2015.11.18 続々 ドイツの上でピアノを

ともかく何かアクションをせねば。

そう考えたものの、何か妙案が浮かぶわけでもない。


僕は平然と、その翌日からも「通学デート」を重ねた。平然と、何もないような顔をして。

数日経つと、だんだんと自分に嫌気がさしてくる。大切なことを言わないでおくことは、嘘をつくこととイコールだ。わかっていながらも何も言えず、手紙の返事もできないままでいた。

そうして一ヶ月が過ぎた頃。


僕の家のポストに、さらにもう一通の手紙が来た。

差出人の名前はない。

・・・


開封すると、もちろん差出人はちづるちゃんだった。追い打ちをかけるように手紙を書いてきたんだろうか。

でも、中身は予想していたのとだいぶ違っていた。


「この番号に、電話してください

 0XX-XXX-XXXX」


それっきり他には何も書いていな


かった。前回と同じように、とても美しい字で。




どうしよう___




これはきっとちづるちゃんの家の電話番号だ。今と違って携帯電話がない時代。家の電話番号を書いてきたのだ。市外局番から。

僕が一番困ったのは電話して何を話そうかとか、責められるんじゃないかとか、返事を求められるとかそういうのではなくて、電話機が家族のいつもいるリビングにあって、子機を使うことは禁じられていたということだ。

会話の内容が、家族に丸聞こえになってしまう・・・。


その手紙からさらに数日経ったある日。

僕は意を決して、その電話番号に電話した。夜の8時くらいだったろうか。


続く

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