品になっている。まさに細部までプリンス的なグルーヴ(ミネアポリスファンク)であり、最高にかっこいい。いかにマイケル・ブランドがCoryをプッシュしていたかが伝わってくる。
そしてVulfpeckの「The Beautiful Game」に参加したあと、2017年からいよいよ自身の「ファンクバンド」を本格的にスタートさせる。
新しいバンドはYouTubeを戦略的に使うことが決まり…バンド名は「Cory Wong and The Green Screen Band」に決まった。
このバンドは、VulfpeckリーダーのJack Strattonによるセルフ・プロデュース術を教わったCoryが、自分でもセルフ・プロデュースが行えるようになるまで、ステップ・アップを行うためのプロジェクトだった。
まずは、バンドのコンセプトとして、Vulfpeck同様、YouTube用のMVを積極的に作っていくことが決定する。
動画を見てもらえば分かるとおり、グリーンスクリーンを使ってクロマキー撮影をして、面白いPVを作ってしまおう!というコンセプトのファンクバンドである。非常にわかりやすい。
だが、サウンドは全く手が抜かれていない。例えばこの曲は、Vulfpeckで繋がったスゴ腕シンガーのAntwaun Stanley、そしてNPGのホーン隊「ホーンヘッズ」が全面参加している。
また、現在の盟友となるCody Fry(vo, key)も、このアルバムから参加している。
かと思えば、全ての楽器を自分で弾いている曲もあったり…才能が止まらない。
そしてCoryはこれらの曲をアルバムにするために、クラウドファンディングの「Kickstarter」を用いた。「Kickstarter」も、Jackがデビュー前から使っているサービスである。
これは面白いので是非実際のリンクを見てもらいたいのだが…。だいたいこんなクラウドファンディングになっていた。
「やあみんな!俺たちのバンドのCDを作るぜ。支援してくれた額に応じて、サービスは変わる。10ドルで音源DL,20ドルでサイン付きCDも、40ドルでTシャツも付けよう。そして!75ドルで、アルバムリリース記念で『Cory Wong'sピザパーティー』にご招待だ!」
アルバムのリリースにおけるライブイベントのテーマを「ピザパーティー」に設定し、「Wong's Pizza」のTシャツを作成。
👇説明動画
ちなみに3000ドル以上で、Coryのギターをあげちゃうというリターンになっていたが、さすがにそれは応募者がいなかった。
Jack Strattonの友人の会社で、Vulf MonoとVulf Sansフォントを作成したOh No Type Co.に、「Wong's Pizza」Tシャツのデザインもしてもらい、Jack Strattonが持つVulfpeckの人脈と経験をフルに活用したこのクラウドファンディングは大成功。100ドルがゴールなのに、実に167倍――集まったのは16,781ドルという結果になった。
この一連のリリースに伴う成功で、セルフ・プロデュースの実力をつけたCoryは次なるプロジェクトとして、いよいよ「Cory Wong」ソロ名義での活動に入っていく。
「The Optimist」(2018年)
2017年の「Cory Wong and The Green Screen Band」の成功を経て、いよいよ彼はソロ名義の作品に取り掛かった。それが2018年発売の「The Optimist」だ。
Cory Wongは、非常に陽気なキャラクターで知られている。MSGライブで、飛び蹴りをしながら登場したり、さまざまな動画で見ることができる彼の姿はとても元気で、ハッピーである。
上記のインタビューでの記者の質問のように、高校時代の事件がCoryの性格を変えた…というわけではないかもしれないが、彼がより人生に深く向き合い、与えられた時間に感謝し、大切に思っているのは事実だろう。それが、タイトルの「The Optimist」に表れている。
このアルバムから、動画の撮影がVulfpeck同様、レコーディング風景をそのまま撮影するようになり(ところどころ、以前のクロマキー撮影も使ってオリジナリティーを出しているのが面白い)、さらにVulfpeckのコンテンツとの親和性が高まった。
サウンドにも、Vulfpeckがずっと使っている「Vulf Compresor」が使われている。そのためVulfpeckと同じく、狭い部屋での密集したレコーディング(一発録音)でもまったく問題がないクオリティになっている。
またこのインタビューによれば、Coryはたった6日間のレコーディングでこのアルバムを完成させた。そして曲数が少ないのも、おそらくVulfpeckに参加したことがきっかけになっていると思われる。
