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『障害者施設送迎サービス』で起きた不届きな事件とその対策についての私見

数日前にこんな記事が読売新聞オンラインに載りました。

自分の言葉で説明できず、抵抗することもできない障害者への卑劣なわいせつ行為や虐待行為は後を絶ちません。

悔しく腹立たしいことこの上ないです。

とはいえ、このタイトル、なんだか酷いですね。

【危険】って…😭

送迎そのものが危険、みたいな誤解を生みます。

♦︎

この話題。

実は我が家にとっては少しタイムリーな話でした。

誤解がないように、また、関わってくださっている事業所さんにご迷惑とならないように書いておきますが、我が家にはわいせつのわの字ももちろん起こっておりません。

そう。世の中の殆どの人は善き人です。

私は、基本的に性善説でいいと思っています。


では何がタイムリーかというと。

福祉の現場ってやはり人の出入りがそこそこあります。辞めていかれる方も多く、その都度新しい方が就職されます。

女性には女性が、男性には男性が関わるように配慮してくださっていますが、【運転のできる女性の支援員】が不足する事態も往々にして起こります。

我が家がお世話になっている事業所さんもたまたまそういう事態となって、責任あるお立場の方が最近保護者にアンケートを取られました。

①送迎スタッフが同性でなくてもいいかどうか。②同性じゃなければ家族送迎に切り替えたいと思うか。③送迎時間が前後してもいいと思うか。

我が家の答えはこうでした。

ヘルパーさんとの兼ね合いで家族送迎や時間変更は難しいので、できれば同性がいいがしばらくの間とおっしゃるのであれば異性でも致し方ないです。

ただし。

私ができれば同性がいいと希望する理由をアンケートの欄外に書かせていただきました。


✔まずは、前述の記事のようなことへの懸念がゼロではなく、疑いなど持ちたくもないという理由。

✔そして、何より、疑われた時に支援者さんご自身が【無いことの証明】をするという悪魔の証明に苦しむ結果となるのを防ぎたいという理由。

♦︎

実は、特別支援学校の送迎バスでよくある話なのですが、バスなどで大きな窓がたくさんあると、外から中がよく見えます。

信号待ちでバスの中の子どもに手を振ってくださる地域の方もいらっしゃいます。

ところが、外から見ておられる一般の方から、

『バスの介助員が生徒を押さえつけたりして虐待している』

と学校や警察に通報されることもあるんです。

通報自体はありがたいことなのです。地域の皆さんが気にしてくださっているということなのですから。

ですが、知的な障害を持った子の中には、決められた集団生活の中で適応するには様々な困難があり、いつものバスのようでも少し環境が違ったり気分が違ったりするだけで暴れてしまったり椅子に座れなかったりベルトができなかったりすることがあります。

介助員さんはバス運行の安全のためにいろんな工夫をし、正面から肩を押さえることで安心する子、膝で膝を挟むようにすることで落ち着く子、と様々なあの手この手で必死に支援しています。(観光バス並みの人数に対し、大抵は2人ほどで介助に当たっています)

それを外から見ていると、

虐待している

と見えることもあるようなのです。

もちろん、生徒や介助員さんを日頃からよく知る職員や学校関係者、保護者に至るまで、それが【虐待ではないこと】を知っています。

でも、一般の方に警察にまで通報され、それが具体的すぎたり尾鰭がついて誇張されていたりすると、【虐待ではないことの説明】は困難を極めます。

見たという証言そのものが誇張され、行なってもいない行動に言及された時、【そんなことしていません!】という申し開きがいかに無力か想像できるでしょうか。

そんな嘘八百(⇒見たとおっしゃるご本人はそれが虐待をしているようにしか感じていないので嘘をついている自覚もありません)を否定することもできず、【たとえ安全のためだったとはいえそれはやりすぎだろう!】という社会の常識に照らされ、結果支援していた方が責められるという事案は後を立ちません。

通報された介助員さんは気の毒なほど落ち込み、辞めていかれる方もいらっしゃるほどです。


この事実が示すように、一旦疑われたら、【ないことの証明】をしなくてはならないという極めて困難な立場に立たされるのです。

俗に言う悪魔の証明です。

♦︎

実はまだ娘が高校生くらいの頃、障害児放課後等デイサービスで、とてもよく気が付いて行き届いた支援をしてくださる感じのいい男性支援員さんが関わってくださっていたことがありました。

