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Silver Spoonカレー綺譚

#みんなの文藝春秋
#おうちごはん
『いつか世界の指導者たちが雲母の王宮に集い、戦争をすることなく規則と規定によって世界の問題を解決するようになるだろう/ホピ族の伝承古代の預言より』

火曜会カレー綺譚

「いまは白い花咲く
ああ、許すまじ原爆よ、ああ、許すまじ原爆よ、我らとともに/原爆ドームの詩」

Silver銀器の名門クリストフルのカトラリー
宮島の鳥居が彫られたSilverのトレイ/2019年青山クリストフル本店にて鬼頭郁子先生の講座で。


ギャラリークリストフル

2019年のはじまりに
寒い雪雨(みぞれ)の降る日、わたしは青山のクリストフルにいた。

クリストフルは銀器の名門ブランドで
もとはヨーロッパ貴族のステイタスでアメリカでブルジョワジーが出現すると鈍く重厚に光る銀器は貴族だけのものではなくなった。

スターリングシルバーの伝統的な歴史はやはり西洋に優るものはないけれど
シルバー磨きの伝統とともに現代はステレンススティールの時代に移行した。
クリストフルで輝くシルバーと何ら遜色ないステレンス製のお箸や黒文字(茶道の茶菓子を切る菓子切りのこと)をみると木製よりもずっと衛生的で銀器よりも扱いやすいスタイリッシュな和食器の数々。
わたしはクリストフルのショップにならぶ銀器のカトラリーを前にそれほど銀器に興味はなくて、いつも自分に必要なものが必要な時に引き寄せられることにその時その日はまだそう思わなかった。

ショップの女性の店長さんにもとはわたしがいた会社にこのブランドが吸収されたことを聞いたらその後ドバイの投資家のものになったことを教えてくれた。
クリストフルでなにかを少し期待していた私はガッカリでイメージよりもずっとプロトコールを意識したような
その雲母のように白く輝く店内の中で現代であるからこそ存在するアートを見た。
広島の海の中にある宮島の鳥居が彫られたシルバーのトレイをみた時は思わず「撮ってもいいですか?」ときくと心ゆくまで撮ってくださいと言ってくださった。テーブルコーディネーターの鬼頭郁子先生に感謝。珍しいから撮るのではない、心揺さぶられたから撮るのだった。


その日まだコロナ禍の気配さえ感じていなかった。他の人達もそうで豪華な食器に盛りつけられたおいしくて珍しい食材を使った軽いランチョンで花に囲まれて食事をして午後をすごした。
そして2020年の年明けにコロナの時代になった。初めてコロナ患者を見たのは茂木健一朗さんのtwitterで高熱で入院している中国人の女性がしきりに怒り怒鳴っている動画が流れて「いくらお金がたくさんあってもこうなったら終わり!」というような動画を見て最初はなぜそんなに怒っているのかわからなかった。中国人の女性の日本語訳をみてその言葉の内容からたぶん日本にその当時多く来ていたインバウンド客のようなお金持ちの女性かと思った。
2019年は1年を通してふだんは裏方にいる私が世間を知った年でもあって中国人のインバウンドには三越でもインバウンド専用に百貨店の売り上げの予算を立て、そして簡単な中国語講座や中国人アテンドまで用意した。

その時はまだオリンピックの話題もあってクールジャパンとか裏千家茶道の講座の時も椅子に座ったスタイルの茶会なら外国人も気軽に参加できますね、なんて話した。
私は講座に出る前に鬼頭先生にふくさや懐紙は用意していったほうがいいですか?と聞いたらなにも用意しなくていいですと言ってくださったので正座だけが不安だった。
最近正座なんてしないから足がしびれてすっ転んだらどうしようと思っていたから。

温泉たまごでごちそう感
ベッドテーブルの上でたべるカレー
自家製ポテトサラダとカレーの黄金コンビ



パンデミックカレー探究

2020年になると3月から私の生活はSNSだけが中心になり仕事も休業になって外出も極力なく家の中でソーシャルメディアとおうちごはんだけが楽しみの生活に一変した。
私はそれまで家でカレーはほとんど作らなかった。最後まで食べきらないで捨ててしまうことが多くて外でもめったにカレーなんて食べない。百貨店の社員食堂では絶対カレーはメニューにあって過去にいつもカレーばかり食べるような人も見かけたりした。社員食堂のカレーも数えるほどしか食べたことがない。私にとって「昭和的家族(ファミリア)」を感じさせるカレーは資生堂パーラーのバラエティな薬味が用意されたカレーやホテルニューグランドの高級な洋食発祥のホテルメイドなカレーなら食べたいけどフツーのおうちごはんのカレーは節約レシピでも結局食べきらないなら節約にもならないから食べない作らないという感じだった。

2020年に思いついて自民党員になってみる。
地域によって議員さんがいてその議員さんの事務所から催しや総裁選選挙や会報誌などが送られてくる。私は過去にも自民党の政治家の選挙にかかわったりしたことがあったからわりと政治家には抵抗がない。時の政治家に建設的ではない政治批判をして議論だと言いきる世の中にはいまだ閉口してしまう。なぜそれが議論だと言えるのかホントにわからない!右翼も左翼もいらない。
私(一般人)にはたいしてなんの役にも立たない。
河野さんがトゥィッターにカレーをよくツィートしていたのでカレーを作るようにめざめる。事務所からは総裁選の時に何度か河野さんに投票をするよう電話があって私は河野さんに投票はしたのだけれど最後に電話があった時岸田さんを勧めていた。
「?おなじ党だから」と思ったけれどあれはおかしいと思った。

私にとっておうちごはんのカレーはあまりいい思い出がない。水加減が読めない人の母の作るカレーはお世辞にもおいしくなかった。私の自分で作るカレーは高級ホテルのレストランのような味ではなく家庭(独身でもおうちごはんの場合)の味にはなっている。昭和時代に大量に開発されたカレールーは昭和生まれの私の味覚にあっている。

野菜がたっぷり入って辛さグレードを感じてみる
温泉たまごをのせるとちょっとごちそうカレー


辛さグレードスケール

50をすぎてバーモントカレーの味を辛さのグレードで食べ比べると
どうもいがいに甘口がいい。

野菜をいれるとカレーは甘くなってしまうけれどインド料理の本格カレーではなく
あくまでも「家族=ファミリア」を感じさせるカレーの探究として
ようするにまた幸せを探しているワケです。

カレーが家族制には縛られない新たなユートピアとしての家庭の居場所をつくり出す試みとして。

それだけ時代にたいして無意識に強い不安を感じていながらも少々鈍感になって生きていくしかないという人生に。

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