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中古住宅、建売住宅、売建住宅、HM注文住宅、工務店注文住宅

家を建てよう、買おうと思ったときに、市場(世の中)にはいろんな形態で売られている土地があるんだなあと思います。そこに建てる、あるいは建っている住宅も様々です。


家の自由度は住まう人の自由度です

どのくらい家を自由に建てるか、建てられるか、ということがそこにずーっと住まう人の自由度に大きく影響します。間取りに合わせて生活するか、生活に合わせて間取りを決めるか、ということになればそれは後者のほうが生活が自由ですよね。
市場(世の中)にはたくさんの売り地、売り物件があります。それらを大きく分類すると、このようになります。
・中古住宅(建物付き土地)
・建売住宅
・建築条件付き土地(売建住宅とも)
・建築条件無し土地+ハウスメーカー注文住宅
・建築条件無し土地+工務店注文住宅
これは、建築の自由度が上から下へ行くほど高くなるように並べてあります。
どれがいいかと言いますと、いろいろ(予算や工期やいろいろです)無視すれば建築条件の無い土地に工務店で注文住宅を建てるのが一番良いです。品質に対するコストも圧倒的に安くなります。
では、それぞれについて、メリット、デメリットを説明します。

中古住宅付き土地

中古住宅の建物そのものの価格は、築10年でもう半値です。20年経てばほぼ価値がありません。資産としての価値はあっという間になくなってしまいます。
しかし、中古住宅を選ぶべきではない理由は資産価値以外のところにあります。ひとつは、間取りがすでに決定されてしまっていることです。住むに当たって、すでに出来上がっている間取りに合わせて生活をしなければなりません。工夫次第で上手に住める場合もあるかもしれませんし、うまくフィットする生活だったという場合もあるかもしれませんが、それは稀なケースでしょう。プチストレスを抱えながら、あるいは致命的な生活のしにくさを感じながら長く住むのは、考えものです。次に、家の寿命です。それなりの立地であれば、中古住宅でもローンを組むことになると思います。ここで大事なのは、家はメンテナンスをしなければならないということです。当然新築よりも中古のほうがメンテの時期が早く、また頻繁に到来します。屋根だ壁だ水回りだと、ローンを払いながら余計な出費が思ったよりも早く出ていってしまうということになる可能性が高いです。さらに家の余命も短いわけですから、ローンが終わるか終わらないかの時期に建て替えか大規模リフォーム、もしかしたら住み替えを考えなければならなくなることも。家の余命を見誤ると、人生設計を見直すことになりかねませんよ。そして三つ目に、これが最も重要かもしれませんが、家の基本性能が低いということです。今や高気密高断熱が当たり前です。冬に寒く夏に暑い家など、光熱費が無駄という以前に住みにくくてしょうがないです。冬に窓に結露が出るとか、盛夏の時期には二階がすごく暑いとか、そのような家はひと昔前の性能なんですが、中古住宅は今建ったわけではないので、そういう昔の標準的な性能かもしれません。どの程度断熱してあるか、どの程度気密性があるか、性能のわからない中古住宅に手を出すべきではありません。
と、悪いことばかり書きましたが、中古住宅を狙うメリットも無くはないです。ひとつは、近い将来に建て替えを計画している場合です。特殊なケースですが、転勤でこの土地に引っ越してこなければいけないけれども子供がすぐに独立するからその後に小さな平屋で夫婦二人で住むのだ、というような場合なら、ピッタリですね。あるいは、若くて資金がそう多くないので、ボロ家の付いた土地を求めておいて結婚をしたら家を新築しよう、などというのもいいでしょう。いずれにしても、中古住宅の付いた土地をお得に買おうと思ったら、長期計画の中で家を建て替えることを前提に考えなければなりません。それができるような状況であれば、メリットがあると思います。

