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術後 ICU で過ごした一晩

次に目覚めた時には、ICUベッドに寝ていました。
兄の顔が近くにぼんやりと見え、ベッドサイドで声かけてくれました。

無事に終わったぞ。8〜9割の腫瘍は取り除くことができた。
覚醒していた時間は、2時間50分だったらしいぞ。

当初の説明では、1時間程度の覚醒時間を予定していると言われていたので、2時間50分と聞き、本当に驚きました。
家族にも無事を知らせるために、兄がビデオを撮り始めました。
兄のことも認識できていたので、今度は言葉を発するぞ!と麻酔でぼんやりとした意識をはっきりさせようと頑張りました。

ビデオで終わったという報告と、覚醒下の時に同じ内容のテストに飽きてしまったことを言いました。顔がうまく動かず、目も半分くらいしか開かない状態でした。

麻酔から目が覚めたとわかり、看護師さんがすぐに後遺症がないかどうかの確認に来ました。

足をあげてください。
私を手で押してください。

力がわかずふにゃふにゃしていましたが、心配されていた右手足は無事に動きました。

ああ、手足が動く

心底ほっとしました。

すぐに主治医の先生も様子を見に来てくれました。
手術は当初の予定より長引き10時間ほどかかったが無事に終わったこと、出血が多かったので輸血をしたとの報告がありました。輸血は通常はほとんど行わないと事前に聞いていたので、驚いたと同時に死ななくてよかったと心の底から思いました。

手術後6時間以内に何もなければ、手術による死はないとのことだったので、ICUでの一晩を無事に終えることができるように心の中でカウントダウンをはじめました。

私の体は手の指の先、腕、胸、頭の中までチューブでつながれていました。
指の先には、針が入っていて、細い針から血圧が測れるようになっているのには驚きました。指から赤い光が出ているのが、地球外生命体みたいだなと思いました。

ICUでは、さまざまな音が鳴り響いていました。点滴が1時間ごとにピーピーなり、周りの部屋には呼吸器のようなスースーという音がして、一定期間をすぎるとたん吸引のようなゴボゴボした音がしました。
私以外の人はどのような病気でICUにいるのだろうと思いました。

手術中に酸素チューブと酸素マスクをつけていたので、喉がイガイガしたため、看護師さんに伝えたところ、歯磨きとうがいをさせてもらえました。身体中にチューブが繋がれており、手に力がはいらなかったこともあり、うまく磨けませんでしたが、ずいぶんスッキリしたのを覚えています。

また、ストローでお水も飲ませてくれました。水を飲んだ時に、ヒリヒリとした痛みが、みぞおちのあたりでしました。そのため、1口しか飲めませんでした。

何よりも辛かったのは、頭の痛みです。頭の左後ろあたりからドレインチューブが垂れ下がっており、左胸の上に手榴弾の形のような液体受けがありました。(お弁当の醤油入れみたいなイメージ)そこに目をやると、血のような茶色の液体があるのが少し見えました。頭蓋骨に穴があいており、脳みそからその液が垂れているのかと思うと、ゾッとしました。

頭がズーンと重く、ズキズキする痛みがずっと続きました。

頭を動かせないので、体が痛くなってきます。痛くなると看護師さんは体の向きを変えに来てくれました。

痛み止めを入れることができるのは、6時間ごとなのでちょうど薬がきれる時間になると痛みがさらに強くなり、一切眠ることができませんでした

ただただ、痛み止めを打てる時間までカウントダウンをする。毎時間看護師さんが来てくれるので、その度に時間を聞きました。時間が経つのがこんなにも遅いのか・・・と途方にくれました。

そしてやっと朝になり、朝が来たということと術後6時間経過して容体が急変しなかったことに嬉しさを感じました。

手術明けだというのに、普通の朝食が出ると看護師さんから伝えられました。みぞおちに痛みがあるので、おかゆのメニューに変えてもらいました。

ベッドを起こしてもらい、牛乳を飲んだ瞬間ものすごい吐き気に襲われました。すぐに吐き気どめを点滴してもらうことに。朝食はまったく手をつけることができませんでした。

その後、レントゲンを撮るチームが来ました。寝ている状態でレントゲンをとれる大きな機械を持ってきて、私の体の下に硬い板を入れて撮影。体を持ち上げられたときには激痛がはしりました。

次に、3人くらいのスタッフが来て、髪の毛や体についた血やあらゆる液体を洗い流し、体を拭いてくれました。シャワールームにてっきり行くのかと思ったら、なんとベッドの上でシャンプーしてくれたのです!ぬるま湯の入ったチューブ型じょうろのようなもので洗い流してくれました。

ああ〜結構血がついてるねぇ〜
綺麗な黒髪だわ〜
肌がきれいね〜

私は半分寝ている状態でされるがままだったのですが、このような声がけのおかげで、心が不思議とおだやかになりました。

そして、朝のうちに一般病棟に移ることになりました。

こんな状態で一般病棟に移って大丈夫なのだろうか・・・・?

吐き気をかかえ、エチケット袋を片手に車椅子で一般病棟へと戻っていきました。続きは、また次回書きます。






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