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Less is more cleanable(減らしたほうが掃除が楽)

Less is moreとは、ル・コルビュジエやフランク・ロイド・ライトと並んで近代建築の巨匠と称されるミース・ファン・デル・ローエの言葉です。
ドイツと言えばバウハウスが有名ですが、ミースは、そのバウハウスの校長も務め、その後アメリカに渡りシカゴで活躍しました。


Less is more cleanable(減らしたほうが掃除が楽)

Less is more(減らしたほうが豊か)かどうかはその人に因りますので、ミニマリストになれと言うつもりはありません。しかし、Less is more cleanable(減らしたほうが掃除が楽)なのでこれはオススメしたいところで声を特大にして言いたいと思います。
いろいろと細かいところまで言えばキリがないのですが、ここでは3つのポイントから、家の中にコレが無ければ掃除で楽ができる、を一緒に考えてみたいと思います。

その1 出てるものを減らす「こんなものまで?」収納

部屋を散らかさないためには、掃除を楽にするには、ちゃんと収納することが大事です。そのへんに出しっぱなし置きっぱなしになっていたり、収納先が決まっていなくていつもどこかにウロウロしていたり、積んでおくのが定番の所定の位置になっていたりしたら、掃除が大変ですよね。ですから、HMも工務店も、収納にはこだわります。シューズクローク、ウォークインクローゼット、パントリー、ストックヤードなどなど。いまはクローゼットは作りつけでタンスを置いたりしませんし、下駄箱を置くというよりも壁に扉がついていて靴やその他の収納になっているというような、収納スペースがその目的に特化してデザインされている、という形です。
しかしながら、そのような執念の(?)収納術を盛り込んだ現代の設計の家にお邪魔したり、またはネット上でよく見るウェブ内覧会(それも住んでから1年以上経っているようなものがいいですね)を見てみたりすると、意外とモノが置いてあるなあと思いませんか?
なぜそうなってしまうのでしょうか。
それは収納に対する、なんとなく、先入観の、あるいは習慣の、あるいは一般的にはという謎の価値観があり、収納がうまくいってないからなのです。

こんな収納術あったの?4選

①キッチンの壁面収納に冷蔵庫
はい、そんなものを収納する?の代表格が冷蔵庫です。冷蔵庫を壁面の収納の中にしまってしまいます。ドラマ「きのう何食べた?」の劇中、小日向さん(演:山本耕史さん)のマンションで料理をするシーンが度々出てきます。キッチンはアイランド型だったでしょうか、その背面には壁一面が折れ戸の収納になっており、その収納の中に冷蔵庫が鎮座しています。もちろんその収納はカップボードやパントリーの役目もあり、つまり、キッチンメーカーのシステム収納をそっくり壁一面にしてしまうようなイメージです。

参考:lixilリシェルSIキッチン収納 https://www.lixil.co.jp/lineup/kitchen/richelle/parts/parts12.htm

上のような収納ですと、キッチンのどのあたりかにスペースを残しておいて、冷蔵庫を置くということになります。冷蔵庫は買い替えるかもしれませんから、ジャストサイズにするわけにはいかず隙間ができたりしますが、その隙間に隙間収納家具を置いたり、冷蔵庫の上にものを置いたり。
そこで壁面を一面の収納にしてしまい、冷蔵庫もその中に入れてしまいます。イメージとしては下の写真の、手前側にアイランドかペニンシュラ型のキッチンを置く感じです。

参考:イエナカ手帖 https://ienakanote.com/member/390/record/16958/

この中には造作で棚をつくってもいいですし、DIYが好きな方は自分で工夫されてもいいでしょう。この収納を大きく取ることで、最近設置される方が増えているパントリースペースも、無くすことができるかもしれません。
壁一面が大きな扉が数枚という構成になっているため、外観はスッキリしますし、中は区切られておらずレイアウトも自由ですので、使い勝手が良いです。折れ戸よりも引き戸のほうが使い勝手が良いですが、4枚引き戸だと全開でも半分の開口面積にかならない、3枚だと全開で3分の2のサイズが開口しますが閉めたときに奥中手前の扉になり対称にならないという外観の難点があります。折れ戸はおしゃれで開口も一番広くなりますが、引き戸より開けにくいのと、手前に張り出すという問題があります。
しかし、壁一面の収納にした場合に、こまごました扉がたくさんありデザイン性に欠けるキッチンメーカーの収納よりも外観は非常に良いものになり、また大きなスペースを自由に利用できるので使い勝手も向上します。

