Snooks Eaglin – That's All Right (1962)
これはSnooks Eaglinのレコードを何枚か聴いた人なら誰でも思うことなのだが、〈優れたブルースマン〉という使い古された肩書では彼の深い音楽性の1/3だって捉えることはできない。実際Eaglinの初期のキャリアで有名なインペリアル・レーベルの吹き込みは明るいポップ・ソウルだっだし、リバイバルが流行った時期の「Tomorrow Night」で彼は色っぽいジャズ・シンガーに変貌する。あまつさえ「Pine Top's Boogie Woogie」ではピアノの演奏をギターで再現する超絶技巧だって見せる。つまり、本作で描かれているストリート・ミュージシャンとしての顔は、あくまで彼の一側面に過ぎないのだ。
フォーク・ソングの典型のメロディで歌われる「Mama Don't You Tear My Clothes」や「I'm A Country Boy」は、いかにもプレスティッジやフォークウェイズが好みそうないなたいブルースだ。そういった中にも「I Got A Woman」のようなR&Bナンバー(途中の見事なファルセットは注目だ)が入り込んでいるところに本作の真価がある。「That's All Right」も耳なじみのある曲だが、本作では独特な緩急のブギに解釈されており、セクシーな歌い方にはどこかMemphis Slimの「Steady Rolling Blues」をほうふつとさせるものがある。リズミカルな「Bottle Up And Go」ではギターがたちまち軽快なパーカッションに化ける。
本作はフォーク・ソングの研究家であるHarry Osterによって録音された一連の作品の中の一つだった。その卓越した内容はEaglinの名を広めるきっかけになったが、彼自身はフォーク・シンガーであることにはこだわっていなかった。ひとたび時代やレーベルをまたげば、全く違う彼の音楽と出会うことができるだろう。