論文を見付けて読む癖を付けよう
大学や大学院で研究を始めるにあたり,まずは自分がやってみようと思う研究分野の最先端を知っておく必要がある.自分で研究テーマを決める場合でも,教員から研究テーマを与えられる場合でも,それは同じだ.最先端の研究について知るには文献調査が不可欠になる.文献には,学術論文や特許など色々な資料が含まれるが,ここでは,論文と呼ぶことにしよう.
パターンがわかれば難しくない
論文を読むという作業は,特に最初の3報程度を読む作業は,とても困難なものになるだろう.見たこともない単語だらけであるばかりか,英和辞典で日本語に直しても意味がわからない単語だらけであることは珍しくない.医療分野の論文なんて,単語が長すぎて顔が引き攣る.その上,頑張って読んでも,研究の背景がわからないし,内容がわからないし,とにかく難しすぎてもう嫌だと感じるかもしれない.でも,それが普通だから,落ち込む必要はない.
論文を読むのは大変だけれども,論文に書かれている内容を理解するために,いっぱいテキストや事典や辞典を読み漁って,わからないところを一つ一つ潰していけば,論文の表現はパターン化されているので,スラスラと読めるようになる.挫けずに頑張ってみよう.
スラスラ読めるようになろう
研究室に配属されて,生まれて初めて研究なるものに着手する学部4回生(3回生以下のところもあるだろう)であれば,まず,上記の状態(論文がそこそこスラスラと読める状態)になることを目指そう.もちろん簡単ではないし,そうなるには膨大な勉強が必要になる.本気で論文を読み始めたら,すぐに大学3年分の勉強量を超えるかもしれない.それくらい勉強しないと,最先端に追いつけるはずがない.
でも,それだけの努力をすれば,間違いなく実力が付く.そうすれば,修士課程で仮に研究テーマが全く違うものになったとしても,あるいは将来,自分で新しいプロジェクトを立ち上げることになったとしても,研究の立ち上げは劇的に速くなる.
独創的な研究も論文を読むことから
大学院に進学して本腰を入れて研究をするようになったなら,修士課程1年目では,たくさんの講義に加えて,ガンガン論文を読んでいく必要があるだろう.ここで,文献を調査する癖,論文を読む癖をつけておかないと,文献調査もせずに我流で時代遅れな問題解決を図る技術者なんかになりかねない.折角,大学院にまで行ったのに,それでは勿体ない.
世の中には途方もない数の論文が存在するが,文献データベースの検索機能などをうまく活用して,読むべき論文を短時間で掘り出し,短時間で読んで理解する力は,とても重要だ.そういう力を学生のうちに是非とも身に付けておいて欲しい.独創的な研究もそこから始まる.
読むべき論文の数
読むべき論文数が決まっているわけではない(分野によっても違うだろう)が,私の個人的な感覚では,学部4回生なら少なくとも5報,修士課程なら数十報,博士後期課程なら100報以上が目安のように思う.斜め読みではなく,きちんと読む論文の数だ.論文を読んでいない,あるいは自分でよく考えていない学生の卒業研究発表や修士論文発表は,仮にスライドの体裁が何とかなっていたとしても,自分の研究の位置付けすら曖昧になっているので,すぐにボロが出る.痛々しい質疑応答になりがちだ.そうならないのは当然として,大学院で研究するなら,「この分野のことなら私に聞け!」と言えるくらい論文を読んで欲しいなと,一教員としては思う.
読んだ論文の内容は記録しよう
最後に,読んだ論文の内容を記録しておくことを強く勧めたい.私は脳味噌の記憶容量が小さいので,論文の内容なんてすぐに忘れてしまう.記憶力抜群な人には釈迦に説法なのかもしれないが,読んだ論文の情報はメモしておいた方がよい.
最低限記録しておくべき情報としては,論文のタイトル,雑誌名(学会名),発行年,著者,概要といったところだろう.ただ,「概要」では曖昧なので,「目的」「方法」「結果」「結論」などに分割して記録しておくといい.
また,オフィス系ソフトを用いて自分流の文献データベースを構築してもよいが,無料で使える便利な文献管理ソフトが色々あるので,自分好みのを見付けて利用してみよう.これらについてはまた改めて.
© 2020 Manabu KANO.
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