【怪異譚】かみきり虫
私が子供の頃、映画は通常の映画館での上映後、地元の集会所や公民館で上映会というものがあり、それで見たという人も少なくはないだろう。
現在でも、ときおり手作りのポスターを見たりするが、まだ需要はあるのだろうか。
人気の「ドラえもん」の映画(一番最初の、「のび太の恐竜」)や、角川映画の「セーラー服と機関銃」なども、そこで見た記憶がある。
それらの映画は、なぜか他の映画とセットで同時上映されることがあった。
それも、「東映まんがまつり」のように、もともと映画館で同時上映されているものでもなく、時には制作会社すらも越えての同時上映という時があった。
記憶の中では田原俊彦主演の「ウィーン物語 ジェミニ・YとS 」と抱き合わせで、マンガ「あさりちゃん」を見た覚えがある。
そんな、映画の中に「かみきり虫」という映画があった。
メインとなるであろう、もう一つの作品が何かは覚えていない。アニメだったような気がするのだが。
それは非常に短い映画であった。
部屋に大きい鏡があり、その前に白いワンピースを着た小学生くらいの少女が座っている。
髪は黒髪で、胸程までに長く伸びていた。
少女の表情は、鏡越しで見ることが出来る。
理容店の鏡に映った映像などを思い浮かべていただければよいだろう。
少女の表情は何かにおびえているようであった。
少女の背後に、真っ黒な影のような男が現れる。男の表情は、黒い仮面をつけているようで、実際にはどのような顔をしているのかが分からない。
ブティックなどにある黒いマネキンが一番近いだろうか。
男は、少女の長い髪の毛を、大きな銀色のはさみで、バッサリと切っていく。
少女は、恐怖で怯えているのか、そこから動くことすら出来ない。
少女の髪の毛がオカッパになり、さらにはベリーショートくらいになっていく。
少女の表情はまるで人形のようだ。
そして、次の瞬間。
男は、植木バサミよりも大きな巨大なハサミを持ち、少女の首を切った。
少女の首からは血が流れ落ち、ワンピースを赤く染める。
カメラのアングルがかわり、床下に落ちた少女の生首のアップとなる。
少女の顔は、先ほどの人形のような強張った顔とは異なり、なぜか、何か満足して、微笑んでいるようにも見えた。
そこで、突然に映画が終わった。
そして、メインの映画となったが、まったくその先のことは覚えていない。どうやって家に帰ったか。また、その時 一緒に映画を見たであろう同級生などと、鑑賞後に感想を語った覚えもない。
何となく、見てはいけないものを見たような気がして、ずっと誰にも言えずにいた。
もちろん、その後、何度も「かみきり虫」という映画のことを調べもしたのだが、手がかりすらも見つかることが無かった。
もしかしたら、上映者による自主制作映画だったのかもしれないが、それにしても悪趣味すぎる映画であった。
ただ少し、気になることがある。
当時あった行方不明の事件で、今も解決していない事件の少女の顔と、私の記憶にある「かみきり虫」の首を落とされた少女の顔が似ていたような気がするのだ。
古い話であり、私の記憶も曖昧であるから、何とも言えないのではあるが。
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