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書評「シリコンバレーから将棋を観る」記憶にずっと残り続けている本

こんにちは、サカモトです。

今回は将棋の話です。9月27日は、そう、これまで散々話してきた王座戦第3局の日です。1局目と2局目は見ているだけで消耗してしまうというかなりの激闘でしたが、ここまでの両者の戦いぶりを見ていると3局目も簡単に決着がつくようなことはなく、激闘となること間違いないでしょう。

どんな将棋となるでしょうか。そしてどんな結末を迎えるのでしょうか。楽しみです。


さて、世間では藤井竜王名人が八冠となるかだけに注目して、その他のことは置いてきぼりにするんだろうなということは容易に想像がつきます。僕は天邪鬼であるので、あえてそうした話題とは別の話をします。

今回は梅田望夫さんの「シリコンバレーから将棋を観る」という本を紹介したいと思います。配信環境がよくなかった時代になんとかしたいと奮闘した話です。

作者の梅田さんはシリコンバレーでIT業界で働いていたのですが、昔から将棋ファンで2009年ごろ突然、WEB観戦記という分野を確立しようと努力した方です。結論から言うとあまり上手くいったとは言えないのですが、その努力は称賛すべきものです。

当時の将棋界の配信状況について説明すると、今のようにAbemaTVやYouTubeでの配信はなく、タイトル戦の様子を見ることができたのは確か、NHKの衛星放送ぐらいしかなかった記憶があります。

それも全てのタイトル戦ではなく、竜王戦や名人戦などの主要なタイトル戦だけだったなと。

しかも、全ての時間ではなく、対局開始後の1時間、夕方の1時間、対局後の深夜の1時間と限られていたと思います。

対局の様子を知るには、月刊誌の将棋世界もしくは新聞の週刊将棋しかありませんでした。

当時はそんな状況なので、ほとんど動画中継はなく、棋譜中継だけされていました。つまり、指し手だけが分かるようになっていて、それに簡単な解説がつくというもので、リアルタイムというにはあまりにも程遠いものでした。

そこに登場したのが、梅田さんのWEB観戦記です。観戦記というのは、対局が終わった数日後から新聞に1週間ぐらい掲載されるものです。当然ながら、リアルタイムとはいえません。

その観戦記を文字通りリアルタイムで対局を観戦しながら対局の様子や指し手の解説などを書いて、それを観戦記としてWEBに記事として公開するという試みをしていました。

この取り組み自体は当時としてはものすごい画期的で、将棋界としては少し話題になりました。これからはリアルタイム観戦記の時代が来るよ、リアルタイムで対局の様子が分かるよと期待し、興奮したことを覚えています。

今から考えると、笑ってしまいますが、当時としては斬新でした。当時の記事はまだアーカイブが残っていて、例えば、下のリンクのような感じです。


しかしながら、こうした芸当をできるのは梅田さんだけで、後に続く人はいなかったこと、また、このリアルタイム観戦記をするには相当な準備を要したらしく、毎局できるわけではなかったのです。

そうこうしているうちに2010年台の初めの方からニコ生で中継が始まり、そのうちにAbemaTVで中継が始まり、Youtubeのライブ配信というのが現在です。

今となっては、一瞬の出来事となったわけですが、これからの新しい時代の幕開けみたいな期待を持たせてくれたということは、記憶に残り続けています。

この本はその時のリアルタイム観戦記やその後日談、またどのように準備をしたかなどが書かれています。たまに、読み返したりするのですが、新しい時代を切り開こうと努力する姿が胸を打つんですよね。

あと、梅田さん文章が柔らかくてうまいので、読物としても面白いんです。おすすめします。

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