酒の肴
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結い柳
奈良京都の関西を離れてから、もう25年以上経つんやけど郷里に戻りたいと思うことは一度もなかったんどす。
こっち(横浜)来てからは
最初の頃は言葉のイントネーションがまだ関西弁やったから、田舎もんや思われるのが恥ずかしかしいて、あんまりしゃべらへんようにしてたんどす。
せやけどそういうわけにもいかへんのでそのうち標準語になれてくるとこんどは「東北の人ですか?」って言われるようになって、なんでやろ?思たら色が白いしおっとりしてるからやていわはるん。
せやけど、たまにこころの中では関西の言葉になるんやけどもしかしたら考え方とかも
うちは西のほうの性格なんやろか?思うんどす。
今はほとんど言われへんけど最初職場ですぐによう関西の人やね、って言われたんやけど赤くなったら
「どうしてかわいいのに?
東の男と西の女、いいじゃない!」て、いうてくれはるんどす。
なんかうれしいんやろか、わからへんけど。
これはものすご思たんやけど西の男の人と違うて、関東の男の人は紳士的やなぁ、上品やし、って思いましてん。ええなぁって。
せやけどうちはあんまり恋もしてこなかったんやけどもし誰かと結婚してたら今頃どんな人生やったんやろって時々思うんどす。
一応花嫁道具みたいな着物もあつらえたのに
着ることなんてほんまあらへんし。
10代のころ、こんな反物選んだんや!思たらその頃イメージしてた着物きてお出かけいうたら茶道のお茶会、
それやったら地味な付け下げぐらいでええかな?思て。椿やったら初釜と2月ぐらいまではいけるかなて。
総絞りはこれは訪問着でよそ行きにしよ、思てええんやけどあとで絞りは高いけど
わりとカジュアルなん知ったり。
10代のころに教えてくれはったお茶の先生やお花の先生のこと思い出しますのんや。
お花の先生は優しかったな、先生お茶もやってはって茶花をいけたりもするゆうてはったし。今日はお点前(おてまえ)完璧や思たらそれをお茶の先生にそう思てるやろ?いわれて恥かいたいうてはった。お花の先生(お茶の先生よりずっと高齢)でもそんなことあるやなんて!厳しいなぁて思うたんどす。
お茶の先生はめちゃくちゃ厳しい先生やったんどす。
まず立ち方から「つま立て(つま先から)して立ち上がるもんや!」ってそこからよう怒られて、脚を尺差しで叩かれましたん。クーラーのない部屋で暑い日にノートで仰いでたら行儀悪いって言われたり、ふすま開けてご挨拶する時毎回
「お暑うございます」いうたら
あんたはそれしか思いつかへんのか!言われたりようしました。
うちも若かったから色々思うことはあったんどす。
先生の花街事情
お茶の先生は女性やったんやけど先生はよくお茶会のおよばれでお点前(おてまえ)をしに行ったりしてはって
その話をようしてくれはったんどす。
京都への出張が多い先生で仕事が終わるとかならずお座敷で舞妓さんをよぶいわはる。
うちにしてみたら女性やのに?舞妓さんにお酌してもらう先生の気持ちがあんまりわからへんのでなんでやろ?とよう思いました。
先生はきれいなものに囲まれて食事するのが好きやったんやろか?今の私の年でもやっぱり舞妓さんよんでお酌してほしいとはあんまり思わへんので日本舞踊を肴に食事したかったんやろか、わからへんけど。
ある時、夏の暑い日に舞妓さんをよんで
その舞妓さんは遅れる思て急いで来はったみたいで首の襟足のところが汗をかいていて何度も「かんにんどすえ、かんにんどすえ、」って謝らはるのを先生はすごく不快やった、行儀の悪いって怒ってはって
そら、あんな着物着て暑い日に遅れたらあかん思て急いで来はったんやったら汗もかくやろし、ってうちは思たんやけど
先生はあんな舞妓は最低や!みたいにいわはる。
汗をどうも手で拭いてたみたいで
それも許せなかったらしいんやけど
難しい人やなぁ思いましてん。
先生は成金も許せへんみたいで
大金持ちのお嬢様の結婚が決まって嫁ぎ先の
お姑さんは自宅に茶室をもってはるらしく、お嬢様はお茶の心得がなかったんどす。
お嬢様のお父様が「金は糸目つけへん、なんぼでも出すからせめて娘に茶の飲み方だけでも教えてやってくれ」と懇願されたんやけど
先生は怒りにうち震えて
「お茶のいただき方は最後に学ぶのであって
お点前を1度もしたことのない者には教えられない」と断ったっていわはるんどす!
そんなん、すぐにお嫁入りが決まってんのに教えてあげはったらええのに、って思うたんやけどそんなん言おうもんならとばっちり受けるので言わへんかったけど。
茶懐石でお茶碗にごはんをひとくち残さなあかんのやけど「あの人ぜんぶ食べはった!いいですか?あれが悪い見本ですわ」私はこの先生の教え方はどうなんやろ?といつも思うたんやけど、それがやねんけど
この年になってそれがもしかしたら本当なのかもしれへんな、って思いますのんや。
Tuesday