②リビング横ウォークインクローゼットにごちゃごちゃを全部
ウォークインクローゼットというと寝室の横につくるというイメージがあるかと思いますが、これをリビングの横に作ります。リビングは家の中で一番モノがあふれる場所。ですからリビング横になんでも入れておけるウォークインクローゼットを作り、モノはぜんぶそちらに仕舞うということにすればいいのです。
読みかけの雑誌、携帯ゲーム機、ひざ掛けやごろ寝用のクッション、お買い物用のバッグや日除けの帽子、各種リモコンも置きっぱなしになっていませんか? 扇風機や加湿器、その季節にはいつも出しっぱなしですがその季節でも毎日24時間使っているわけではありません。使わないタイミングでは仕舞いたいものですが、普通、リビングルーム内にそういったものを仕舞っておくスペースはありませんね。だからこそ出しっぱなしになるわけですが。ウォークインクローゼットなら仕舞えます。
もちろん、雑誌はウォークインクローゼットに置いておき、読むときに持ってきて読み終えたら戻すということになります(ほかのものもそう)。なかなか面倒なように思えますが、慣れればたいしたことはありませんよ。

③ゴミ箱はゴミ箱入れに
そんな馬鹿なという話に聞こえますが、ゴミ箱はちゃんとゴミ箱入れに入れておきましょう。
なんて、ずいぶん変な話に聞こえるかもしれません。しかしながら、そうおかしい話ではないのです。ゴミ箱というのは、必要なときがそれほど多くないのに、いつも部屋に、しかも足元の蹴っ飛ばしやすそうな、それでいて目立つ位置に陣取っているんです。ですからゴミ箱はゴミ箱入れに。といってもゴミ箱を別の小さな箱に入れるわけではなく、ゴミ箱も収納の中にしまっておきましょうという話です。
リビングの横にウォークインクローゼットを作ったなら、ゴミ箱はそちらに。キッチン壁面に収納を作ったらゴミ箱はそちらに。洗面にゴミ箱を置くなら床ではなく使うときに洗面台の上に置いて、濡れているならしっかり口を縛ってすぐに捨て、またゴミ箱は収納の中に。子供部屋のゴミ箱はいつもクローゼットに仕舞っておいても大丈夫、そう濡れいているものはありません、ときどき中身を捨てるようにしましょう。
ゴミ箱を床の上に置きっぱなしにしないことで部屋の見た目も大変スッキリしますし、後々、掃除がすごく楽になります。

④浮かせる収納の上を行く「持ち運ぶ収納」
最近よく見る、浮かせる収納。掃除が楽になるという謳い文句で様々なものを浮かせておく便利グッズが販売されています。しかし、浮かせておくというのはつまり空間に放置しておくということ。それは問題を先送りにしているに過ぎません。ちゃんと収納しましょう。
といっても、やりかたはすごく簡単です。浮かせる収納というのはつまり、下に置いておくより浮かせたほうが掃除しやすかったり清潔だったりするものを浮かせておきます、という便利ツールです。それをもう一歩進めて、浮かせる収納に適したものはちゃんとしまうべきところにしまう、と考えるわけです。

検索でヒットしたこちらのウェブサイトから検証していきましょう。
なおライターさんは整理収納アドバイザー1級ホルダーだそうです。そんな資格があったんですね勉強になりました。

では一つ目。
「体を洗うブラシは家族一人ひとりに必要ですし、シャンプーや石鹸なども、それぞれ違うものを使う、という場合もあります。
その場合の収納は、付属のバーではたりないことがあります。
マグネットがつけばマグネットバーをつけたり、吸盤タイプのバーもありますが、ゆとりを持って多くのものを引っかけたい場合は、突っ張り棒1本ですっきりします」
つっぱり棒に掛けるものは下に置いて使うものを上に持ち上げて掛けるわけですね。もう少しがんばってカゴに入れて(入れなくてもいいですが)拭いてお風呂の外に持ち出しましょう。
”シャンプーやブラシなどはお風呂場の床にに置きっぱなしにしない”

”シャンプーやブラシなどはお風呂場に置きっぱなしにしない”
にしましょう。

ふたつ目。
「おおむね、洗濯機はマグネットがつきます。洗濯機まわりは生活感が出るところですが、活用しない手はありません。わが家ではお風呂掃除グッズを洗濯機横にかけています。洗い終わった雫の垂れるスポンジも、防水パンで受け止めてくれるので適しています」
同じです。掃除用具は掃除用具を仕舞う場所に仕舞いましょう。

