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Various – Blues Avalanche (Recorded Live At The Montreux Jazz Festival, Switzerland) (1972)

 伝説のジャズ・アンバサダーズよろしく、Muddy Watersをはじめとするブルースの重鎮たちも、アメリカ国外でのコンサートツアーを精力的に開いていた。そしてその演奏は、普段のアルバムでは決して聴くことのできない夢の共演の宝庫でもある。
 1972年のスイスの歴史ある音楽祭モントルー・ジャズ・フェスティバルに出演した一行にはBo Diddley、Koko Taylor、そして最晩年のT-Bone Walkerらが名を連ねた。主にバックバンドでコンサートを支えるのはThe Acesの3人である。ドラマーのFred BelowがボーカルJimmy Reedの曲を披露する珍しいワンシーンまである。DiddleyはコーラスとしてCookie Veeを従え「I Hear You Knoockin'」を披露する。クレジットは彼の名だが、元はSmiley Lewisの曲だ。Koko TaylorのステージではDixon、Below、Watersという黄金時代のメンバーが復活しているのも感慨深いものがある(彼らは名盤『The Best Of Muddy Waters』の主要録音メンバーでもある)。
 また珍しいメンバーとしては、チェスのセッション・ピアニストとして歴史的な録音を多く残したLafayette Leakeが、ソロで会場を沸かせる場面がある。Leakeの名を知らなくても彼のピアノを聴いたことがない音楽ファンはまずいないだろう。Chuck Berryの「Johnny B. Goode」の軽快なピアノは、他ならぬLeakeのプレイである。ベースのWillie Dixonとぴったり息の合った「Wrinkles」や「Swiss Boogie」もブギウギ好きにはたまらない。
 ハープにGeorge Bufordを擁し、時期としては『Electric Mud』以来再びファンク期に差し掛かっていたころのMuddy Watersは絶好調だ。おなじみ「Got My Mojo Working」で会場を盛り上げたWatersがT-Bone Walkerを紹介し、ブルースの二大巨頭が同じステージ上で名曲「Stormy Monday」を披露した。
 残念ながら未だCD化はされていないものの、本作はアン・アーバー・フェスティバルにもひけをとらない資料的価値があると言っていいだろう。