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コロナ禍の障害者支援について 首相記者会見に希望を見出す

 2021年1月4日、首相の新年の記者会見が行われました。

                        (首相官邸chより)


 コロナ禍医療問題、経済混沌、外交問題、決して平常時とはいえない落ち着かない情勢の中、フリーランスの記者が障害福祉についての質問をしてくださいました。(以下文字起こし)

記者『知的障害、発達障害、精神疾患を持った方の現場に行っております。今回緊急事態宣言となると、強度行動障害って言って暴れてしまう方々の軽症者のホテル、病院での入院っていうのがかなり厳しい状況でありまして、医療従事者にも負担をかけるために病院から出されるという現実がございます。施設の方ではそういった医療従事者の方に負担をかけないためにゾーニングなどの努力を行なっておりますが、この前も厚生労働省との勉強会で、クラスターが起きてはじめてDーMATが行くという現状でございます。日頃から医療福祉の連携で、医療関係者が福祉施設に来てゾーニングをする、感染防止指導をする、各自治体によって対応がばらばらです。例えば奈良県は20人受け入れますが、他の都道府県から移動して受け入れるということが大変厳しいというのがあります。ですので国としての行動指針がすごく大切な状況です。菅総理の考えをお聞かせください。』
菅総理『私自身も横浜市会議員時代に手をつなぐ育成会の会長を務めたことがありまして、現実については詳細についてよく理解していると思っております。今、お話をいただきました、それぞれの場所によって対応が違うわけでありますから、そういったことは国としてもしっかりと指導をして障害者の方が安心できる支援をしていきたいとこのように思います。』

 時間にしたら2分ほどです。

 でも、年始の首相記者会見約30分の中に、この記者さんのように明確に問題点を突いて質問してくださった方がいらしたことがとても嬉しく、それに対し、これだけ明確な障害福祉への首相の回答が得られたことにすこ~し希望が見えた気がしました。


 実は私、こうして知的障害者の生活やその家族のこと、医療福祉のことを発信し始めてより切実さに気づいたんですけど、一番大変かつ大切なのは【イメージしていただく】事なんです。

 例えば、大学生さんと話していると、『障害を持った方のお母さんが誰かにお子さんを預けて自由な時間が欲しいなんて、なんて無責任なことを言うんだろうって思ってました』という学生さんがいました。すごく率直な意見です。一般社会人のほとんどがそう思っていると言っても言い過ぎではないくらい実は今の日本では多数派かもしれません。

 でも、ご自身がそういう人生だったら?自分には映画を見に行く自由も夫と夫婦仲良くご飯を食べに行く自由も許されない、もちろん旅行なんてできない、美容院も贅沢、習い事なんてとんでもない!それが子育て期間の十数年だけじゃなく一生です。(いえ、私は、子育て期間のパパママだってそんな我慢を強いられる必要はなく、誰かの手を借りて笑顔になる術を見つけたらいいと思っていますけどね。)そんな一生を送ることになるとイメージしても、本当にそんなことが言えちゃいますか?それってそんなに無責任なことですか?

 そして、そんなことを他者から強いられる自分の人生を、本当に笑顔で生きていくことができますか? 

 そんな話を例え話を交えながら重ねていくうちに、学生さんがハッと気づいてくださり、『私はなんて自分勝手な思いで障害者さんやそのご家族を見ていたのでしょう』とおっしゃってくださいました。善でも悪でもないんです。知らないだけ、気づいていないだけ。気づいてくださったところにはじめて、我が子たちや親たちの真の生活の話にまで踏み込んでいけるのだと思うのです。

 もちろんできることとできないことはあります。それは仕方ないんです。人間、自分のできる範囲の楽しみを見つけ、いろんな人の手を借りながら、自身の人生にも彩りを与えつつ、どこかで折り合いをつけて幸せを見つけていくんです。その代わり、お世話になった相手にお返しできなくても、自分にできることでたくさん社会に恩返ししていけばいい。私はそう思っているんです。そんなふうに、イメージしていただくところが突破できると、その後のお話はスッと聞いてくださる方が多いように思います。

 そんな【イメージ】ができていらっしゃらない方に、【イメージしていただくところから】お話ししなくてはならないのが我々の常なのですが、これが結構大変で、私はよくこのことを『鍵を開けていただくところから始めなきゃいけない』って表現を使います。

 大抵の方には、真面目で正義感が強くて何事にも一生懸命になる人ほど、ご自身の常識というがかかっていらっしゃるのです。それは当たり前のことなんです。ご自身も親御さんから大切に育てられ、その国の風土もあり文化もある中で社会勉強もして物事の善し悪しを教わり、『これは誰かに言われるまでもなく常識』という倫理や規範を学んでこられたのですから、自分と違う常識をそう易々と受け入れられるわけはないのだと思います。

 でも、マイノリティの生活は得てしてその常識通りにことが運びません。民主的に多数派に都合がいいように作られた社会の常識の中には、実は少数派には暮らしにくさがたくさんあるのです。そのことをイメージしていただきたいから、想像力、共感力についてのお話を馬鹿の一つ覚えのようにこれまでにもたくさんさせていただき、そしてむしろ生真面目さんだからこそかかっている鍵を少し開けていただいて、イメージしていただくことをお願いし、少数派がどんなふうに困っているかってことを一緒に考えてくれる医療従事者や福祉関係者になっていただきたいという願いを込めてきました。


 その『鍵』がないんですよね、菅首相。 開いてるんです。ご経験から。これまでの人生から。

 私は特定の政党や政権を応援したりはしていないのですが、こうして政治家さんがモノや金やプライドじゃなく人々のほうをちゃんと向いている場面はとっても嬉しくなります。

 

 たった2分、たったお一人の記者さんの質問に答えてくださっただけかもしれないけれど、今の日本の首相にはこの鍵がない!

 ま、かと言って一国の首相がこの少数派の問題ばかりにかかっていられないことも理解できるのでそんなに期待しすぎはしないけれど、でもきっと方法さえ合っていれば、目的を見失わず、やり方を工夫して、障害者の支援充実や地域共生社会を目指して活動していけば、もしかしたら明るい未来を思い描けるんじゃないかって思いました。


 現社会において数多ある諸問題の中に埋もれることなく、この問題に対して過去の経験も踏まえてしっかり向き合っていく、障害者のみなさんに安心していただけるよう支援する、との答えは、年始から私にとって大変嬉しいものだったのでした。

 

笑顔が増えるための活動をしています。 いただいたサポートは、稀少疾患であるアンジェルマン症候群の啓蒙活動、赤ちゃんから高齢者まで住み慣れた地域で1人でも多くの方が笑顔になるための地域活動の資金として大切に使わせていただきます(^^)