永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。あしぎん総合研究所客員研究員、跡見学園女子大学マネジメント学部非常勤講師を兼務。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会常務理事。専門は経済統計、マクロ経済分析。

永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。あしぎん総合研究所客員研究員、跡見学園女子大学マネジメント学部非常勤講師を兼務。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会常務理事。専門は経済統計、マクロ経済分析。

マガジン

  • 日経COMEMO

    • 13,653本

    日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービスです。 【noteで投稿されている方へ】 #COMEMOがついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回し、COMEMOマガジンや日経電子版でご紹介させていただきます。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 https://bit.ly/2EbuxaF

最近の記事

今こそ経済安全保障への対応が必要な理由

「トランプ2.0」日本や欧州どう向き合う 識者に聞く 白石隆氏/キショール・マブバニ氏/ケストゥーティス・ブドリース氏 - 日本経済新聞 バブル崩壊以降の日本経済は、マクロ安定化政策を誤ったことでデフレが長期間放置されてしまいました。そして、設備への成長投資が十分になされなかったこともあり、経済成長が長期停滞を続ける「失われた30年」という状況が続いています。 設備や人への投資を促して経済の長期停滞から抜け出すためには、経済全体や企業それぞれの成長期待が高まることが必要で

    • 実質賃金低迷の主因は低労働生産性の誤解

      小売りや外食、賃上げ前倒し ビックカメラは12月から - 日本経済新聞 日本の実質賃金の上昇が海外に比べて大幅に遅れています。 そこで、日・米・ユーロ圏の一人当たり実質賃金の変動率を労働分配率、労働生産性、交易条件、労働時間に分解すると、一般的に実質賃金低迷の主因と言われている労働生産性は米国ほどではないものの、ユーロ圏よりは高くなっています。 対して、労働分配率の要因については、米国と日本が同程度の押し下げ要因になっている一方で、ユーロ圏については押し上げ要因となって

      • 基礎控除引上げの財源を考える

        自民党・公明党・国民民主党、「手取り増」妥結探る 公約通りなら7.6兆円減税 - 日本経済新聞 近年の財政指標は改善が続いています。背景には、円安に伴う法人税収増や物価高に伴う消費税収増、ブラケットクリープ現象に伴う所得税収増などがあり、国民民主党も自党が主張する「年収の壁」の103万円から178万円への引き上げの財源は税収の上振れで賄えるとしています。 そもそも財政の健全性を判断する国際標準的な指標は「政府債務残高/GDP」比であり、あくまで日本の財政目標となっているプ

        • 石破政権に求められる経済政策

          石破政権、産業競争力復活へ 新ドラギバズーカと連携を 風見鶏 - 日本経済新聞 (nikkei.com) 以上の記事を踏まえて、以下ではこれからの日本経済や石破政権の政策運営に期待したいことについて述べてみたいと思います。 33年ぶりの高水準となる春闘賃上げ率や32年ぶりの国内設備投資額という潮目の変化が起きている中で、賃上げと経済活性化を伴う良いインフレを定着させるためには、国内の供給力を強化し、日本経済を成長軌道に乗せていくことが不可欠でしょう。 そのため、最も手っ

        マガジン

        • 日経COMEMO
          13,653本

        記事

          9月日銀短観から見た24年度業績見通し

          純利益上振れ予想、郵船など海運上位 自動車は弱気 投資情報ランキング② - 日本経済新聞 (nikkei.com) ●増収減益計画は変わらず 10月1~2日にかけて公表された9月日銀短観の大企業調査は、8月下旬~9月下旬にかけて資本金10億円以上の大企業約1700社に対して行った調査であり、先月公表された法人企業景気予測調査に続いて、今期業績予想の先行指標として注目される。 そこで本稿では、同調査を用いて10月下旬から本格化する四半期決算発表で、今年度業績計画の上方修正

          9月日銀短観から見た24年度業績見通し

          安い日本で「外国人が働きに来ない」の誤解

          日本は「選ばれる国」でいられるか アジアで見た現実 連載「外国人材の故郷から」まとめ読み - 日本経済新聞 (nikkei.com) 昨年6月末時点の日本に在留する外国人の数は322万人と過去最高を更新しました。総人口に占める割合は2.6%程度と着実に増加しています。少子高齢化が一層深刻になる中、外国人労働者は欠かせない存在になっています。そして、政府は技能実習の抜本改善や特定技能の拡大等、外国人材のさらなる積極的な受け入れへと舵を切りつつあります。  在留資格別では、永

          安い日本で「外国人が働きに来ない」の誤解

          景気予測調査から見た四半期決算見通し

          大企業景況感7〜9月、2期連続改善 価格転嫁進む - 日本経済新聞 (nikkei.com) ●経常利益は計画上方修正 9月12日に公表された2024年7-9月期法人企業景気予測調査は、今年8月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。 そこで本稿では、今年10月下旬からの四半期決算発表で、今年度の企業業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。 下図は、法人企業

          景気予測調査から見た四半期決算見通し

          「老後資金4000万円必要」に対する誤解

          人生100年の3大リスク、役職定年・介護・円資産 人生100年こわくない・マネー賢者を目指そう(熊野英生) - 日本経済新聞 (nikkei.com) 老後資金が4000万円必要になるという報道が話題を呼んでいます。これは、2019年に話題になった「老後資金2000万円必要」を基に、消費者物価上昇率+3.5%が今後も続いたらどうなるのかをシミュレーションし、10年後には2821万円、20年後には約4000万円になるというものです。しかし、この試算の前提となっている生活水準は