この発想は、やはりVulfpeckのリーダー、Jack Strattonの思想に非常に近いものがある。より小さい素材、より短い曲へとシフトするのは彼の引き算ファンクの得意技であり、また、JackがCoryを呼んで同時期に発足させたThe Fearless Flyersにもその精神は強く表れている。
このアルバムでは前作同様、VulfpeckファミリーからAntwaun Stanley(vo)、盟友のCody Fry(key)、そしてNPGのマイケル・ブランド(ds)、ソニーT(bs)が参加。
さらに、ミネアポリス出身の有名プレイヤー、Ricky Peterson(key)(プリンスの「Gold Experience」「Emancipation」「Crystal Ball」に参加、さらに「The Most Beautiful Girl In The World」をプリンスと共同プロデュース!)も参加している。
「Cory Wong and The Green Screen Band」から引き続き、NPGの「ホーンヘッズ」も参加。
Robbie Wulfsohn(vo)も「Light As Anything」にゲスト参加している。このあたりの楽曲もかなり高いクオリティーになっているのでおすすめである。
ちなみに、この曲については楽曲制作についてのプロセスを公開している。
この曲では、Logicでデモ音源を作成し、参加メンバーにmp3で送信。内容を覚えてもらってレコーディングに入ったようだ。
また、この動画では、自分の古いiphoneを使って撮影した動画をMVに使っていることが名言されている。
このiphoneの動画を使って作られたMVが、こちらだ。
明らかにVulfpeck的な画質のMVになっており、暗にこのiphoneでの撮影がJack Strattonから教えてもらったものであろうことが分かる。
アルバム「The Optimist」の参加クレジットはこちらをクリック。
この作品の前後から、Coryは多くのインタビューに答えたり、動画インタビューで奏法の解説などもするようになったことで、さらにギタリストとしての評価が高まったように思う。
この後、2018年末~2019年初頭にかけて、ヨーロッパ、アメリカ、カナダなどをツアー。多数のライブレコーディングを行い、配信サービスでライブ音源公開や、YouTubeで動画公開を行った。
👇このライブアルバムシリーズは、計3枚リリースされている。
👇この動画で、Coryの驚異的なMCの上手さ、またライブの進め方のうまさも分かる。インストの楽曲を飽きさせずに聞かせる工夫、スクリーンを使った演出などもうまい。ちなみにホーンヘッズが参加している。
「Motivational Music For The Syncopated Soul」 (2019)「Elevator Music For An Elevated Mood」(2020)
2019年はソロ名義ツアーで幕を開け、さらにVulfpeckとしても、9月のマディソン・スクエア・ガーデンに自分たちだけで14000人を集めるという大仕事があり、The Fearless Flyersの新作も出すなど、Coryにとっても非常に忙しい年になった。しかし、そんな中でも彼は精力的に働き、新作を発表していく。
2019年に制作した楽曲、レコーディングは、ちょうど2枚ぶんのアルバムになり、対となる作品としてリリースされた。それが2019年の8月2日リリース「Motivational Music For The Syncopated Soul」と、2020年1月10日リリースの「Elevator Music For An Elevated Mood」である。
アルバムジャケットは両方とも同じデザイナー、Sebastian Whiteの手によるものだ。彼は以前のCoryのアルバム、またVulfpeckのTheo Katzmanのソロ作品のアートワークも担当している。
今回のCoryの「Motivational Music For The Syncopated Soul」と「Elevator Music For An Elevated Mood」も、過去のCoryの作品を支えたアーティスト、そして新しく広げた世界のアーティスとの充実したコラボレーション作品になっている。
NPGのマイケル・ブランド(ds)とソニー・T(bs)、ホーンヘッズ、そしてRicky Peterson(key)。
さらにVulfpeckファミリーから、Nate Smith(ds)、Dave Koz(sax)。
そして、極めつけに、2019年の超ビッグネーム、Tom Mischが参加した。
Tom Mischはイギリス在住のギタリストであり、2018年の「Disco Yes」などが驚異的な人気を得ているプロデューサーでもある。彼もCory同様、タイトかつミニマルなプレイが得意なので、お互いがお互いをずっと気にしていたうえでの邂逅となったのだろう。
