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ダイエット法、どれにする?

夏が近づき、なにげにダイエットの情報がちらほらと増えてきた気もします。
世の中に数え切れないほどダイエットのやり方があります。
しかし、効果のあるやり方かどうかとなると話は別です。

またまたしつこく繰り返すが、

摂取カロリー > 消費カロリー ⇒ 太る
摂取カロリー = 消費カロリー ⇒ 維持
摂取カロリー < 消費カロリー ⇒ やせる

これがすべてです。

どんなやり方でも、この法則に矛盾することはできません。
(この法則に矛盾する方法があれば、まずはその方法を疑いましょう)

今までに数多くダイエット法の中で、代表的な方法を4つピックアップしました。

1. ケトジェニックダイエット
2. ローファットダイエット
3. ロカボダイエット
4. VLCD( Very Low Calorie Diets )

この中で、特殊なダイエット法のVLCDを除外し(理由は『VLCD とは?』をお読み下さい)、残り3つのダイエット法をどう選ぶか?
耐糖能異常(糖尿病)や脂質代謝異常(高脂血症)、または腎機能が心配な方についても踏み込んだ意見を述べさせて頂きました。
理論と私見を交えながらの話となるが、ご興味のある方はご購読頂けたら嬉しいです。

どんなダイエット法にせよ、詰まるところ

アンダーカロリーであればやせます

でも、それじゃ身も蓋もありません。

ダイエット ≠  体重を落とす
ダイエット = 余分な脂肪を落とす

ダイエットは体重という見かけ上の数字を減らすのではなく、余分な体脂肪を減らすことが本来の目的であるはずです。
ダイエットで体重は落ちたが、「体脂肪率はあまり変わらなかった」や「思った体型にはならなかった」という体験したことはありませんか?
ダイエットで体重は落ちたが、「そのまま小さくなっただけ」や「やせたというより萎んだ」という人を見かけたことはありませんか?
筋トレやPFCバランスを考えずに、ただカロリーを減らすだけ、体重の減少を求めるだけのダイエットの結果です。

ただカロリーを落とすだけでなく、メソッドに則って行ったダイエットのメリットは、効率よく体脂肪を減らすことと、筋肉量の減少を最小限化することで、結果的に引き締まったメリハリのある体になることできます。

長い期間をかけてダイエットを行う計画(減量幅が大きい場合とか)なら、ローファットからスタートすることをお勧めします。
ダイエットの経過中に必ず停滞期という厄介者がが訪れます。摂取カロリーを見なおしたり、消費カロリーを上げたり、チートを入れたりしても停滞期から抜け出せない場合は、ダイエット法自体を切り替える必要があるかも知れない。すでにローファットである程度の期間が経過しているなら、体内のグリコーゲン貯蔵量もほどほど減っているでしょう。この状態でケトジェニックに切り替えれば、導入期も比較的に短くスムーズにケトーシスに突入できます。
逆にケトジェニックからローファットに戻すときは糖質を摂ればケトーシスから抜けるが、いきなり大量の糖質を摂らないように注意し、数日間かけてゆっくり移行した方がいいようです。人によっては急な血糖の上昇に体が対処しきれず、体調を悪くする場合があります。

では、ひとつの方法に絞りたいのならどのダイエット法が自分に向いているのか?

ケトジェニックダイエットのほうが出だしの体重減少が多く、体重が重い人、体脂肪率の高い人ほど効果が高く、また、早く結果を出したい人にもお勧めです。ただし、2〜3ヶ月ほど炭水化物を食べられなくても平気な人限定です。
ケトジェニックダイエットは主に脂質からカロリーを摂るため血糖が安定し、空腹感と戦うことが少ない(それどころか、慣れるまでは胃もたれすらするので、量を食べられないことが多い)。導入期の1〜2週間さえしのげば、あとはほとんど空腹に悩まされることなく減量が進みます。
また、食事のカロリー密度が高いためかさが少なく、ケトジェニックの間に胃のサイズも小さくなり、ケトジェニック後の過食も予防しやすくなります。
体重の重い人は一般的に筋肉量も多いため、まずは体脂肪を減らす=減量を優先してもいいと思います。いずれ筋トレの強度を上げ、有酸素運動を取り入れるなど運動量を増やすときに、心肺機能の負担を減らし、怪我の防止にもなります。ただし、ケトジェニックの期間中に筋肉量の減少を最小限に維持するためにはやはり筋トレが必要です。糖質カットで筋肉の修復能が低下しているため、筋肉の破壊を最小限にとどめるには筋トレの強度を低〜中に抑え、短時間で高頻度の筋トレがいいと思います。

ローファットダイエットはどういう人に向いているのか?
まず、炭水化物を辞められない人は必然的にローファットしかありません。そして、体脂肪率がさほど多くない人、筋トレのパフォーマンスを落としたくない人はローファットがいいと思います。
ローファットダイエットを行う際には、十分な糖質摂取と平行して中〜高強度の筋トレが必要です。ケトジェニックと違って、減量の速度はゆっくりなので、自信と忍耐が必要です。なかなか減らない体重で心配になってカロリーを低く設定しすぎたり、早く減量を進めたいと焦って糖質を減らしすぎたりすると、筋肉からの糖新生が活発となり、せっかくつけた筋肉が削られてしまします。一度立てた計画は自信をもってやり抜きましょう!
一般的に、ダイエット=アンダーカロリーのときに筋肉量は増えづらい(増えない!)と考えられているが、もし今までにあまり筋トレの経験がない、もしくは筋トレを始めたばかりでしたら、しっかりタンパク質と糖質を摂取し、高強度の筋トレを心がければ、ダイエット中でも筋肉を増やせる可能性があります。(初心者ボーナス!)

