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Art Hodes' International Trio ‎– Blues To Save The Trees (1982)

 録音当時すでに70代後半に差し掛かっていたピアニストArt Hodesは、汚れきった地球環境の行く末を憂いていた。彼はドイツを訪れた際、森林破壊の反対と環境保護の啓蒙のため、現地のジャズ・ミュージシャンとコンサートを企画している。陽気なイメージのあるニューオリンズ系ジャズだが、本作がとりわけ不気味なジャケットになったのはそういったいきさつがあった。
 Hodesとトリオを組んだのは、ドイツのBarrelhouse Jazzbandに参加していたクラリネット・プレイヤーReimer von Essenと、ニューオリンズで活動していたドラマーのTrevor Richardsだ。本作はEssenのソリストとしての初めての作品でもあるが、ニューオリンズの伝統を解する彼は粋な演奏で会場を沸かせる。
 Hodesのピアノ・ソロから入る「How Long Blues」は、戦前の名コンビScrapper BlackwellとLeroy Carrによる掛け合いで有名なブルースだ。「Blues My Naughty Sweetie」はディキシーランドの常連曲。Hodesとはおよそ40歳差であるEssenがここぞとばかりにソロを披露する。「Cow Cow Blues」はシカゴでは知らぬ者はいない、ピアニストCow Cow Davenportの代表曲である。後に落ち目になったDavenportに再録音の機会をもたらしたのも、ほかでもないHodesであり、ゆかりの深い先達の曲をHodesが今回取り上げていることは興味深い。彼がブルース・ファンからも評価されることが多いゆえんでもあろう。
 ドクロのアートワークとはかけ離れた穏やかな雰囲気がこのアルバムには満ちている。本作の演奏がフランクフルトの空港建設にどれだけの影響を与えたかはわからないが、Hodesはこの共演を気に入ったようだ。彼は1986年にメンバーを再結集し、ジャゾロジー・レーベルへふたたび録音を残している。