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第1章 マルクス人物伝(8)

マルクスの生涯のまとめ

以上がマルクスの生涯です.本章の最後に彼が行った3つの業績をより具体的に示しておきます.
(1)哲学面:ヘーゲル,フォイエルバッハ批判から史的唯物論を確立
(2)経済学面:経済学による資本主義批判,資本論の執筆
(3)実践的活動面:新聞による言論活動,共産主義者同盟等による社会主義・共産主義運動

(1)の哲学面では,人間社会がどのような構造で成り立っているかを人類史的な視点から明らかにし,また,人類の過去から未来へとわたる発展の道筋を明らかにしました.この研究は史的唯物論という形で結実します.エンゲルスはこの史的唯物に関して「ダーウィンが生物の発展法則を発見したのと同様に,マルクスは人類の発展法則を発見した」と評価しています.

この史的唯物論はそれ以降マルクスにとって「導きの糸」となります.そして史的唯物論で導き出された未来社会を実現するために,(3)の実践的活動である社会主義・共産主義運動を行い,また(2)の経済学の研究で,その未来社会の妥当性を学術的に保障する試みを行っています.
 
本書ではこのようなマルクスのやり方に倣い,新たな未来社会の構想を行います.中でも特に(1)の哲学と(2)の経済的側面からの検討を行います.具体的には,哲学面では第5章と第7章において,唯物史観を足掛かりとして,さらに発展させた世界観を用いることで単なる共産主義とは違う新たな未来社会を提示します.

また経済面では第9章において,構想した未来社会を実現する経済システムについて,その設計を行います.

マルクスは資本論において,資本主義の欠陥を指摘し,その終焉を予測したわけですが,未来社会の具体像についてはほとんど言及しませんでした.その理由についてマルクスは例えば次のように語っています.

「具体像は実践的活動(労働運動や革命など)の結果から生まれてくるものである.したがって時代的な状況や国によって異なるであろう.」

つまり,事前に具体像を示してそこに向かってことを進めるやり方は,マルクスが批判した空想的社会主義と同じになってしまう,と考えたわけです.
しかし,マルクスから200年近くたった現在では,産業も大きく発展し,当時見えていなかった多くのものが見えるようになってきました.現代であれば,空想だけに終わらない未来社会の具体像を描くことが可能です.

なお,(2)の革命を目標とした実践的活動は,現代にはそぐわないものであり,またプロレタリア革命という方法自体間違っていたと言えます.そこで代わりにというわけではありませんが,プロレタリア革命という暴力革命ではなく,AI・ロボット革命という技術革命について第6章で解説したいと思います.


以上,第1章です.第2章以降はAmazon キンドルストアにて公開中です.


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