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「ビジネス教養としてのウイスキー」を学ぶ

マッカラン60年の落札額は驚異的で別世界の話だが,そのマッカランがスポンサーとなり,オックスフォードやケンブリッジを含む英国の大学で学生対象のテイスティングセミナーを開催しているといった話も興味深い.

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ビジネス教養としてのウイスキー なぜ今、高級ウイスキーが2億円で売れるのか
土屋守,KADOKAWA,2020

投資してのウイスキーの話ばかりではなく,庶民の酒だったウイスキーが,オークションで競売されるようになるとは誰も思わなかったウイスキーが,ここまで世界的に認知されるようになったのはどうしてなのかという歴史的経緯も解説されている.

ウイスキーの歴史については,それ以外の実に多くのことと一緒に,ウイスキー検定を受検するために頭に詰め込んだ.その歴史と重複する部分もあるが,本書「ビジネス教養としてのウイスキー」では,また違った観点から説明されており,ウイスキーを多角的に捉えるという意味でよかった.

現在は空前のウイスキーブームの最中にあり,人気のボトルは入手するのが極めて困難になっている.ジャパニーズウイスキーの人気も高く,サントリーのシングルモルトである山崎や白州,そのブレンドである響,ニッカの竹鶴など,特にそれらの長期熟成されたボトルは高額で取引されており,リーズナブルな価格で手に入れるのは極めて難しい.もっぱら抽選に頼るしかない.新しいウイスキーも転売屋がはびこっている.

ウイスキーを飲みたいだけの個人としては,ウイスキーブームは嬉しくない.

このウイスキーブームを牽引しているのは,クラフトウイスキーである.本場スコットランドでも,老舗アイルランドでも,そして日本でも,新しい蒸溜所が次々と誕生している.そのような蒸溜所の中には,地域社会と密接な関係を築き,地域社会と共に発展していこうとするところもある.日本国内の例として,北海道の厚岸蒸溜所が挙げられている.

このような例を含め,原料となる大麦麦芽や穀類の生産,熟成に必要な木樽の調達,そしてウイスキーに適した水の供給など,ウイスキーが地域性を活かし,地産地消を目指すと,地域の一次産業との連携が必要になり,ウイスキー生産が地域経済の活性化に繋がる.このような観点でもウイスキーを捉えていく必要があるだろう.

「ウイスキーは日本人に必須の教養である」とまでは思わないが,ウイスキーを飲むのも,ウイスキーを知るのも,大いに楽しんでいる.そんな楽しみをちょっと深めるのに,本書「ビジネス教養としてのウイスキー」はよいと思う.

目次
第1部 ウイスキーの歴史
単なる密造酒から、世界の蒸留酒へ
 第1章 ウイスキーの味は「偶然」から生まれた
 第2章 ウイスキーの歴史はグレンリベットの歴史である
 第3章 ブレンデッドウイスキーが「黄金の10年」を生む
 第4章 無限の広がりを生む、シングルモルトの誕生
第2部 世界的ブームの源・クラフトウイスキー
ウイスキーの今を知るための重要なキーワード

 第5章 「黄金の10年」の再来を呼ぶクラフトウイスキー
 第6章 なぜジャパニーズウイスキーは世界で人気なのか
 第7章 クラフトウイスキーのキーワード「地域の活性化」
 第8章 「アイリッシュ」という独自の味わいを知る
第3部 投資としてのウイスキー
なぜ今、高級ウイスキーが2億円で売れるのか

 第9章 オークションでウイスキーが話題をさらう
 第10章 世界最高「約2億円」の値がついたマッカラン
 第11章 ウイスキーが投資対象になる理由
 第12章 今なお進化するウイスキー
おわりに ウイスキーは日本人に必須の教養である


© 2023 Manabu KANO.

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