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本の紹介・読書の記録

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#経済

「日本人の勝算」を実現できるか?

人口減少は日本にとって大きな危機だろう.国際的に評価の高い労働人材が急激に減少するのだから,放置すれば国力は衰える.経済が縮小しても構わないという人もいるが,少子高齢化社会をどう維持しようというのか. 労働力不足を移民で補おうとするのは,ブラック企業的発想でしかない.生産性を高めて稼ぐ能力がないから,とにかく人件費を削りたいわけだ.経営者としては無能だろう.それでは,ただのコスト削減競争にしかならないし,経済成長は望めない.付け加えると,現代の奴隷制度である技能実習制度はす

ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版

本書の初版が発行されたのは1972年.著者の服部正也氏は,海軍大尉として終戦を迎え,復員後に日本銀行に入行し,1965年に国際通貨基金IMFの要請でルワンダ共和国の中央銀行総裁となった.アフリカの中でも貧困が酷く,世界から見放されていたルワンダにおいて,ルワンダ人のためにとの一心から経済再建計画を立案し,わずか5年で経済を軌道に乗せた.「中央銀行という重要な国の機関は当然その国の人が総裁とならなければならない」との想いから,ルワンダの多くの人々に惜しまれつつも1971年に帰国

「奇跡の経済教室」でデフレから脱却できない原因とその犯人を学ぶ

経済教室基礎知識編というタイトルだが,マクロ経済学やミクロ経済学について解説する普通の教科書ではない.著者が伝えようとしているのは,「なぜ日本はいつまでたってもデフレ不況から脱することができないのか?」という疑問への回答である.そして,デフレなのにインフレ対策に明け暮れる政府と主流派経済学者を無能だとぶった切る.実に痛快だ. 中野剛志,「目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】」,ベストセラーズ,2019 まず,平成以降20年にもわたって日本の経済が全く成長しな

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

天然麹菌による酒種パンを世に出した経験を踏まえて,発酵と腐敗そして自然と人間の関係という観点から利潤追求資本主義と決別した「腐る経済」の理念と実践を説いている.マルクスの資本論や共産党宣言それに親父ギャグも登場する.面白かった. 渡邉格,「田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」」,講談社,2017 (2013年に単行本,2017年に文庫本が出ている) 30歳近くになるまで定職についていなかった著者は,「ほんとうのこと」がしたいという心の声に従って,パン屋になることを決めた.ま