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#8 リチウムイオン電池の光と影~燃やすな危険~

こんにちは。GTです。
今回はリチウムイオン電池についての記事です。

リチウムイオン電池と聞いても一体何なのかピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません。
とても身近にあるもので生活する上で大きく恩恵を受けているんですが、使い終わった後の段階で小さくない問題が起きていたりします。

リチウムイオン電池とは何なのか、どのような問題が発生しているのか、問題を起こさないために私たちができることは何かを書いていきたいと思います。


リチウムイオン電池とは何か

一次電池と二次電池

リチウムイオン電池の前に、まずは電池全般の話をしたいと思います。

電池には大きく2種類あって、一次電池と二次電池に分けられます。
一次電池は電池がなくなったら交換するもので、一次電池の例として乾電池があると言うとイメージがしやすいと思います。
二次電池は電池がなくなったら充電するもので、デジカメとかビデオカメラの充電が切れたときに四角いバッテリーを外して充電すると思いますが、あれがまさに二次電池です。

使い捨ての電池が一次電池、充電して繰り返し使う電池が二次電池、と理解すれば大丈夫です。
そして、リチウムイオン電池は二次電池の一種に当たります。

リチウムイオン電池の恩恵

冒頭でリチウムイオン電池の恩恵が大きいと書きました。
リチウムイオン電池の特徴として、それまでの二次電池よりも小さくて大容量の電気を貯められることがありますが、それによって具体的にどんな恩恵なのかを話していきます。

身近でリチウムイオン電池が身近に使われている製品として、みなさんが日常的に使っているであろうスマートフォンやパソコンがあります。
小さくて薄いデバイスなのにバッテリーは数時間、長ければ朝にフル充電なら一日中使えるということもあるでしょう。
デバイスが小型化して楽に持ち運べるようになっている理由の一つにリチウムイオン電池があるのです。

他にも、テスラの登場で普及が進み始めた電気自動車(EV)にもリチウムイオン電池が使われています。
車を動かすには大きなエネルギーが必要で、電気でそれを賄うには電池が貯められる電力量を増やすことや、車を軽くするために電池自体を軽量化することが重要になります。
そうした課題をクリアして実用化できているのはリチウムイオン電池のおかげです。

リチウムイオン電池による問題

ここまではリチウムイオン電池の光の部分を書いてきましたが、光があれば影もあるというのはご多分に漏れずリチウムイオン電池も同じです。

ごみ収集後の発火

リチウムイオン電池による問題として実際に起きているのが、捨てた後のリチウムイオン電池が原因となる火災です。
リチウムイオン電池が使われている製品が家庭ごみとして燃えるごみや不燃ごみに入れられてしまうことで、ごみ収集車やごみ処理施設で火災が発生しています。
環境省が2022年に行った調査では、リチウムイオン電池などが原因と考えられる火災が発生した自治体は約3割あって、発生件数は年間で約1万件にものぼります。

ちなみにリチウムイオン電池が火災の原因になる理由は、発火しやすい条件が揃っているためで、具体的には下の3つがあります。

  • 着火源(電気)がある

  • 中身に燃えやすいもの(電解液と呼ばれるもの)がある

  • 中身に燃えるのに必要な酸素源(正極活物質と呼ばれるもの)がある

家庭ごみの収集や処理の過程でリチウムイオン電池に力が加わったときにショートして着火源となり、リチウムイオン電池が燃えて周りのごみに火が移り、最悪の場合はごみ収集車やごみ処理施設が燃えて使えなくなってしまいます。

家庭ごみとして出されてしまう原因

では、そもそもなぜ家庭ごみにリチウムイオン電池が入ってしまうのでしょうか。
電池を取り外して家庭ごみとして出さなければ済む話だと思う方もいると思いますが、そこにはいくつか課題があります。

