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企画とクリエイティブが社会課題に果たせる役割

 自分は企画を作ったり、アイデアを考えたり、ワークショップを作ったり、クリエイティブの方向性を決めたりする仕事を割と多めにしています。そのほほ全てに背後に社会課題や環境問題があり、その解消の一助となるようなアウトプットを出したいと思ってのアクションです。

知ることを助ける存在としての企画とクリエイティブ 

 社会課題とか環境問題に対して企画とかクリエイティブが貢献できる1つが、「知る」ことの手助けです。社会課題も環境問題もとても難しい。だからこそ、インターフェイスを分かりやすく、楽しく、かっこよくしよう。そんな方向性です。デザインの力による地方創生とか典型例です。
 これはこれで大切だと思います。なのですが、興味がない人の可処分時間に入り込んで、社会課題や環境問題を「知らせる」のは、すごくハードモード。友達、恋人、家族、趣味、自己啓発、学校、職場のあれやこれやで満タンの生活をYoutubeやらNetflixやら、あらゆるtoC向けサービスが狙ってます。インターフェイスの向上だけじゃ太刀打ちできないよなあ、というのが自分の感覚です。

知覚を変容させる企画とクリエイティブ 

 この前友人の投稿で知って、これを読みました。

 アニマルウェルフェアとは、「動物たちは生まれてから死ぬまで、その動物本来の行動をとることができ、幸福な状態でなければならない」とする考え方です。

 この本で知ったのは、サシがたくさん入ったとろけるような牛肉は、あえて暗い所で飼育し、特殊な飼料を与え、運動を制限させ、牛に過剰な負荷をかけて人為的に作り出しているらしい。ちょっとショックでした。しかしこの現状を「知った」からといって、そういう肉を「まずい」と感じるようになるわけでもない。もちろん食すべきではない、と理性に訴えることはできるけど、何人共感するかけっこう疑問です。

 だから、こういうシュチュエーションで必要なのは、たっぷり運動して身が引き締まり、結果として硬くなった牛肉を、美味しくさせる企画とか、クリエイティブ なのだと思います。それはカクテルペアリングかもしれないし、硬い肉専用の焼肉のタレなのかもしれないし、スルメみたいに「コリコリした歯ごたえ」みたいなコピーワークなのかもしれないし、山の上のコーヒーとか海の家のカップラーメンみたいなモーメントの創出なのかもしれない。社会学で「現実は社会的に構成される」ってアイデアがありますが、人の五感や感覚も記号やイメージで作られます。

 そのレイヤーに介入し、体験や感覚を変容させるのがこれからの企画とかクリエイティブに求められるものだと思います。割と思考実験的な内容に見えるかもですが、例えばマグロのトロは1960年代以前は人気がなく捨てられていたという事実があり、人の味覚が短期間で急速に変わることは十分に起こりえます。それを意図的に仕掛けていくべきです。

企画とクリエイティブの射程と事業性

 長期スパンの話になるので、感覚の変容といっても、単発イベントで体験の場を!とかメディアアート的にぶっ飛ぶ体験を!ではなく、持続的な事業として推進するのが本筋です。その意味で、チョコレートはなめらかなのが美味しい、という感覚を揺さぶり、ザラザラした食感で美味しいクラフトチョコレートを作っているMinimalとかは模範解答の1つだと思う。

せっかく企画とかクリエイティブに関わる仕事をするのだから、拡声器や化粧のレイヤーではなく、言説の領域に手を突っ込んで、知覚の変容に携わっていきたいですよね。

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