体脂肪率が高いが筋肉量の少ない人は、肉体改造のつもりで一旦体重が増えることを覚悟して +200〜300kcal/日 のオーバーカロリーで高強度の筋トレをし(バルクアップ)、ある程度の筋肉量を増やしてからダイエット(もちろん、ケトジェニックでもローファットでもよい)で絞ると効率よく減量でき、引き締まる体型になると思います。ただし、バルクアップ期間中で脂質を摂りすぎたり、高強度の筋トレを続けられなかったりすると、たださらに太って終わりになるので要注意です。

ケトジェニックダイエットとローファットダイエットはどっちの方がダイエット効果が高いのか?未だに論争は尽きないが、脂質制限ダイエットと糖質制限ダイエットを12ヶ月間行った比較研究(JAMA, 2018)では、最終的の減量効果に有意差はなかったという結果でした。ケトジェニックは出だしが早いが先はなかなか体重が減らないのに対し、ローファットはゆっくりだが着実に少しずつ体重が減っていきます。特別な目的やこだわりがなければ、自分がやりたい方法で構わないと思います。筋トレのパフォーマンスを維持したいと思えばローファット、早めに減量を進めたいと思えばケトジェニック、飽きたから切り替えるでも全然ありだと思います。停滞期に真逆のダイエット法に切り替え、代謝に「ゆさぶり」をかけることでまた体重が下がり出したりするので、絶対にどっちかのダイエット法がいいということはありません。カロリーを正確に計算し、正しいやり方であればダイエットは進みます。

今までは健常者である前提で話を進めてきたが、耐糖能異常(糖尿病)、脂質異常(高脂血症)など健康上に問題を持つ方のダイエットには何がいいか?
結論から言うと、

「良質のオイルを選択したマイルドなロカボダイエット」

がいいと思います。
耐糖能異常も脂質異常もベースにオーバーカロリーが存在します。
ダイエットなので、もちろんカロリー制限が必要です。カロリー制限のもとで、インスリン感受性や食後高血糖・高インスリンを改善する観点から、糖質の多いローファットより糖質を抑えた(抑えすぎないことが大事!)マイルドなロカボダイエットがベターだと考えます。(なぜケトジェニックは良くないのかは是非『ケトジェニックダイエット とは?』をお読み下さい)
耐糖能異常はそれでいいとして、しかし、脂質異常の場合は脂質を多く摂っていいのかという心配が残ります。脂質異常は脂質を摂ってはいけないと誤解がされがちだが、制限されたカロリーの範囲内で「良質のオイル」を選択すれば、脂質も大事な栄養素なので摂ってもいいです。牛脂・豚脂・乳脂などの飽和脂肪酸やマーガリン・洋菓子に使用されるショートニングなどのトランス脂肪酸を控え、ω-3系脂肪酸(魚油・亜麻仁油・エゴマ油など)を意識的に摂るといいと思います。
中にはカロリー制限をしても脂質の数値が高止まりする人がいます。その場合はカロリーの一部を脂質から糖質にシフトしたり、食物繊維を多めに摂取するように心がけるといいです。もちろん、タンパク質を増やしてカロリーを調整するのもいいが、タンパク質の摂取量に注意が必要です。

タンパク質の摂取量についての注意点、特に耐糖能異常の方が注意すべきなのは、腎機能に問題はあるかどうかです?
例えば、すでに主治医の先生から「腎機能が低下してますよ」と言われていたり、または尿検査で蛋白尿が出ていたりする場合は、残念ながらタンパク質の摂取量を控えなければなりません。(最近、タンパク質が腎臓に悪いと物議を醸した先生がいらっしゃいましたね。ちなみに、私は腎機能が正常なら一般的にトレーニーが摂るタンパク質量で腎臓を悪くすることはないと思います。しかし、腎機能に問題がある場合はタンパク質を控えるべきには賛成です。)
以下は私見となるが、腎機能に問題はない方でもリスクを考え、筋肉量を増やすためにタンパク質の摂取量を上げたい場合はまず体重の1.0〜1.2倍(日本人の食事摂取基準から換算)から開始し、腎機能や尿蛋白をみながら少しずつ増やし、最大でも1.6倍(筋肉増加を最大化するためのタンパク摂取量(BJSM, 2018))程度までに留めた方がいいと考えます。一般の検査では現れない非顕性腎障害の場合もあるので、むやみにタンパク質を大量に摂取すべきではないと思います。異常値が出たらすかさずタンパク質の量を減らすよう心がけ下さい。健康のためのダイエットなので、体に悪影響が出ては本末転倒。何よりも“健康第一”です。もちろん、主治医の先生がいらっしゃる場合は実行する前には必ず相談をして下さい。

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いかがでしたか?
今回はダイエット法のチョイス、特に糖脂質代謝異常、腎機能障害を持つ可能性のある方について踏み込んだ見解を述べました。一内科医の意見としてご参考になればと思います。

では、次回もお楽しみに。
“ 一時の減量より一生の健康 “


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