みっつ目。
「水の飛び散る洗面台でも、引っかけておけばペーパーも大丈夫です。
コロナ対策でペーパータオルを利用されるかたも多いと思います。手を拭くことはもちろん、床をささっと掃除するにも破れにくく便利です」
出しっぱなしにしない、という点では置いておくより吊るしたほうがいいような気がしますが、そうでしょうか。吊るすというのは仕舞うのが面倒になり出しっぱなしになります(というよりも出しっぱなしにしておく前提ですね)。置いてあるペーパータオルは手軽に仕舞うことができます。使う時に出す、使ったら仕舞う。置いておくほうが、仕舞いやすいです。100均でもニトリでも売ってるようなペーパータオルのプラのカバー(箱)に入れておけば、ちょっと水ハネしてもささっと拭いて仕舞えますし、見た目にも良いですね。

引用先のウェブ記事を否定するものではありません。記事のようにされている方でうまく運用されているという場合も多いと思います。
置きっぱなしになっているものを浮かせることで、掃除が楽になったり清潔だったりということはありましょうから、引用先のような方法が合ってるところもあると思います。
しかし、このnoteの記事で言いたいのは「手段が目的になっていませんか」ということです。浮かせる収納というものの本質的な目的が、掃除がラクだったり清潔だったりということであれば、目的のために「浮かせる」のではなく「仕舞う」ということに目を向けてみてはいかが、ということです。

その2 「こんな小さい段差も?」と思わずに段差を無くそう

ルンバに代表されるロボット掃除機のため、床の段差を無くすというのは今や常識と言えるでしょう。しかし、床以外に目を向けてみれば、家の中には段差がたくさんあるものです。そして床以外は人間が掃除をしなければいけないので、埃を払うにしても水拭き乾拭きするにも、できれば段差が少ないほうがいいですね。

床以外で段差が多いところ、例えばキッチンです。ペニンシュラ型のキッチンを採用して悩むのが、目隠しをつけるかどうか、ではないでしょうか。目隠しはリビングから見れば手元が隠せる、キッチンから見れば小物の収納や油ハネ水ハネを防ぐ機能性もある、とメリットも多いですね。
お風呂に目を向けると、シャンプー置きや鏡、シャワーフックなど利便性を上げるアイテムは段差を作ります。脱衣所には洗濯機が置いてあったりしますが、洗濯機そのものは仕方ありませんが掃除がしやすくなるように段差は減らしたいものです。洗濯パンも、掃除がしやすいものにするか、あるいは最近では洗濯パンを無しにして、洗濯機もキャスター付きの台に乗せてしまえば、フラットになりますね。
洗面所にはメーカー製の洗面台がありますが、これまた段差が多いものです。特に吊戸棚になっていない場合、よくあるのが鏡の扉になっている収納が前面についている棚が建ちあがっているけど、それが天井まで達していない場合ですが、大きな段差が天井付近にあるということになります。高いところに埃が溜まる場所をわざわざ作ることになります。
壁にニッチ、コーブ照明などの間接照明、一段高くした畳スペース、廊下突き当りの作り付けの家事スペース、どれもこれも、掃除しにくい段差をつくるモトになります。

埃は段差によく溜まります。汚れても拭けばきれいになりますが段差は拭きにくいです。ロボット掃除機が掃除しやすいように床をフラットにしよう、という気持ちのまま、床以外も設計してみましょう。段差が無ければ、掃除がすごくラクになりますよ。

その3 用途が同じものは、減らせる

家の中に、同じような用途のものが何個もあったりしますね?
もちろんいくつも必要なものは、必要なだけ数を揃えなければいけません。例えばトイレは家族が何人でも一つ、とはいきませんし、10枚の窓の代わりに10枚分のサイズの大きな窓を1枚、にもできません。
この章で言いたいのは、必要なものを削るのではなく、不必要なものを統合すると、家の中のモノが減り、掃除がラクになりますよ、ということです。

