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Pärson Sound ‎– Pärson Sound (2001)

 スウェーデンの伝説的なサイケ・プログレ・バンドPärson Soundが60年代後期に残した秘蔵音源の数々は、かつてOrnette Colemanが〈ゴールデン・サークル〉にバラまいた前衛芸術の種がいかに根深いものだったかを、見事なまでに物語っている。ほとんどはライブ録音で、現地のラジオ放送用音源などは音質が貧弱なものも多いが、演奏のすべてにそれを補って余りあるパワーが満ちている。
 バンドの中心人物であり、後に同国のプログレ・グループを渡り歩いていくBo Anders Perssonは、Terry Rileyのミニマリズムとアメリカのサイケ・ポップのバンドから確かに強く刺激を受けてはいる。しかし印象的なリフや明確なビートといった、ロックが本来持っているべき構造は演奏が進む中でたちまち崩壊してしまう。
 彼らの楽曲の中で最もロックしているのは「Sov Gott Rose-Marie」の導入部くらいなもので、後半は「Dark Star」にラーガっぽい質感のギターを加えたような展開になり、呪術的かつ実験的なサウンドに支配されていく。完全なドローン作品「A Glimpse Inside The Glyptotec-66」の中で駆使されるテープ・レコーダーも興味深いが、ほかにもいろいろな要素がリスナーの耳を刺激する。それはArne Ericssonによる電化されたチェロの響きや、「Skrubba」で聴けるKjell Westlingの象のいななきのようなサックスといった、クラシックやジャズに根差した音楽性だ。さらにヨーロッパらしい雰囲気をたたえたフォーク・ソング「On How To Live」という意外な一面もある。
 2000年代に入って突如出現したこの深遠な音楽は、多くのロック・ファンの度肝を抜いた。確かにこのアルバムは驚異だ。