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夢みた日常、お茶あそび

ゆりかごの中で夢みた日常を
生きる 床に零したお茶で遊ぶ君

いつ終わるのかも分からぬ長い長いNICU時代、息子おもちを連れて帰りたくて、

『ベビーベッドをここに置いたら』
『リビングでバウンサーに乗せたら』

と、おうちでの生活を色々と、それは色々と、暖かな保育器に寝転ぶおもちの横で妄想していた。


時は経ち、おもちがおうちでの生活を始め、また更に時は流れ、すっかりおもちが

『このうちの子です、病院?何の話?』

という顔つきの幼児になり。

手に持ったストローマグを逆さまにして振る。
中のお茶がぴしゃぴしゃと床にこぼれる。
そのお茶で絵を描いて遊ぶ。
『まま!まま!』とドヤ顔で母を呼ぶ。

延々繰り返されると、母はムキー!となる。
だれが掃除すると思ってるの。

でも、ムキー!となりながらも、
あの頃、保育器の中で小さなもみじの手を握りながら、夢にまで見たおうちでの生活を、おさなごの他愛ないいたずらを、こうやって叱れることすら尊くて、ふとしんみりするのである。

そして、上の子たちは

『ママはおもちくんにあまーい!』

と言いながらも、年の離れた弟をもみくちゃにして愛でていて。

夢に見た日常だなぁ。

日常の尊さに思わず心の中で拝むのである。
こぼれたお茶を拭き掃除しながら。

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