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動ける柔軟な體(からだ)を取り戻した話

幸せであるために,誰もが健康であることを願う.ただ,健康とはどのような状態であるかについて,きちんと考えておく必要がある.病気を患っていないことは大切だろうけれども,それだけでは十分でないように思える.身体だけではなく,心身共に健康であることが必要だろう.そのような観点から,身体に栄養を与えるための食事は忘れないくせに,心に栄養を与えることには無頓着な人が多いという批判もなされる.だから読書せよ,ということも言われる.

ショーペンハウアーは「幸福について―人生論」の中で「健全な身体に宿る健全な精神が,われわれの幸福のためには第一の最も重要な財宝である」と述べている.身体と精神の両方が健全であることが望ましいということについては,多くの人が納得するだろう.

しかし,この記事では精神の話はしない.身体に着目する.病気でないというだけでなく,キレのある動きができるか,柔軟に動けるか,ということに注目する.

体と體

「体」とその旧字体である「體」(からだ)は元々意味の異なる別字だったが,同じ意味に使われるようになり,常用漢字でなくなった體は使われなくなった.

体は「殻」に接尾語「だ」が付いた語で,魂を宿した⾁体である「⾝」の外形部分,つまり魂のない部分を指した.平安時代には,セミが脱⽪した後の抜け殻や死体などの意味,つまり「亡骸(なきがら)」を指していたとされる.このような歴史的経緯を踏まえると,骨が豊かであると書く「體」という漢字の方が雰囲気が良いように感じる.

「體」は、会意。「骨」+「豊」(=多くのものがきちんと並ぶ)。多くの骨がきちんとつながっている意。
[広辞苑第五版]

體は,我々の「からだ」が,多くの骨がきちんとつながることで成り立っていることを表している.骨がとても大切なわけだ.このことを忘れて,筋肉ばかりに目を向けると良くないのではないか.筋トレを猛烈に頑張った挙げ句に故障して戦線離脱したというのでは努力が報われない.日本人メジャーリーガーでも大きな怪我をせずに長く活躍し続けたのは筋トレに否定的なイチロー選手だ.

骨ストレッチとの出会い

2016年10月22日,初めて「骨ストレッチ」の講習会に参加した.共同研究者として多くの論文を書いてくれている(そして論文賞"JCEJ Outstanding Paper Award"も獲ってくれた)元研究室の後輩に誘われて行ってみた.

「加納先生! 骨ストレッチ,めっちゃいいんですよ! 今度一緒に行きましょう! 京都でも講習会ありますから!」

と元気よく誘ってもらったものの,

「は? 骨ストレッチ? 骨が延びんのか? びよーんって腕が伸びるのは怪物くんかルフィーかだろ」

という感想しか湧かなかった.それでも,めげずに熱心に誘ってくれるので,とにかく経験してみることにして,恐る恐る講習会に出掛けた.

骨ストレッチで劇的に前屈できるようになる

骨ストレッチをするときには,こまめに體の状態を確認する.先生に

「では,前屈してみましょう」

と言われて,前屈なんて何年振りだろうかと思いながら前屈すると,床のはるか手前で体が止まる.恐らく−30cmくらいだったろう.それより酷かったかもしれない.体が硬いのは自覚していたが,それにしても恥ずかしいくらいに硬い.

それが今,掌(てのひら)が床にべったりつく.楽勝だ.

掌が床にべったりつくようになるまでに,1年くらいかかったような気がする.骨ストレッチ講習会に通い出した頃は,半信半疑というのもあり,ストレッチする習慣がないというのもあり,ほぼ月一回の講習会のときだけ頑張るような状態だったので,講習会で動きやすくなっては1ヶ月で元の木阿弥になるようなことを繰り返していた.

それでも,骨ストレッチをすると體が動かしやすくなるので,徐々に自宅でも取り組むようになった.その結果,1年くらい経つ頃には,前屈で掌が床にべったりつくようになった.何をさせても三日坊主の私だけに,驚くべき成果だ.

キレッキレに動ける體になる

これは理想で,私が動けているわけではない.しかし,柔軟性が劇的に向上しただけではなく,着実に歳をとっているにもかかわらず,より動ける體になっているのは確かだ.