今回のコラボ曲では、Tomの借りたAirbnbの裏のスタジオ(まったく、インスタで連絡を取り合い、Airbnbの裏のスタジオで、Logic内蔵のエフェクターで録音をするなんて…。どこまでも2019年的な話だ!)でまず、二人のギターのみが録音された。
それに後からCoryがベース、シンセを重ね、さらにNate Smithがドラムを重ねて曲が完成している。この曲がCory、Tom、Nateの三人のみのグルーヴで出来上がっていることを考えると、豪華すぎる一曲だ。(動画を再掲しておく)
他にも、ミネアポリスのスゴ腕シンガー、Caleb Hawleyを入れた、NPGメンバー勢ぞろいの楽曲(物凄い高いクオリティでプリンスのミネアポリスファンクを再現している――参加メンバーの半分以上が元プリンスバンドなのだからある意味当然かもしれないが)「Limited World」や、
同メンバーでインストの演奏をして、最近のライブ定番曲になっている「Lunchtime」、
Emily C Browningをメインボーカル、コーラスにAntwaun Stanleyを入れたヤマタツ風シティポップ「Starting Line」など、多数のコラボ楽曲がある。
ファンクばかりかと思えば、そうでもない。グラミー賞獲得の人気ピアニスト、Jon Batisteを入れたメセニー風の楽曲、「Home」も録音している。個人的に、私が同アルバムで一番よく聴いている曲だ。
ここまでが、2019年の「Motivational Music For The Syncopated Soul」の楽曲である。次に、2020年1月10日リリースの「Elevator Music For An Elevated Mood」の曲に移ろう。
「Elevator Music For An Elevated Mood」は穏やかな曲がより多く含まれている。そもそも、「Elevator Music」というのが、アメリカで「店内BGM」「イージーリスニング」などをを指す言葉だ。
このアルバムはなんといっても、盟友Cory Fry(vo,key)とのコラボ楽曲、MV撮影&公開がファンの間で話題となった。ついにCoryのアルバムに、Codyがメインヴォーカルの曲が収録されたのだ。
完全に時代に乗った演出、ストーリー、楽曲で、古き良きアメリカの70~80年代を蘇らせるMVとなっている。演奏も、Cory WongのツアーのメンバーにNate Smith(ds)、そしてホーンヘッズ。完璧だ。
勝負を挑みつづけるも負けつづけてしまうCody、コミカルに勝ち続けるCory。そして最後は仲良くなって…というストーリー。見ているだけで面白いし、そこに潜んでいるメッセージも見事だ。しかも途中、Coryがビリヤードが上手いという意外な素顔も観れる。ちなみに、MV監督のBen KadieはCoryの「 Today I'm Gonna Get Myself A Real Job」でも監督を担当している。
途中の管楽器隊によるブリッジ部分、ここはまさにプリンスのミネアポリスファンクだ。プリンスバンドのNPGのホーン隊(ホーンヘッズ)がアレンジしてそのまま演奏しているのだから納得である。また、ギターソロ部分も、Coryが入魂のプリンス的なソロを弾いている。現代の新曲でこうやって本物のミネアポリスファンクを聴けるだけでも感動してしまう。
そしてこのアルバムは、やはりイージーリスニングサックス奏者として有名なDave Kozとのコラボ楽曲が入っていることが重要である。Kozは「Elevator Music」界の重鎮なので、今回のアルバムで特に大事な役割を果たしている。
この曲のyoutubeのメンバー記載で、Kozの記載が面白い。
「Elevator Musicの皇帝」。この楽曲がKozをフィーチャーし、Kozの得意とするElevator Music(店内BGM)に敬意を払い、その世界を再現することを目的としていることの表れだ。YouTubeのコメント欄のCoryの投稿によれば、この録音はテイク1で完了したらしい。一発で曲がうまく行って、興奮したCoryはひとり立ち上がり「Go Tommy Bahama!Go Tommy Bahama!」と盛り上がっている(Tommy Bahamaは有名レストラン)。
少し話が逸れるが、何故かKozは「一緒にドライブしてみたシリーズ」の動画を多数アップしており、現在シーズン2。「Coryとドライブしてみた」動画もアップされている。
意外に有名ミュージシャンが多数出演しており、Candy Dulfer、TOPの創設者であり実質的なリーダー、Emilio Castilloなども一緒にドライブしている。正直、再生回数があまり多くないので、完全にKozの趣味だと思われる。非常に好感が持てる。
話を戻そう。
他にも、女性vo&keyのPhoebe Katisをゲストに呼んだ「Treehouse」など、やはりマイルドな「Elevator Music」の楽曲が並んでいる。この曲はとてもPOPで、Coryのアルバムであることを忘れそうになる。しかし作曲のセンスは非常によく、Bメロのコード進行など定番的なようであるが、とてもおしゃれだ。
