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本の紹介・読書の記録

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#戦争

「同志少女よ、敵を撃て」の敵は誰なのか

タイトルそのままの内容だと思って読み始めたが,ソ連の少女狙撃手が敵国ドイツ兵を撃つという,そんな単純な話ではなかった.いや,確かにそういう話なのだけれども,セラフィマが自分自身の正義のために撃つべき敵は他にもいた.戦争時における個人の敵とは一体何なのか. ともかく,クズに戦争を起こせるような権限を与えてはいけない. 2022年に話題になり,第11回アガサ・クリスティー賞大賞や本屋大賞を受賞した「同志少女よ、敵を撃て」を,遅ればせながら読んだ.図書館で予約したのだが,予約数

ロシアの侵略戦争を見ながら「ルトワックの日本改造論」について考える

日本の隣国と言えば,中国,北朝鮮,ロシア,韓国などで,どう付き合って(対峙して)いくかが問われる.平和に暮らしていたら平和が続くなんてことはないことは,ロシアのウクナイラ侵攻でも明らかになった.戦争犯罪やジェノサイドという厳しい言葉で非難されているロシアだが,アメリカもNATOも直接的には何もしないし,国連軍も動かない. 本書「ルトワックの日本改造論」の冒頭でルトワックは, と書いている.日本という国家の未来を担うのは,今を生きている子供たちであり,これから生まれてくる子

「太平洋戦争の収支決算報告」で日本の愚かさと損害の大きさに驚く

最も危惧するのは,結局,日本は先の敗戦から何も学ぶことなく,同じ過ちを繰り返すのではないかということだ.本書を読むと,負けると判明している太平洋戦争に特攻する首脳部の愚かさはもちろん,原子爆弾を落とされるまでの無茶苦茶し放題,それによって,そして戦後に日本が被った損害の大きさに改めて衝撃を受ける.本当によく滅びずに,高度経済成長期を迎えられたものだ. 本書「太平洋戦争の収支決算報告」では,序章で「日本が戦争をした理由」を説明した後,以下の4項目にわけて,日本が敗戦で失ったも

「ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争」があまりに強烈だった

衝撃を受けた.民間のPR(Public Relations)会社が,メディア,議会,政府に働きかけ,国連加盟国を国連から排除するところまで仕掛ける.ありとあらゆる情報は意図を持って(誰かの利益になるように巧みに操作されて)流されていることを改めて実感させられた. 本書は,ソ連崩壊後,ユーゴスラビア連邦から共和国が相次いで独立する中,セルビア(≒ユーゴスラビア連邦)と対峙したボスニア・ヘルツェゴビナが,まったくの無関心だった欧米諸国を味方に付け,遂にはセルビアがならず者国家で