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253DAY -令和の饗宴‐

 「饗宴」とはかつて古代ギリシャで行われた、ワインの盃を片手にソクラテスなどの哲学者が「愛」について話し合った出来事である。この饗宴によって「フィロソフィア」という概念が生まれることとなったのだが、それとは別に古代ギリシャにおける彼らの楽しみは、こうした酒を片手に繰り広げられる談話が大部分を占めていた。

 テレビやゲームなど当然ない時代、彼らにとっての「暇つぶし」や「楽しみ」は会話であり、そして人間界に蔓延る精神的な事象の究明こそ彼らの好奇心の源であった。

 ゲーム中毒やスマホ中毒が問題となっている今、こうしたかつての原始的な嗜みを経験することは極めて貴重なことであると思う。こうした前置きを踏まえて、今日はV-net教育相談事務所の移転祝いのパーティーに参加させていただいた。

 そこではテーブルの上に食事や飲み物が並べられ、ある一角ではギターや太鼓によるセッションが行われ、ある一角では飲み物を片手に会話が繰り広げられ、ある一角ではキャロムと呼ばれるボードゲームに興じ、ある一角では夜空を頭上に風通しのいいベランダで涼んでいる。

 まさに「饗宴」ではないかと僕は思った。純粋に人間の手で生み出されるその娯楽的空間。この光景を古代ギリシャに持ってきたとしても人々は何の違和感も持たないに違いない。僕もクラッカーやナッツをつまみつつほぼ同年代の人々と会話にふけり、時間をすっかり忘れてしまった。おかげで帰宅が23時になってしまった。

 「令和の饗宴」に集う者たち。彼らは古代ギリシャ人のごとく、現代娯楽が無かろうと楽しむことのできる能力を持っている。こうした経験ができる僕も、とても幸運だと今も感じる。

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