以上が、2019~2020年に発表された連作に関するまとめだ。「Motivational Music For The Syncopated Soul」のクレジットはこちら、「Elevator Music For An Elevated Mood」のクレジットはこちらを参照のこと。
そして2020年、CoryはMetropole Orkestとのコラボライブアルバム、「Live In Amsterdam」を発表した。
Metropole Orkestはジャズのビッグバンドと交響楽団を組み合わせ、52人の音楽家により構成される、世界最大規模の混成オーケストラだ。1945年に創設、国営放送局の援助のもと、その仕事は多岐にわたり、作品は4度のグラミー賞を獲得。近年はジョン・スコフィールド、イヴァン・リンス、Snarky Puppyとのコラボレーション作品が高い評価を受けている。つまりMetropole Orkestと一緒にアルバムを出せること自体が、高いステータスとなるのだ。
もはやVulfpeck単体と並ぶような、成功したミュージシャンとしての証がこのアルバムである。
2020年5月~7月の活動
※2020/07/07追記
さらに5月29日、Nate Smith(ds)、Jon Batiste(p)、Sam Yahel(org)を迎え、ヒーリング・アルバム「Medetations」をリリース。Jon Batisteは前出の「HOME」でも共演した仲だ。
アルバムリリースの直前、5月25日に、Coryが住むミネアポリスでGeorge Floyd氏が警察官の不当な暴力により命を落とし、街では抗議のデモが行われ、それはすぐに全米的なデモと暴動に発展した。そのタイミングでの作品のリリースとなった。ミネアポリスに住み、黒人ミュージシャンのコミュニティに属している彼にとって、今回の事件が痛ましいものであったであろうことは分かる。リリースにあたるFBコメントで、わずかに事件について触れていた。👇
ちなみに本作のジャケットは、ドイツのジャズレーベル、ECMの作品のオマージュとなっている。内容的にもECMのマインドが受け継がれているため、ジャケットで似せてくるのも納得だ。
続く7月3日、ビートルズのカヴァー「Blackbird」をリリース。
これは原曲が公民権運動に関連したプロテスト・ソングであるため、もしかしたらBlack Lives Matterに関係した選曲だったのかもしれない。
この曲でCoryは「 Today I'm Gonna Get Myself A Real Job」に続いて、2曲目となる自身のヴォーカルを披露。
FBでミックス、マスタリングについての動画も公開した。👇
7月6日、Neural DSPと共同開発した「Archetype: Cory Wong」をリリース。
PCで使えるギタープラグインで、これを用いてレコーディングを行うと、Coryの音になれる!というソフトだ。FBには本人による1時間半の解説動画もある。今回のプラグインの内容は主に、3台のアンプ、3台のキャビネット、それぞれに9バンドのEQ。さらに、Coryが監修したエンベロープ・フィルターやオートワウを含むペダルシミュだ。
こういうソフトを作るという発想はVulfpeckにおけるJackとRob、Devinの「Vulf Compressor」と共通するものがある。前述のTom MischのレコーディングではPCのLogicに内蔵されていたプラグインを使っていたが、この「Archetype: Cory Wong」があれば、もしかしたらあのレコーディングはさらに良い音で完成されていたのかもしれない。
そして7月10日、突然ニューアルバム「Trail Songs : Dusk」がリリースされた。
これは、先ほども紹介したビートルズのカヴァー「Blackbird」を含む全7曲。全てアコースティックギターをメインにして、Cory自身がこれまでとは全く異なったスタイルを表現するアルバムとなっている。
本人が語っている通り、これまでのキャリアとは全く違うスタイルのアコースティック・ヒーリングミュージックのアルバムだが、ロックダウンの状況下において、この作品が彼なりの活動の在り方だったのだろう。5月のアルバム「Medetations」のように、どこかECM的でもあり、どこか瞑想的で、リラックスして聴くことができる。確かに今はエネルギーを爆発させるタイミングではないので、このリリースは時代の流れに合っている、とも思える。殺伐としてきている世の中で、ほっと一息つくことができる作品だ。
レコーディングの詳細や意図については、本人が行った一時間以上のライブ配信👇で詳しく語られている。本人が実際のProToolsを使って楽曲解説をしてくれているので、ファンは必見となっている。
