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経験のない厄災に備えるということ

こんにちは、Dr FJです。

今日は、ロシアがウクライナに侵攻したことから着想したことについてお話したいと思います。


 今週、ロシアがウクライナに侵攻しました。私は国際情勢の事情にそこまで詳しくはありませんが、現段階の認識としてはウクライナがNATO加入を目指したところ、隣国がNATO加盟国になることを嫌ったロシアが『自衛のため』に侵攻したのだと思っています。そして、これは今後の世界の情勢に強い影響を与えるのではないかと思ったのは、実はウクライナは旧ソ連崩壊直後には世界第3位の核保有国であったのだが、1994年にアメリカ、ロシア、イギリスなどとブダペスト覚書と呼ばれる協定書に署名し、保有する核兵器を全てロシアに返還していたという事実です。


 この覚書の結果、当該3国は安全保障をウクライナに提供するという事になっていたのですが…現状はこのような悲惨な状況で、ロシア軍から無慈悲に侵略されているのが現実ということになってしまっています。この結果を見れば北朝鮮が核放棄をすることなんて絶対ないことが明白で彼らが取った方針は正しいということになりますし、今後も同じようなことを考える国が次々と現れてくることは想像に固くありません。中東やアフリカなど、隣国との関係が良くない国々がアメリカが世界の警察として正義をもたらすパックス・アメリカーナが幻想だと気づいた今、何をしていくのかを考えると怖くなります。


 そして、このような情勢の中で我が国日本として気になるのは、『憲法第9条を守って平和外交をしていけばいい』と言ったり『自衛隊は不要/縮小が必要』『米軍基地は不要』とこれまでずっと声高に叫んできた人たちがどのような反応をしているかです。代表的な自衛隊縮小論者である日本共産党委員長の志位さんは

なんてことをおっしゃっています。ウヨクの方々は『現在の日本国憲法は占領軍から押し付けられた彼らのための憲法だ!!』なんて以前から批判していますが、それに対して『えぇ、そうなんですよ』と100%の回答をされていると言えますね。もしかしたら深い考察がその背後にはあるのかもしれませんが、私程度の読解力だと普通に『その理屈だと日本が侵略されるのは仕方ないってことですか?』ということになっています。


 アメリカ軍の撤退、日米同盟の廃止、自衛隊縮小/廃止を訴える社民党の方々も対応に苦慮されています。


 中途半端にロシアを持ち上げた記事を掲載しては消してを何度か繰り返しておられます。安全保障を提供するというただの約束は簡単に反故にされるという現実の中で、米軍基地が実際に国内にあることの重要性に対してどう反論するのか、責任ある政治政党として見せていただきたいなとは思います。


 ただ…以上の話はその方面では全くの素人の私が思うことで真偽の程は定かではないのでこのくらいにしておきますが、今回の件で一番感じたのは『10回に1回、何十年に1回の危機は実際に起こりうる』ということ、そして、それに対して備えることは非常に難しいということです。人の感覚というものは非常に曖昧なもので、目の前で2,3回うまくいくところを見せられたら『あ、この方法はいい方法なんだ』と思ってしまいます。


 実は、『俺は試験管振ってるより実臨床で患者を治したい臨床家なんだ!!』と言ってあまり論文を書いたり読んだりしない脳筋なお医者さんって結構います。えぇ、特に医者の中でも脳筋の代表格とされる整形外科には多かったりします(笑)。こういう人たちは、勉強会や学会の場でも『私の経験によると…』『この方法でやって困ったことはありません!!』と、断定口調でご自身の経験の正しさを訴えておられることが多く、私は正直少し苦手な方々です。実際の医療現場で治療をしていると、患者さんの中には教科書には載っていない様々な因子が複雑に絡み合っていて治療方針を決定するのに難渋するケースがあります。そしてそのような時、もちろん疾患の種類や状態によってその比率は異なりますが、一般的には10人に1人が術後亡くなってしまうような手術はするべきではないと思いますが、実際には10回中9回『成功したぞ、ドヤ』と言われると反論しにくくなるのが人間の感覚です。こういう感覚を排して客観的に判断するためにdataを取ったり統計学的解析をしたりするのが臨床医学なのですが、一般の方々の中にはこの話を理解せず『科学では証明されていない、でも(知ってる人だけが知ってる)有効な俺の治療法』に飛びついたりする人がいるのは残念なことです。『科学的』であることを『理屈がわかっていること』と勘違いしている人が多いのですが、実際にはそのメカニズムがわかっていなくても、効果がきちんと示せるdataがあるならそれは『科学的』に良い治療とされるんですけどね。科学的にコロナに対して有効性が示せなかったイベルメクチンを『それでも自分はこれで治療して治している実感がある』と主張されているお医者さんもおられましたが、それが間違いだというのはこういうことなんです。


 そして、これは投資の世界にも当てはまりそうです。この10年間の右肩上がりのチャートを見て学資保険を解約してレバナス積立をしたり、金融資産を持っていなくても融資が引けるからということで4.5%でフルローンで物件を購入したり、保険もかけずに危ないDIYをしたり…。目の前でうまくいっているところを少し見せられると、人は簡単にそれを正しいと信じてしまうものです。自分の少ない経験の中での成功を真理だと勘違いして『俺の投資理論』を披露する人、ひどいとそれを投資塾としてマネタイズするなんて人まで現れてしまいますが、これも人間の近視眼的にものを見がちな性質によるものなんですね。特に、その中でも結果が出るのに時間がかかる不動産投資は、正しさの証明のコストが高いと言えます。


 悪性のインフレ、東アジアでの軍事危機、本格的な少子高齢化の悪影響、日本の財政悪化…。これまで考えてはいたけれどどこか遠い世界の話のようであったこれらの厄災が現実になる可能性をみんなが感じ始めました。戦後ずっと戦争はなかったから、財政破綻は結局してないから、インフレはずっと起こっていなかったから…。我々がこれまで実際には経験したことのないことが次々に起こりうる状況の中で、我々はどんな選択をしていけばよいのか。奇をてらった場当たり的な『俺の方法』に惑わされることなく、歴史を学び基本に忠実に、でもその中でこれまでと変えるべきところは変える賢い選択をしていきたいですね。

 …ま、それが出来れば苦労はしないってくらい難しいことですけど。なんにせよ、罪もない人の命が無慈悲に失われていくことは間違いなくいむべきこと。事態が一刻も早く収束することを一人の人間として切に願っております。


まとめ

  • ウクライナは旧ソ連崩壊後核保有国であったが、それをアメリカやロシアが安全保障を提供するということで放棄した28年後の今年、ロシアに侵略を受けることとなった。

  • 人の感覚はそもそも軽薄でその場の状況に流されやすく、目の前で2,3回うまくいった事例を見るとそれがいい方法だと言って飛びつきがち。

  • 安易な『俺の方法』に飛びつくことなく、歴史から学び、じっくりと基本から理解して行くことが大事。


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