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三題話の大研究 2022 Winter-Spring

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まったく関連のない3つの単語を使って、短編小説、小話、エッセイ、短歌などの作品を創作する三題話。今回のお題は以下の3つです。 お題:とら、キャンドル、こうい。 そして今回は「サプ… もっと読む
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#三題話

【三題話の大研究・お題発表】2022WS

またまた三題話の季節がやってまいりました。今回のお題は…… 「とら、キャンドル、こうい」 です。 この3つの単語を使って、小説・詩などの作品を作ってください。 表記はカタカタであっても、漢字にして使っていただいても構いません。(トラ、虎。皇位、好意など) とまあ、ここまでは普通の三題話なのですが、ドリームライブラリの名物・三題話はいつも、これに加えてさらにシバリがあります。 さて、今回のシバリは……ああ、ほんとにこれでいいのでしょうか……これまで幾多の難関を切り抜けてきた常連

ローソクの伝来 by 神田南田

 本日もしばしの間、私、神田南田とお付き合いいただきたいと存じます。 本日はローソクについてのお話でございます。いえいえキャンドルなどというハイカラなものではございません、ローソクのお話でございます。  今では誕生日など、デコレーションケーキの上に乗せたり、えっ? 何ですか? 何本乗せるのかって? もちろん年の数だけ乗せるというのが昔からの決まり事でございます。  それではケーキ 一面がローソクで埋まってしまう、えっ? 何歳なんです? 92歳。それはそれはイチゴをトッピングし

プレゼント by k.m.joe

※実在の人物名や団体名が出てきますが、全て完全にフィクションです。 会社の更衣室で制服に着替えながら、ユキコはタカシへのクリスマスプレゼントを思案していた。今年はコロナも落ち着いて、ひさしぶりにイブの夜を一緒に過ごせる。奮発してサプライズ感のある贈り物をしたいところだ。タカシは熱烈な阪神タイガースのファンなので、何か喜ぶ物をプレゼントしたいのだが、ユキコはあまり詳しくない。 デスクに座りPCを起ち上げると、最近大阪から転勤してきた課長の関西弁が耳に入ってきた。もしかして?

辞めるのか辞めさせられるのか、ああそれが問題だ by 夢野来人

タケルはそろそろ63歳のしがない会社員。若い頃から仕事運がないせいか転々と職業を変えていたが、いつかはサラリーマンを辞めて起業してやるんだと思い続けていた。 起業の方はともかく、サラリーマンを辞めてやるんだという思いは、あと2年で否が応でも叶ってしまう。そう、定年となるのだ。こちらから退職願を叩きつけてやる日を夢見ていたのだが、会社の方からあなたはもうお払い箱ですと定年退職を通知されてしまう日が来ようとは、それこそ夢にも思わなかったのである。 「俺もついに要らない人になるの

「王様のお菓子」について by miruba

 ガレット・デ・ロワ(galette des rois)というフランスのお菓子を最近ではご存じの方も多いかと思います。直訳すると「王様たちの丸く焼いたお菓子」となりますが、この王様たちはキリスト誕生の時にそばにいた東方の三博士を指します。  1月6日の「公現祭」(エピファニー:Epiphanie)をお祝いして食べるお菓子とされていますが、この公現とはイエス・キリストがこの世に顕われたことを指します。  家族で切り分けて食べるアーモンドクリームの入った折込パイ菓子ですが、中に

風船に詰め込まれた感情は誰のもの? by やぐちけいこ

真っ白な壁に明るい光が注がれる一室にポツンと小さな木箱が置いてあります。 その箱にはいろんな色の風船が入っていました。 「どれでもお好きな風船をおひとつお選びください」 優しく語り掛ける声に誘われるまま恐る恐るその一つに自分の手が触れると部屋いっぱいに風船の中に詰め込まれた感情が一気に広がりました。 今回は選ばれた青い風船のお話を紐解きましょう。 その前にあなたに一つ質問です。 猫はお嫌いですか? 最後にもう一度お聞きしますのでそれまでに答えの用意をお願いしますね。

占い by Miruba

「あ~あ、どうしよう」容子は絶望的な気分でつぶやいた。  買い換えたばかりの携帯電話を何処かで落としたらしい。気が付き慌てて元来た行程を辿ってみたが、デパートのトイレの棚にも、喫茶店の荷物入れにも無かった。 「持って行かれちゃったかな?」携帯を落として酷い目に遭う映画を思い出す。不安が増してくる。警察に紛失届を出そう。容子がそう思って歩き出した時だ。 「お姉さん、お姉さん。そう、あなたよ。あなた携帯を無くしたでしょ?」 看板に【占い】と書いた小さな店舗の奥から声が聞こえた。容

咲くか、散るか by 吉田真澄

 東京タワーを後方に神谷町交差点を虎ノ門方向に向かう。  ファミレスの一面ガラス張りの鏡のような窓に映ったわが身を、塔子は垣間見た。年齢を重ね、ふくよかになった体。しみもしわも増えた顔は半分マスクで隠されている。これはラッキー。そして白髪隠しに色を付けた頭髪。若かりし頃の華やかさは微塵もない。その姿を見てみないふりをして通り過ぎ、塔子は路地奥を覗き込む。  塔子は数年ぶりに「Trattoria Tiger」を訪れようとしていた。店がまだあるのかネット検索もせずに、ある意味

隠れえぬ罪 by Miruba

 新年になると、あちこちでマラソン大会や、ウォーキング大会が開かれる。  私の地方でも、「新春ウルトラジョギングマラソン大会」と銘うったウォーキング・ジョギング・ハーフマラソン大会が開催された。全日本でその昔メダルを取った人や取りそこなった人なども参加してくれるので大いに賑わう大会だ。アマチュアのコースもあり地元人の参加も優先で可能なため、私も短いコースに参加することにした。  この地では、自然の中でのジョギング・マラソンコースを売りにしたいようで、山の中にある道なども走る