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開催後に判断されるラグビーW杯の成否

 ラグビーW杯が盛り上がった背景には、ラグビー強豪国の訪日客一人当たり旅行支出の効果も大きかったようです。事実、観光庁によれば、昨年の訪日客一人当たり旅行消費額は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドを含む英国が約22万円、オーストラリアが約24万円と、平均の約15万円を大きく上回っていることがわかります。

 実際に新聞報道によれば、東京都内にある某キャンピングカーレンタルセンターでは、ニュージーランドなどのラグビー強豪国からの問い合わせが殺到したようです。そして、料金は通常期の2~3倍に設定したにもかかわらず、1週間から一ヶ月の長期利用が人気となり、外国人の予約は通常期の2倍以上に増え、大会期間中は全体の4割を占めたという事例があります。

 しかし、最も注意しなければならないのは、開催後の開催都市経済の反動減でしょう。2次利用できない施設は、負の遺産となる可能性もあります。消費増税に伴う需要の先食いと実需の減少にも相まって、開催後の開催都市の経済には反動減が生じることが予測され、その対策が求められます。
また、インフラ整備の名を借りて、無駄なものを作りすぎ手しまっている場合には、財政の健全化にマイナスに働くことも考えられることには注意が必要でしょう。

 こうしたことから、興行的に成功で終わるかどうかは、国際的な注目が集まったことで、大会後にも世界各国からの旅行者や企業を呼び込むきっかけになったかどうかで判断すべきでしょう。

 政府は2020年に4000万人の誘致を目指しています。このため、今回のラグビーワールドカップ開催により、開催都市を中心に外国人が訪問しやすい環境が進捗したことが期待されます。

 こうした課題の進捗は、実は外国企業の誘致にもつながる可能性があります。日本に進出希望の企業にアンケート調査を行うと、ビジネス環境に求める改善点と観光客の不満点は共通しています。このため、「世界で最もビジネスをしやすい国をつくる」ことは、アベノミクスの目標の一つでありますから、ラグビーワールドカップ開催を契機にどれだけビジネス環境が整うかが成否を左右するでしょう。

 来年に東京五輪開催を控え、食や農産物等にもビジネスチャンスがありますから、各地域は情報発信の仕組みづくりに更なる重点を置くべきでしょう。ラグビーワールドカップ開催後も反動減の少ない分野を狙い、今から市場開拓を進める取り組みも期待したいものです。

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