テーブル、デスク

ダイニングテーブルを食事だけに使うのはもったいない、コーヒーを飲む時も雑誌を読む時もダイニングテーブルにして(コーヒーテーブルが無くなりました)、アイロンがけもできるくらいサイズがあればリビングでできるし家計簿だってつけてもいいんだし(家事用多目的デスクが減りました)子供の勉強だって見てあげられるし(勉強机が減りました)ノートパソコンを広げたらお父さんの作業スペースも確保できて(書斎の机が)、とこんなにいっぺんに用途を集めたらテーブルが広大になってしまいますが、いくつかの用途はまとめられそうです。当然、机やテーブルには脚が4本と大きな天板が1枚、椅子にも脚が4本と座面がありますから、少し減らしただけでも掃除がラクになること間違いありませんね。

水回り(ボウル)

おうちに帰ってきて、まずは手洗い。コロナになってから習慣にされた方も多いのでは? そこで玄関入ってすぐのところに手洗い(文字通り手を洗う水栓とボウルです)を設置する家が増えているようです。

参考:タカラスタンダード https://www.takara-standard.co.jp/product/dressing_table/compact/

家族が同時に使いたいときのためにボウルが二つ並んだ洗面台、メーカーも力を入れて販売していますね。

参考:パナソニック https://sumai.panasonic.jp/dressing/needs/index.html

漬け置き洗いや大物洗いのために洗濯用シンクを備えるお家もあるそうです。

参考:スーモ https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/setsubi/sb_knowhow/slopsink/

いくつもボウルがあれば、便利ですね。それぞれの目的に応じて使い分けする、機能的であると思います。
でも、掃除が大変じゃないですか? 水回りの掃除に頭を悩ませる人は多いようで、「シンク」と検索するとサジェストに「面倒」などのワードが並びます。どのお宅にも必ずシンクがあります。言わずもがなシンクを綺麗に保つのは、けっこう大変ですよね。水栓もピカピカにしておくのは、なかなか面倒です。それを考えると、家の中に手洗いボウル、洗面ダブルボウル、洗濯用ボウル、それぞれに水栓となれば、掃除の手間が膨大になりそうです。
では、それらを統合してはいかがでしょうか。
横に長い大きなボウルをひとつ置いて、水栓をふたつ付けます。学校の流しのようなイメージです。

参考:アイオ産業 http://www.aio.co.jp/example/%E7%89%B9%E6%B3%A8%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%AC%E3%82%B9%E6%B5%81%E3%81%97%E5%8F%B0%E3%82%92%E7%A5%9E%E5%A5%88%E5%B7%9D%E7%9C%8C%E3%81%AE%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E3%81%B8%E7%B4%8D%E5%85%A5/

この例は本当に学校に納入したものだそうで、味も素っ気も無い機能一点張りなものですが、ステンでボウルを特注して、台は造作にすれば一般の住宅にも納まります。
大きいボウルを生活の動線上に置くことでそのフロア(多くは一階でしょう)で水を使いたいときにアクセスしやすく、またボウルは一個なので掃除が省力化できます。
近年流行になっているTOTOの実験用シンク、病院用シンクというのもサイズが大きいので、水栓をふたつ付ければダブルボウル代わりになります。大人が二人並んで使うにはちょっと狭いですが1.5人くらいの感覚なら十分に使用可能です。深型なので漬け置き洗いなどにも使えます。

参考:みゆう設計室 https://miyudesign.com/works/4140

大は小を兼ねるというよりも大は小を吸収するというイメージで

記事が長くなりまして、ここまで読んでいただいた皆さんはガマン強いなあ忍耐強いなあと思います。こんなに粘り強い性格であれば、きっと掃除もちゃんとできる人なのだろうなあと思いますので、この記事がどのくらい役に立つのか疑問になるわけですが、とは言え、まとめの章を書いて終わりにしたいと思います。

今回、提案したのは「こうしたほうが絶対にいいポイント」ではなく、「家の中からコレを無くすと掃除がラクになるよというのを一緒に考えるポイント」です(冒頭にも書きました)。
用途を分けて小さいパーツを多くするより、似た用途のものは大きなものに統合するといいよ、という例を挙げたことで、ほかにも似たような発想で減らせるものがあるのではないでしょうか、ということを考えていただければという啓発のような記事です。
ですから、例は少ない(の割に長文)ですが、このような例を参考に、家の設計時に、いかに掃除をラクにできるポイントが潜んでいるかを発見していただきたいと思うのです。
モノが無くデコボコが無いところは掃除がしやすい、これは真理だと思います。ですので、できるだけモノを片付けやすい(出しっぱなしにならない)家にして、さらに片づけるモノさえ数を減らせばもっと片付けやすく掃除しやすくなるんです、というお話しです。
どうぞ、今後の注文住宅の設計にお役立てください。

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