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The Rolling Stones – The Rolling Stones (1964)

 当時は珍しいことではなかったが、The Rolling Stonesのデビュー・アルバムは米英で収録曲が異なっている。この時点で彼らは「I Just Want To Make Love To You」や「Honest I Do」といったシカゴ系ブルースのカバーを信条としていた。意外にも最初のシングルだった「Come On」や、Lennon-McCartneyが提供した「I Wanna Be Your Man」は収録されておらず、アルバムにロックンロールが登場する比率は多くない。
 正統派なマージー・ビートである「Tell Me」はMick JaggerとKeith Richardsの初の共作曲であり、アルバム中唯一のバンドによるオリジナル曲でもあった。「Little By Little」はPhil Spectorが提供したものとされてはいるが、実際はJimmy Reedの歌をもとにした典型的なシカゴ・ブルースだ。だが「I'm A King Bee」のヘヴィなリズムや、Ian Stewartのオルガンで加速をつけた「Now I've Got A Witness」など、60年代の(というよりはBrian Jones期の)The Rolling Stones特有の力強いR&Bのテイストがほぼ出来上がっていたことはうかがい知ることができる。
 上記のアメリカ盤には〈England's Newest Hit Makers〉という文言が記されていた。彼らが真の意味でのヒット・メイカーになるのはしばらく先のことだが、The Beatlesに続くブリティッシュ・インヴェイジョンのグループとしてThe Rolling Stonesは着々とシングルをチャートの上位に送り出していった。その嚆矢となったのはほかでもない「Tell Me」だ。