特に、「Blackbird」で歌声を披露したことについて、自分がヴォーカリストだと宣言するわけではないが、歌うことは楽しいし、自分の「語り掛けるような歌声」を楽しんでいるとコメントしている。例えばリンゴ・スターと、セサミ・ストリートのカーミット、そしてバンドの「Cake」が合わさったような声…の一部が、自分の歌声のキャラクターだと思う、とも語っている。
(追記終わり)
ゲスト参加作品まとめ
CoryはVulfpeck以外のアーティストの作品にも参加し、非常に素晴らしい演奏を残している。そちらも一緒に紹介して、今回の講義を終わりにしたい。長くなるが、資料としての意味もあるので、今回は確認できる限り、執筆時点での全てのゲスト作品を網羅した。
まず、盟友Cody Fry(vo,key)との作品だ。Cody Fryは、Coryの2017年以降の全ての作品に参加している。
今回はCody Fry, Cory Wong, & Dynamo名義で、2曲をリリース。
この2曲は非常に高いクオリティになっており、Coryのファンなら外すことができない名曲だと思う。「Want Me Back」はMetropole Orkestとのライブでも披露されている。CoryはMetropole Orkestとの共演にわざわざCodyを連れて行って、彼の曲をセットリストに組み込んでいるのである。これが盟友でなくて何だろうか。
ちなみに、なんとこの曲は楽譜が販売されている。Cody FryのHPで購入可能だ。フルバンド編成・本人記譜の譜面である(私も購入した)。
また、レゲエシンガーのRion (Ryan Liestman)の曲に、ソニーT(bs)、マイケル・ブランド(ds)と参加。
ロンドンの4人組「PREP」の新作に、なんと憧れのポール・ジャクソンJr.と一緒に参加。
またアメリカのテレビ番組、American Idolで有名になったシンガーソングライター、Alex Prestonの楽曲にも参加している。
ニューヨークのスゴ腕ベーシストEvan Marienのソロプロジェクトアルバム、「Emar, Vol.3」にも参加した。この楽曲は非常にCory的なデジタル・ファンクで、私も大好きな1曲だ。同アルバムにはLouis Coleも参加している。
オーストラリアのマルチプレイヤー、Benjamin Harrisonともコラボレーションを行った。これもCory的なタイトなグルーヴのファンクだ。(Benjamin Harrisonが2020年に出したアルバム「Tokyo Blues」も名作である。ジャケットが面白いので、よかったらリンク先を見ていただきたい)
1995年から活動するファンクバンド、Redtenbacher's Funkestraにもゲスト参加した。こちらはなんと、Stanton Moore(ds)と一緒に演奏(さらにオルガン奏者のDave Linemaも参加)。こちらは2000年代的なジャムバンドの演奏になっており、こういう楽曲に参加するCoryは逆に新鮮である。
アトランタのファンク・ロックバンド、Hedonistasにも参加。こちらは最初はメロウに始まるが、途中からちゃんとCoryお得意のファンキー路線にシフトする。なかなかどうして、このバンドも素晴らしい。
地元ミネアポリスの新鋭ネオソウルバンド、Nooky Jonesにも参加。この曲もタイトなグルーヴ、ミニマルなホーンと、かなりCoryの本質に似たサウンドを持っている。是非これも聴いていただきたい。
そして…Coryの活動初期、ジャズ時代に共演したPeter Kogan(ds)のアルバムに、2018年に再び参加。実に5年ぶりの現代ジャズの演奏を発表する機会となったのだが、なんとまったく衰えていない。(Coryのソロからの再生位置にしてあるので、是非ご確認いただきたい👇)
最後に
以上が、2020年7月現在の、Cory Wongについてのまとめである。これからも彼は素晴らしい経歴を重ねていくであろうし、その時にまたこの記事に追記できると思うと、今からワクワクする。
最後に、彼のインタビューで、彼のハッピーでポジティブなキャラクターを象徴するような内容があったので、そこを紹介して終わりにしたい。
以上、Dr.ファンクシッテルーの講義にお付き合いいただき、ありがとう。
次回「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」は、リーダーJack Strattonのソロプロジェクトについてだ。お楽しみに。
◆著者◆
Dr.ファンクシッテルー
宇宙からやってきたファンク研究家、音楽ライター。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。
◇既刊情報◇
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