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プレゼント by k.m.joe

※実在の人物名や団体名が出てきますが、全て完全にフィクションです。

会社の更衣室で制服に着替えながら、ユキコはタカシへのクリスマスプレゼントを思案していた。今年はコロナも落ち着いて、ひさしぶりにイブの夜を一緒に過ごせる。奮発してサプライズ感のある贈り物をしたいところだ。タカシは熱烈な阪神タイガースのファンなので、何か喜ぶ物をプレゼントしたいのだが、ユキコはあまり詳しくない。

デスクに座りPCを起ち上げると、最近大阪から転勤してきた課長の関西弁が耳に入ってきた。もしかして? と思い尋ねてみた。

「課長、阪神タイガースにお詳しいですか?」

「おお、おお、お詳しいなんてもんじゃない、大ファンやで」

「友達に相談されたんですけど、彼氏が熱烈な阪神ファンで、プレゼントを探してるんです。何かご存知ですか?」

「それはあれやな、とらオクが良いかも。タイガースファン専門のオークションサイトや。例えば伝説の85年優勝の立役者、バース、掛布、岡田のバット3本セットとか最高やで。一回見かけたんやけどなぁ……」

「へぇー、どうもありがとうございます」

帰宅してサイトを覗いてみると、確かに阪神ファンが喜びそうなグッズが目白押しだった。成約したリストも載っているが、高値の取り引きも結構あった。ちょっと資金が欲しいところだ。ここは思い切って自分が大事にしているものを売ろうかな。

ユキコは熱烈なジャニーズの嵐ファンだった。ちょうど「とらオク」のようなサイトが嵐ファンの間でも「あらオク」としてあった。う~ん、これとか結構食いつくかも……嵐のデビュー以来のドキュメント番組がネット配信限定で発表され後にDVD化されたのだが、大人の事情で本数が少なく、ファン垂涎の一品として有名だった。ユキコが思い切ってサイトに載せるとたちまち高値が付いた。よし、次は「とらオク」! 勇んでサイトを開くと、ラッキーな事に例の3本セットがアップされていた。そして何とか競り落とすことができた。


会社の更衣室で制服に着替えながら、タカシはユキコへのクリスマスプレゼントを思案していた。今年はコロナも落ち着いて、ひさしぶりにイブの夜を一緒に過ごせる。奮発してサプライズ感のある贈り物をしたいところだ。ユキコは熱烈なジャニーズ嵐のファンなので、何か喜ぶ物をプレゼントしたいのだが、タカシはあまり詳しくない。

デスクに座りPCを起ち上げると、女子社員同士の会話が耳に入ってきた。松潤を久しぶりに観たといって盛り上がっている。

「山田さん、嵐ファンなの?」

「ええ、ええ、大ファンです」

「友達に相談されたんだけど、彼女が熱烈な嵐ファンで、プレゼントを探してるんだよ。何か知ってる?」

「それはあれですね、あらオクが良いかも。嵐ファン専門のオークションサイトなんです。例えば嵐のドキュメンタリーのDVDで本数の少ない物があるんですが、あれとか最高だと思いますよ。一回見かけたんですけどねぇ……」

「へぇー、どうもありがとう」

帰宅してサイトを覗いてみると、確かに嵐ファンが喜びそうなグッズが目白押しだった。成約したリストも載っているが、高値の取り引きも結構あった。ちょっと資金が欲しいところだ。ここは思い切って自分が大事にしているものを売ろうかな。

ご存知でしょうが、タカシは熱烈な阪神タイガースのファンだった。ちょうど「あらオク」のようなサイトが阪神ファンの間でも「とらオク」としてあった。う~ん、これとか結構食いつくかも……伝説となっている85年優勝の立て役者、バース、掛布、岡田のバット3本セットを思い切ってサイトに載せた。たちまち高値が付いた。よし、次は「あらオク」! 勇んでサイトを開くと、ラッキーな事に例のDVDがアップされていた。そして何とか競り落とすことができた。

待ちに待ったクリスマスイブ。お洒落なレストランのテーブルには、雰囲気のあるキャンドルが設えてあり、先に着いて待っているタカシと脇に置いたプレゼントを照らしていた。周りのカップルも幸せそうだ。

「結構、バット3本って重いわね」ユキコは持ったことのないバットケースを、肩に掛けたり抱きかかえたりしながらレストランに向かっていた。持ちにくいプレゼントだが、煩わしさなど微塵もなく、とても幸せな気分だった。

(おわり)


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