          「老後資金4000万円必要」に対する誤解

          賃金と物価の好循環の幻想

          日銀植田和男総裁「景気にブレーキかけず」 経済の底堅さに自信 - 日本経済新聞 (nikkei.com)  2024年の春闘賃上げ率が33年ぶりの水準となったことで、早ければ今秋にも実質賃金がプラスに転じることが期待されており、6月給与分から開始される定額減税とも相まって、個人消費の拡大を期待する向きもあります。  しかし、実質家計支出の実質雇用者報酬に対する弾力性は2015年ピークの5割強にまで低下しており、マクロで見た実質賃金となる実質雇用者報酬が増加に転じたとしても

          各業界の業績を左右する猛暑

          東京5日は猛暑日予想 ダブル高気圧で今夏も記録的高温 - 日本経済新聞 (nikkei.com) ●猛暑・厳冬をもたらすラニーニャ 世界的に異常気象を招く恐れのあるラニーニャ現象が発生しています。 ラニーニャ現象とは、南米沖から日付変更線付近にかけての太平洋赤道海域で、海面水温が平年よ り1~5度低くなる状況が1年から1年半続く現象です。 ラニーニャ現象が発生すると、地球全体 の大気の流れが変わり、世界的に異常気象になる傾向があります。 気象庁の過去の事例からの分析では、

          インフレで深刻化する生活格差

          電気料金やガス料金の補助、内閣支持率上昇につながらず 「有効でない」7割 日経世論調査 - 日本経済新聞 (nikkei.com) ロシアのウクライナ侵攻以降の日本経済は、中産階級の貧困化とインフレが重なった「スクリューフレーション」が深刻化しています。背景には、食料やエネルギーといった生活必需品の価格が急上昇していることがあります。 生活必需品は低所得であるほど消費支出に占める比重が高く、高所得であるほど比重が低くなります。このため、生活必需品の価格が上昇すると、低所得

          インフレで大幅改善する日本の財政

          渋沢栄一になるためには 岸田文雄首相の忘れもの 風見鶏 - 日本経済新聞 (nikkei.com) 急激な人口減などで必要な予算はこれからどんどん増えるため、財政に余裕はないとする向きがあります。 しかし、2023年10-12月期時点の政府債務残高/GDPを見ると、コロナショック前の水準まで低下していることがわかります。そして低下した要因を分解すると、「経済成長率」と「インフレ率」要因の押し下げ幅が、「財政収支要」因の押し上げ幅を大きく上回っており、また経済成長率とインフ

          円安で貿易赤字拡大の誤解

          円安生む経済構造、反転に時間 企業にドル買いの実需 - 日本経済新聞 (nikkei.com) 貿易収支の赤字が続いている。財務省の貿易統計によれば、23年度の貿易収支は3年連続の赤字となった。そして、円安で輸入金額が膨張することを理由に、貿易赤字の主因を円安に求める向きも少なくない。 ただ、輸入金額の増加が輸入品そのものの値上がりや輸入量の増加に基づくものであれば、為替に関係なく貿易収支は赤字方向に振れやすくなる。また、円安は一方で輸出額の膨張にもつながるため、円安が必

          金利上昇で財政悪化の誤解

          3月税収5.7%増の3.6兆円 所得税や消費税がけん引 - 日本経済新聞 (nikkei.com) 長期金利上昇で利払い費が増えることを理由に、財政悪化を懸念する向きがあります。ただ、長期金利の上昇がインフレ率の上昇や名目経済成長率の上昇に基づくものであれば、一方で税収も増えるため、必ずしも長期金利の上昇が財政悪化に直結するとは限りません。 事実、日本の代表的な財政指標であるプライマリーバランス/GDP比(以下、PB/GDP)と長期金利の関係を見ると、むしろ長期金利が上が

          産業競争力強化法で税制優遇

          岸田文雄首相の基調演説要旨 OECD閣僚理事会 - 日本経済新聞 (nikkei.com) 日本でも産業政策の国際競争に勝ち抜くべく「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」の審議が進んでいることは注目に値します。 法律の概要としては、「戦略的国内投資の拡大に向けた戦略分野への投資や生産に対する大規模で長期の税制措置や研究開発拠点としての立地競争力を強化する税制措置」と「国内投資拡大につながるイノベーションや新陳代謝の促進

          日銀の政策修正が日本経済に及ぼす影響

          植田和男日銀総裁「基調的な物価上昇率、徐々に高まる」 - 日本経済新聞 (nikkei.com) 日銀が「マイナス金利政策」の解除に踏み切ったことにより、経済活動の源泉である設備投資を筆頭に、為替レートや輸出入、個人消費といった経済活動に及ぼす影響が注目されます。 そこで、内閣府「短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)」を基に影響を試算すると、短期金利を外生的に+0.1%引き上げた場合、実質 GDP 抑制効果は引上げ年においては概ね▲0.03%程度にとどりますが、2

          日銀の政策修正が日本経済に及ぼす影響