その頃は、その男性支援員さんが一人で送迎もしてくださっていました。

送迎の時に親ともたくさんコミュニケーションをとって下さり、ややもすれば立ち話で10分ほどになることも。

その時ふと、私の頭を一つの考えがかすめました。

この10分を別のところで使ったら、もしかしたら悪いことの一つや二つできてしまうかもしれない…。

10分くらいの誤差は、施設で待ってくれている職員も大きな差として捉えないでしょう。道が混んでいることもあるだろうし、こうして保護者とコミュニケーションをとっていたってこともあるのですから。

でも、すぐに出たのに10分以上到着が遅れたら?

その時に何があったかは誰にも証明できなくなってしまいます。

とっても信頼しているし、悪い人であるはずがない、いやな様子を微塵も感じさせないその男性支援員さんからの連想で、そんなことを疑ってしまった自分はどうかしていると思いつつも、この可能性について【知っておく必要がある】と思い、【危機管理として密室で異性二人きりのシチュエーションは避けておくべきなのではないか】と強く感じたのです。


もちろん、これは介護に限ったことではありません。

国家資格持ちの医師や看護師や、学校の先生などでも同じことが言えます。

異性による関わりを行うことにも様々な考え方があるでしょう。

医療現場で、乳腺外科や婦人科は女性医師を選びたい人もいるでしょうし、男性なら泌尿器科などで女性医師は嫌だなぁと思う人も。

かと思えば、プロフェッショナルなのだから腕さえ良ければ性別は問わないという人もいるでしょう。

でもそういう場合もできるだけ密室で患者と二人というシチュエーションは起こらないように工夫されています。

特別支援学校で体に触れる支援を異性教諭がする場合も男性教諭と女児・女性教諭と男児が1対1になることはほとんどありません。そもそも体幹の訓練的な意味合い以外で異性の教諭が異性の児の体に触れることがまずありません。(数の問題で女性教諭が男児の支援・・・は小学生の間はまだあるように思いますが児が大きくなってくると配慮されています)

こういう社会的モラルに関わるようなことや、ひとたび起こってしまえば犯罪にもなりうること、たとえそれが疑いでしかなくても信頼関係を著しく損なうかもしれない事象については【避けておく】必要があります。

それが支援者側の危機管理なのです。

♦︎

そのようなことを思いめぐらしながら、通所施設の送迎アンケートに答えました。

母の意を最大限に汲んでくださり、今まさに支援者不足であるにもかかわらず、日々やりくりしてくださって我が家にはなんとか女性支援員さんが可能な限り送迎に来てくださっています。

それでもどうしても無理・・・というときには【絶対に異性の方の送迎は嫌です】と言っているわけではないということは繰り返しお伝えしていますが、母の小さな不安や心配を理解し、寄り添い、やりくりしてくださるお気持ちには感謝しかありません。

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福祉の人材不足はいつになってもなかなか解消されません。

その賃金や処遇問題など根本的な課題にも、もちろん、政治・行政は着手していただきたいですが…ちょっと視点を変えて、この場合なら、車内も録画できる車載カメラが標準装備されればいいだけの話なんですけどね…。

安全運転にもつながりますしね。

その補助さえ国や行政が支援してくれれば…。


こんなふうに、障害者の実生活の中には細かな課題がたくさんあります。

マイノリティにおける細かな出来事は、どう発信していけば、制度を作り、より良く変えてくださる方のもとに届くのだろう…と、いつも発信しあぐねてしまいます。

まして、ジェンダーについての発言となる非常にセンシティブな話題…。発言する側も躊躇します。

そんな折も折、放課後等デイサービス送迎に関する事件が新聞記事になっていたので引用して私なりの思いを綴ってみました。

様々な考え方がある事象だと思います。これは今(2021年11月10日)の私の思いです。


最後までお読みくださりありがとうございました。

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地域の保健室をしつつフリーランスとしてお仕事している笑顔大好きな【なつまま】が、重度障害であるアンジェルマン症候群のキュートな娘との豊かな生活と、医療や福祉について思うこと、日々の小さな気づき・感動などを綴っております。

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