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銀座デパ地下はマダムな寺子屋

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#読書

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。世の中にある、人と栖(すみか)と、またかくのごとし。/方丈記より」

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これは、

全国有名某百貨店に捧ぐ。経済の復興のために。

デパ地下ルネッサンス

都心も都内近郊のデパ地下だけはすぐに活気を取り戻しつつあった。コロナ禍でテイクアウトがこれほど流行る世の中で店内での飲食がまだまだ警戒される状況ではデパ地下は最後の美食グルメかもしれない。

わたしは現在、手料理のほうに重きをおいている。だけどデパ地下で最新の食事情を知ることは必須で少しずつ活気を取り戻した街の中でひときわデパ地下Bento(高級弁当)が輝いてみえた。

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beautiful Bento 今時食事情

全国の有名百貨店ならどこでも有名店がデパ地下の軒下に並ぶ。競合は常に激しくてすぐに店舗が変わったりトレンディな惣菜弁当を扱う店がもっとも目につく(売れる)場所にいつもとって変わる。フツーの惣菜はもう飽きられている感がいつもあってなにかプラスしたおもしろさがトレンドになる。それはみためでもなく捻りがきいているセンス。

焼き肉弁当やすき焼き、ステーキ弁当は昔からあるし、お肉を扱う高級店の出店でべつに珍しくない。今回すごく気になったのはこの肉寿司でステーキ用のとろけるような牛フィレを酢飯にのせて握った肉寿司弁当は秀逸だった。穂じそと寿司の上にはちょこんとわさびまでついてしかもステーキソースまで。(安っぽい醤油ではなく)

ひとくち口にいれるとうっとり目をとじる。

やわらかな上質なミディアム調の牛肉をさっぱり風味で味わう午後のひととき。マネできないテクニックに出会うときショートカットで世の中の時代の流れに乗ることができるのだった、それは“上善如水“じょうぜん水のごとく荒い上流からおだやかな下流に河の流れが変化していくように万物流転を物語っている。

だけどこれには上質である、という素材の条件も満たされた感動は有名百貨店の得意とする「うるさい客のために質にこだわる」という社運をかけた息ごみは10~20年前よりはるかにアップしている。乗り遅れてはならぬ。

わたしはよく柿安ダイニングを利用するけれどなかなかおいしくてサラダはとくに自宅で改良するための資料になる。野菜チップスサラダはできればアーティチョークを使ってみたい。蒸し鶏のチキンサラダは胡麻ドレッシングでこの風味はどこからくるのか解き明かされる。見た目だけがキレイな弁当はもはやbeautiful Bentoではなく五感を刺激することができるBento(弁当)が世の中で称賛を得る。困ったことに口ばっかり肥えると少々うまいといわれる店に行ってもぜんぜん満足できなくなる。

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京風に憧れる都会のグルマン

そして、ある日は肉寿司の感動が冷めやらぬその舌で足がとまったのは京風の高級魚寿司弁当でビジュアル的にも完成度が高い。

高級平目の昆布〆をのせた平目昆布〆弁当はこれまた上品な味わいで心持ちがみやびなこころに満たされる。デパ地下内には外資系の食材店も人気があるけれど価格と気分で選ぶとしたら和の食材を扱う「京風」はこれは老舗料亭の味に近づく早道ではないかと思う。

厚巻きたまご焼きにしてもだしがきいていそうなたまご焼き断面に上にはトッピングされた九条ネギが美しい。そして白和えにしても。唸る感動はネーミングにもあって季節のはもとうなぎを競演させた源平寿司などは横で上品なマダムがデパ地下であってその金額ではないお買い物をされている。

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わたしの購入した平目の昆布〆弁当にしても2000円はするけれど午後からとてもみやびやかな気持ちが持続した。この体験を頻繁に続けることによりわたしたちの感性は磨かれていく。

もう今から25年以上前になるけどわたしは渋谷の東急本店にいた。関西出身でそれまで食に興味がなく高級品を売る職場でデパ地下事情を教えてもらったりした。デパ地下の食材なんてほとんど買ったことがそれまでなかったわたしにみんなでデパ地下内にあるドゥマゴカフェのおいしいパンや「あじ寿司」を教えてくれた。生のあじなんだけどウソみたいにとろけるようなおいしさだった。しばらくはその店の名前もおぼえていたので東急本店だけではなく東横店にもあってたまに買って帰った。時は流れてまた様変わりしていくデパ地下の中を時代とともにさまよい続ける。

「きょうも都会の街をさまよう女がひとり。

都会の夜の街に幸薄い女がひとりデパ地下をさまよう。

嗚呼、デパ地下の

デパ地下の高級弁当がいつもこころのささえ。」/closetfreak

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