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目的と手段を取り違えないために

「四隅」を取ることを目指しすぎて,リバーシ(オセロ)で勝てない.
「飛車」を取ることに熱中するあまり,将棋で勝てない.
そして,重箱の隅を突くような研究をする.

こういう人は目的と手段を取り違えているわけです.ゲームに勝つことが目的だとしたら,そういう行為は控え目に言ってアホのすることです.でも,世の中,そんなアホみたいことで溢れています.なぜなのか.

目的があって,それを達成するために手段がある.

そりゃそうだと思う人は,目的と手段を混同するなんてことはないですよね.でも,世の中がそんな人ばかりなら,目的と手段を取り違えておかしなことになっている組織も人ももっと少ないはずです.

もっと複雑なんですよ,現実は,たぶん.

目的と手段の関係

目的と手段の関係は下図のようになっていると思うんです.個人的には.

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「始点」(現在の状態)があり,どこか遠くに「目的」がある.その「目的」に到達するルートは恐らくいくつもあるんですが,自分なりに考えて最も良さそうなルートを「手段」として採用する.日常生活で,仕事で,趣味で,研究で,そういうことを意識的に,あるいは無意識に,やっているのが我々です.

本来の大きな目的にすぐに到達できない場合,目的を段階的に定めます.いわゆるマイルストーンとかいうやつです.

例えば,リバーシ(オセロ).本来の大きな目的は「勝つ」ことです.接待オセロなら負けないといけないかもしれませんが,そういうのは無視します.このとき,「どうしたら勝てるか?」を考えます.じっと考えていると,「四隅を取れば,絶対に裏返されない」という事実に気付きます.革命的な発見です.それで「勝つ」という目的のために,「四隅を取る」という手段が生まれます.でも,いきなり隅に白や黒の石を置くわけにはいきません.そこで,「四隅を取る」という目的のために,「○○する」という手段が生まれます.

さあ,今まさに手段が目的になったことに気付きましたか?

勝つための手段だった「四隅を取る」が,目的に昇格しました.ここで,「勝つ」という目的を忘れずに,「四隅を取る」のは手段のひとつだ(勝つことの必要条件ではない)という立場を保てればいいのですが,凡人にはとても難しいわけです.目の前の目的ばかりに気を取られてしまいます.まるで,人参を頭の前にぶら下げられた馬のように.

このように,本来の大きな目的に向かうルートには,その途中に中間的な目的がいくつもあって,多段構造になっています.次の段階での手段は,今の段階での目的だったりするわけです.中間的な目的を1つずつ達成していけば,必ず本来の大きな目的を達成できるなら,何も問題ありません.でも,現実の多くの問題はそんな単純ではないわけです.自分の行動によって状況が変化していく.四隅を取ろうと藻掻いている間に,相手は着実に勝ちへと前進しているんです.それを無視して手段にしがみつくのはバカです.

視野狭窄で重箱の隅に進軍する

目的と手段は多段構造になっていると同時に,入れ子構造にもなっています.本来の大きな目的と手段があって,それをよく見てみると,中間的な目的がいくつも見えてきます.中間的な目的には中間的な手段があって,それらをよく見てみると,その中にも,目的や手段があるわけです.

そこで,腕まくりをして,中間的な目的を達成するために,中間的な手段を考案して実施します.中間的な目的はいくらでもあるので,いくらでもやることはあります.

亀が今いる地点に到達することが目的だ!と言っている人がいて,その地点に到達した頃には亀は前に進んでいて,また亀が今いる地点に到達することが目的だ!と言って・・・・・・を繰り返すようなもので,亀に追いつくのはいつになることやら...

いや,アキレスはちゃんと亀に追い付き追い越すからいいんです.そして,その過程がきちんと本来の大きな目的の達成に向かっているならば,それでいいんです.でも,問題は,道が逸れてしまっているかもしれないことです.本来の大きな目的を忘れて,手近な問題(目的と手段)に熱中するあまり,道を踏み外して,見当外れな方向に進んでしまっていないか.それが気になるわけです.重箱の隅を突く研究というのは,大抵,そうして生まれるのではないかと思うわけです.

これも手段の目的化でしょう.気を引き締めて取り組まないと,容易に落ち込んでしまう罠です.

目的こそが大切

まあ,なんだかんだと書きましたが,最も重要なのは,どのような「目的」を掲げるかでしょう.それは人生でも同じです.次回は「人生最適化計画」について書こうと思います.

最後に,ドラッカーの言葉を紹介します.

組織は,自らのために存在するのではない.組織は手段である.組織の目的は,人と社会に対する貢献である.あらゆる組織が,自らの目的とするものを明確にするほど力を持つ.
ピーター・F・ドラッカー,「断絶の時代

© 2020 Manabu KANO.

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