まずは理解度の課題です。
経済産業省が2019年に実施した消費者調査では、充電式の小型家電製品をいくつか挙げてリチウムイオン電池が使われているかを回答してもらったところ、「わからない」と回答した人が半分前後という結果でした。
この記事で例として示したスマートフォンやパソコンはリチウムイオン電池が使われている代表格だと思いますが、それでも3割を超える人が「わからない」と回答しています。
そもそもリチウムイオン電池が何かわからない、という回答者も一定数いるだろうと思いますが、どちらにしても捨てるときに電池を取り外すという発想にならない人がそこそこの割合いることになります。

そして次に製品の構造の問題です。
リチウムイオン電池のおかげで製品の小型化に繋がっているという話をしましたが、当然それは私たち消費者に小型化してほしいニーズがあるからそうなっています。
そして小型化を突き詰めるために製品によっては電池を取り外せない構造になっているものがあります。
例えば、ワイヤレスイヤホンを使っている人も多いと思います。それにもリチウムイオン電池が使われていますが、電池を取り外そうとしてもできないようになっていることがほとんどでしょう。(逆に取り外そうとすると発火の原因になって危ないので、取り外さないよう注意喚起している場合もあります)
二次電池を使用している家電製品は電池を取り外せる設計にすることを定めた法律(資源有効利用促進法と言います)がありますが、そこではすべての家電製品が対象とされているわけではなく、ワイヤレスイヤホンなどの法律ができた後に市場に出てきた家電製品なんかは対象外となっているのが現状です。
そのため、(言い方は悪いですが)合法的に電池を取り外せないようにしている製品も少なくありません。

火災を起こさないためにできること

リチウムイオン電池による火災を起こさないために私たちにできることは、何と言っても電池を家庭ごみに出さないことです。
そのための3つの選択肢を挙げたいと思います。

回収協力店での引き渡し

まずはリチウムイオン電池以外も含む二次電池を回収する協力店(または協力自治体)に引き渡すことです。

家電製品のメーカーが共同で設立した団体(JBRC)が作った回収の仕組みで、下のリンクから近くの協力店を探せるようになっていて、取り外した電池を持っていけば無償で回収してくれます。

ただし、注意点としてはJBRCに加盟している会員企業の製品に使用されている電池のみが回収対象だということです。
リチウムイオン電池を持っていったとしても、会員企業以外の製品に使用されている電池の場合は回収してもらえないルールになっています。

メーカーに依頼

次の選択肢としてはメーカーに依頼することです。

メーカーによっては、取り外した電池または電池が入った状態の製品を回収している場合があります。
上で例として出したワイヤレスイヤホンでは回収依頼を受け付けていて、使い終わった製品自体を無償で回収してくれるメーカーが少なからずあります。
メーカーが対応しているかどうかは取扱説明書やメーカーのHPなどで確認が必要になりますが、JBRCの協力店で回収してもらえない場合はこの方法が次の選択肢になります。

自治体に確認

上の2つの選択肢がダメだった場合、最後の砦となるのが自治体です。

#4の記事で書いたように、自治体には家庭ごみの処理責任があるので、協力店にもメーカーにも回収してもらえないリチウムイオン電池をどうすればよいのか、最終的には住んでいるところの自治体の指示を仰ぐことが必要になります。

自治体によっては、家庭ごみの区分としてリチウムイオン電池を設けていたり、電池を取り外せない製品を「有害ごみ」の区分で回収していたりします。
全ての自治体でこのような区分を設定しているわけではありませんが、自分が住んでいる自治体での対応方法を確認して、その指示に従うというのが適切なやり方になります。

最後に、電池を家庭ごみに出さないこと(ただしリチウムイオン電池を捨てられる分別区分がある場合は別)が重要ということを書きましたが、自分が注意するだけではなく同居する家族など周りの人が家庭ごみで出そうとしている場合には注意喚起をすることも同様に重要です。
この記事で書いたリチウムイオン電池による火災の問題や、そもそも身の回りの家電製品にリチウムイオン電池が使われていて家庭ごみで捨ててはいけないことがまだまだ認識されていないのが実情だと思います。
この記事を読まれた方からその周りの方に少しでも啓蒙が進めば嬉しいです。

ではでは、また次回お会いしましょう。

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