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男女雇用機会均等法における女性限定公募についてのメモ

大学では女性教員比率が低すぎることが問題になっていることがある.例えば,工学研究科の教員はほとんどが男性であり,世の中のほぼ半分は女性であるのにけしからんというお叱りはあるかもしれないが,大学院生の女性比率も低いので,女性教員比率を劇的に高めるのは簡単なことではない.

そう言えば,先日テレビで,某芸術系大学では,女子学生が男子学生に比べて圧倒的に多いのに,教員はほぼ全員が男性であると指摘されていた.女子学生からは,男性目線でしか作品が評価されない,こんな業界にいても仕方がない,といった声が聞かれた.

さて,大学で女性教員比率を高めようとするとき,その根拠になるのが男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)である.特に関連する条文を以下に示す.

(目的)
第一条 この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。
(基本的理念)
第二条 この法律においては、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあつては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。
(性別を理由とする差別の禁止)
第五条 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
(女性労働者に係る措置に関する特例)
第八条 前三条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。

女性教員比率を高めなければならない状況において,採用時にどのような方策をとりうるかが問題になる.

男女雇用機会均等法第五条において,性別を限定した公募は禁止されているため,原則として女性限定公募はできない.しかし,第八条において,男女の均等な雇用機会確保等を目的とした女性労働者に関する措置は認められている.つまり,現状のあまりにも低い女性教員比率を改善することを目的として,女性優先または女性限定の公募を行うことは認められている.

若手研究者が大学で定職を得るのが難しくなっていると言われるが,特に男性にとっては厳しい状況かもしれない.

ちなみに,トップ画像は京都大学のデータ.

© 2021 Manabu KANO.

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