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添削された原稿を再提出するときの優劣

大学や大学院で身に付けておきたい力」にも書いたが,研究室に在籍する学生には,以下の能力を身に付けることを強く要求してる.

・必要な知識を自分で修得できる
・論理的に思考し,自分の考えを説明できる
・正しい日本語と英語で文章を書ける
・魅力的なプレゼンテーションができる

放置しておいて勝手に悟って成長する人間なんてほとんどいないので,私が学生のときにしてもらったように,私も学生が書いたレポートや論文原稿を徹底的に添削することにしている.社会人ドクターに対しても容赦はしない.私より年齢が上であっても.ごく普通の場合で,一回目の原稿は全く原形をとどめない.ただ,私が訂正してしまうと,学生が何も考えずに言われたとおりに文章を書き換えてしまい,添削の努力が無駄になりかねないため,何が問題かを指摘する短いコメントを付けて返却するのが普通だ.添削の最大の目的は,目の前にある原稿を良くすることではなく,学生が自分で原稿を推敲できるようになることである.

そうやって添削した原稿を学生に返却し,再提出を求める.そのときの対応に,はっきりと学生のレベルが現れる.

<悪い学生の場合>
学生: 先生,原稿を修正したので,再度チェックして下さい.
教員: (ザッと眺めて) は? 指摘した部分が修正されてないよ. (ふざけるな!)

<普通の学生の場合>
学生: 先生,原稿を修正したので,再度チェックして下さい.
教員: え〜っと,どこをどう修正したの? (添削するたびに全文を読めというのか,君は? これで提出4回目だろうが)

<良い学生の場合>
学生: 先生,原稿を修正したので,再度チェックして下さい.修正箇所はハイライトしてあります.質問への回答はコメントしてあります.
教員: はい,了解. (偉いじゃん!)

違いはわかるだろう.

ジャーナルに論文を投稿するときと同じだ.査読者のコメントに対して,論文原稿を修正すると同時に,修正内容とその理由を回答書にまとめる必要がある.そうしておけば,査読者の疑問や指摘に著者がどう回答したのかが一目瞭然となり,査読者は助かる.

学生にも同じことを求めたい.一度言われれば,できるようになるだろう.

© 2020 Manabu KANO.

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