趣味で乗っているロードバイクでは,レースに出場するわけではなく,ボッチでサイクリングを楽しむだけだが,先月も琵琶湖一周サイクリング(琵琶湖大橋よりも北側のみ145km)を平均27.2km/hで走破してきた.この数値はのんびり観光しながら走っている時間や信号などでの加減速も含むので,走ることに集中している区間では平均34km/hくらいにはなる.

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もう1つの趣味のゴルフでは,あまりにも練習しないので,いつまでたってもスコアは120前後をウロウロしているが,2018年秋の「第6回加納杯」(凄い名前を付けていただいたものだ)でドラコン賞を獲得するくらいには振れる(こともある).下手くそな私を見捨てずに付き合って下さる仲間には感謝しかない.

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直接指導してもらうのが最善

骨ストレッチに何かしらの効果があることは,この三日坊主魔の私が4年近くも講習会に参加し続けていることから明らかだ.実際,驚くほど柔軟性を取り戻したし,スポーツも楽しんでいる.

しかし,効果だけではなく,続けてきたからこそ分かることがある.それは,酷く錆び付いてしまった体をキレッキレに動ける體にするには手間がかかるということだ.そして,錆び付いた体はそのセンサーも錆び付いているので,自分の体の変化を敏感に検知できないということだ.これらの理由で,骨ストレッチの講習会に参加した人,ビデオを見てやってみた人,本を読んでやってみた人が,みんなすぐに効果を実感できるわけではないのだと思う.

私の場合は,幸いにも,後輩に講習会に誘ってもらえて,骨ストレッチ創始者の松村卓先生から直接指導を受けることができて,インストラクターの方々におだててもらったのを鵜呑みにできる図々しさがあったため,これまで続けることができた.正直なところ,ビデオを見ただけ,本を読んだだけだと,私は継続できなかったと思う.

骨ストレッチをお手軽に試す方法

これらのことを踏まえた上で,骨ストレッチをお手軽に試してみる方法を紹介したい.

もちろん,最高にオススメしたいのは講習会に参加することだ.創始者である松村卓先生が運営されるスポーツケア整体研究所のウェブサイトに「骨ストレッチ®講習会のご案内」が記載されているので,近くで講習会があるなら,是非,講習会に参加してもらいたい.

講習会に参加するのが難しい,あるいはもっと手軽に試してみたい場合には,ビデオを見ることをオススメしたい.できている人の動きを見ることは大事だ.本ではそれが難しい.

スポーツケア整体研究所のページ「毎日して欲しい骨ストレッチ!」には,5種類の基本動作と体操の動画(英語字幕付き)がある.この基本動作を繰り返すだけでも確実に効果がある.

加えて,スポーツケア整体研究所のYouTubeチャンネルもあり,より多くの動画が公開されている.基本動作を身に付けてから見るとよいだろう.

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あと,本を読むのもよい.先生の動きが見える動画が良いとは言っても,動画があるのは一部のメソッドに限られる.このため,目的別に解説されている骨ストレッチの本を読むのもよい.いくつか挙げておく.

ゆるめる力 骨ストレッチ」,文藝春秋,2015
やせる力 骨ストレッチ」,文藝春秋,2016
コリ・ハリ・痛みが消え、疲れ知らずの体になる 人生を変える! 骨ストレッチ」,ダイヤモンド社,2016
歩く力 骨ストレッチ式ウォーキング」,文藝春秋,2020

おわりに

最近は,骨ストレッチ指導員の方々から,「最近,體の調子がいいですね!動きがキレてますよ!出張してないのがいいのでしょうね!」と言われる.実際,新型コロナウイルスの影響で外出自粛が求められ,出張がなくなった結果,週に京都ー東京3往復とかいう馬鹿げた行動もなくなり,何時間も身体を動かさずにじっと車内でパソコン仕事をするといったこともなくなり,それらが體に良い影響を与えているのだと思う.今後もなるべく出張は控えて,オンライン会議で済ませるようにしたい.

私自身,いくつもの運動法やストレッチ法を比較したわけではないので,どれがベストかを言うことはできない.それでも,骨ストレッチで動ける體を取り戻しつつあるのは確かだ.錆び付いていた私の體を見捨てずに手入れして下さった松村先生や指導員の皆さんには感謝するばかりだ.

サイクリングの巡航速度アップとゴルフの飛距離アップを目指す.
ちなみに,大学で効果検証実験も行っている.

© 2020 Manabu KANO.

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