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Tony McPhee – The Two Sides Of Tony (T.S.) McPhee (1973)

 実力と共に先進性を備えたブルース・バンドThe GroundhogsのギタリストであるTony McPheeのソロアルバムは、タイトル通り、伝統的なブルース・サイドとアヴァンギャルド・サイドを分立した作品だ。これは1971年のThe Groundhogsの代表作『Split』で顕著だったプログレッシブ・ブルースの要素を見事に二極に分離し、かつ一枚のレコードとして成立させるという荒業に近い行為でもあった。
 ブルースらしい怒りに溢れている「Dog Me, Bitch」や、豪快なスライド・ギターをソロで聴かせる「Take It Out」はブルースマンとしてのMcPheeの実力をこれ以上ないほどに見せつけてくれる。また、示唆に満ちた内容の「Three Times Seven」は一筋縄でいかないThe Groundhogsでの彼らしいナンバーだ。
 B面を占める「The Hunt」は一転してシンセサイザーや、リズムエースと呼ばれる電子パーカッション(!)さえ駆使したテクノを展開している。狩りをモチーフにしたところはいかにもイギリス的ではあるが、哲学やその抽象性はA面をはるかに凌ぐ難解さだ。
 このような作品は、他のアーティストならば2枚の別のレコードとして発表するべきものかもしれない。しかし、政治や社会構造に対する感情を以って描かれる内省的なMcPhee自身の世界観がそれを見事につなぎとめている。タイトルの〈The Two Sides〉とは彼の分裂した内的世界に他ならない。