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1作目「すべての政府は嘘をつく」ペア鑑賞


公益よりも私益に走り、権力の欺瞞を追及しない大手メディア。それに抗い、鋭い調査報道で真実を伝えるフリー・ジャーナリストたちが今、世界を変えようとしている。彼らに多大な影響を与えたのが、1920~80年代に活躍した米国人ジャーナリストのI.F.ストーンだった。I.F.ストーンは「すべての政府は嘘をつく」という信念のもと、組織に属さず、地道な調査によってベトナム戦争をめぐる嘘などを次々と暴いていった。本作はそんな彼の報道姿勢を受け継いだ、現代の独立系ジャーナリストたちの闘いを追ったドキュメンタリーである。(UP LINKページより抜粋

全ての政府の嘘を暴きたい text by タケヤマ 

 「全ての政府は嘘をつく」が表すのは全ての人間は本質的に「弱い」ということだろう。組織に飲み込まれ、本当のことを言えなくなる権力者やその周辺者。本作品で、大手メディアの記者も槍玉に上がった。体制を揺るがすほどのインパクトのある報道は大手の記者がやろうとしてもできないものなのだと。結局は体制側に爪弾きにされるから。

 それはあんまりではないか、我々人間はそんなに「弱い」のか。記者の端くれの私ですら思う。

 だからこそ、権力によらないオルタナティブメディアが重要なのだと映画では訴える。権力の監視がジャーナリズムの役割であるからだと。しかし、先立つものはお金である。いくつかそうしたシーンがあったが、価値を認めてくれる人たちが資金面で支えてくれるからジャーナリズムが成り立つのである。

 だからこそ、市民のみんなの意識が重要なのだ。ジャーナリズムは民主主義を守る、そのことの価値を理解し支える読者や視聴者たち。優れた記者はまた走り、倒れてもへこたれずに、噛み付いていく。そして、情報を詰めていく。優れたジャーナリストがいたら応援してあげて欲しいのだ。「弱い」人ばかりではないと証明したいのだ。

メディアの分断とギルド化による可能性 text by フダ

 政府発信の政策情報に限らず、メディアのビジネス構造な難しさの話。難しさは2つあり、1つには政府や大企業などの強大なステークホルダーとの癒着であり、2つには顧客である大衆による顕在的なニーズがないけど公益的に大切な情報を届けづらい、という点。後者はtoC型のソーシャルビジネスが抱える問題と同じ構造でもある。

 映画公開時の2017年から3年たち、Youtubeが爆発している現在の解決策は、Webサービスを駆使したバーンレートの低い個人メディアなのだと思う。メディアの小商化である。でもこのやり方はリテールのロングテールのように、ミクロな経済圏は成立させるが、フィルターバブル的な情報の分断をもたらす。メディアの責務として重要な啓発性を保ちづらいのが難点だと思う。

 個人的には、クリエイティブ産業以上に、ギルド的な組織に期待ができるのではと思う。メディアコンセプトありきではなく、異なる領域に精通した個人メディアがゆるやかに連結、相互送客するイメージ。幻影旅団、スタートアップスタジオ、マグナムフォトみたいなイメージ。このあたり志のあるインフルエンサーマーケ企業、複数のD2Cブランドを展開するプロダクションの事例など参考になりそうなので、個人的にも思考実験していきたい。

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