建売住宅

中古住宅の、家が新築なパターンと思えばいいでしょう。
デメリットとしては、間取りがすでに決定されているということです。生活を間取りに合わせなければいけないというストレスがあります。これはわかりやすくデメリットですが、もうひとつ、隠れたデメリットがあります。それは性能の低さです。建売住宅というのは、基本的には同じ土地に注文住宅を建てるよりも安く販売されています。一見オトクなように思えますが、家を建てるコストはそんなに削れるものではないのです(ローコスト住宅ではよく、大量仕入れで部材や設備を安く仕入れてますと言っていますが、建築の費用に対する部材や設備の費用は3割程度です。安く仕入れる、という安くが1割だとしたら、建築全体のコストのうち3%しか下がりません。1000万円のうち30万円ということです。以外と少ないと思いませんか?)。建売住宅の安くというのは、通常、性能を落として安くしています。建売住宅のシステムキッチンを見て、メーカーの一番下のグレードのものが付いていてびっくりすることがあります。どのメーカーのものでも、一番下のグレードはいけません。見た目や機能ではなく、キッチンそのものが長持ちしないからです。メーカーだって、一番下のグレードは撒き餌だと思って売っています。中級グレード以上のものを選んでもらうために、まず安いもので興味を持ってもらうために設定しています。タカラもクリナップも、廉価グレードは木製です。ショールームに行ったら絶対にオススメされないです。タカラならホーロー、クリナップならステンレスを薦められます。しかし建売では廉価グレードのキッチンが付いていることがしばしばですが、もちろんすでに建っているものなので変更は利きません。設備もそうですが、気密や断熱の性能など、基本性能が低いことが多いです。建てる段階で施主がいないわけですから、気密や断熱をどうこうしろと言われるわけでもありませんし、工事の品質も施主が見るわけでもありませんし。
そして建売住宅と中古住宅の違うところは、建物の寿命が長いということです。これはメリットでもありデメリットでもあります。寿命が長いため、あらかじめ付いている設備や建物の仕様などが長持ちしてしまうので、ちょっとしたプチストレスですが長く付き合っていかなければなりません。少しつかいにくいキッチンを35年も使うと考えてください。結露する窓と35年付き合うと。夏場に使えない二階の南向きの部屋があると。
さてもうひとつ、建物の寿命が長いと言いましたが、これは中古よりも長いということで、普通のHMまたは工務店の建てる住宅よりも短いです。不動産業者がよく使うものにいわゆる建売住宅向けという住宅がありまして、いろんなところをコストカットして安く建てられるパッケージの住宅なんです。建坪で35坪くらいのが1千万円以下で建ちますから、安いです。このような建物は断熱や気密はもちろん低くなってますが、それ以上に躯体の剛性や基礎などがお安くなっています(つまり性能が低い)。これはやめたほうがいいです。
HMが建売している場合もあります。HMによりますが、建売専用のシリーズをラインナップしている場合、これもお安く作ることを優先しています。さすがにちゃんとしたHMの場合、基礎や躯体について注文住宅と比して性能がうんと下がることはないわけですが、それでも仕様ということではずいぶんと差がついています。そして、大事なのはそのラインナップの仕様の範囲内で建てるために、必ずしも土地の大きさや形、接道の向きなどにしっかりとマッチさせられないということです。建売住宅で、リビングの位置がおかしいとか玄関ドアの向きが使いにくいとかありますが、これは仕様だから仕方ないといったところです。しかし住むほうにしてみれば仕方ないでずーっとガマンするのは、あまり住み心地が良くないですね。やっぱり、建売というのは安いぶん、住まうときにガマンが付きまといます。

建築条件付き土地(売建住宅)

建築条件付きという土地があります。相場よりちょっと低い値段で土地が売っているなあと思うと建築条件付きだった、という話はよく見聞きします。たしかに土地はお買い得感がある場合が多いようです。
suumoさんから引用しますが、

建築条件付き土地とは、文字どおり「条件」のある土地のことを指します。その条件とは、簡単にいうと「ここに家を建てる場合、決められた施工会社に依頼して家を建てる契約を結ぶこと」。これが土地の購入条件になります。

注意したいのは、「条件」には「決められた施工会社に依頼すること」と「その会社と一定期間内に請負契約を結ぶこと」の2つあることです。決められた施工会社とは、土地の売主か、売主が指定した施工会社です。また一定期間内とは、たいてい3カ月ですが、その建築条件付き土地ごとに異なります。

このように土地の売買契約をしてから3カ月という期間内に、家の間取りや仕様をほぼ決めて、指定された施工会社と請負契約を結ぶ必要がある土地を、建築条件付き土地と呼び、「売建住宅」とも言われています。

https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/ikkodate/ik_knowhow/kenchikujoken_tsuki_tochi/

というわけで、その土地を買うということは、売主(の多くはHM)指定のHMで建てないといけませんよ、それも3か月以内に契約してね、ということになります。
最もフィットする人は、その土地がドンピシャで、なおかつ指定のHMの指定のシリーズで建てることがもともとの希望だった、という人です。たぶんそう多くはないと思いますが。
ではフィットしない人というのはどういう人でしょうか。
まず第一に、そのHMで建てたいと思っていなかった人です。家は鉄骨造が良いと考えていたが、ちょうど条件の良い土地が見つかってそれが木造専門のHMの建築条件付きだった、というような場合です。もしHMに希望が無くても、プランが思ったようなものとは限りませんから、プランに不満がある、フィットしないという場合も、難しいでしょう。
それでは、建築条件付きの土地の、建築条件を外すということはできるのでしょうか。答えは、できる場合もある、です。追加の費用を支払って外すことができます。できる場合、その費用は数百万円になることもあります。例えば地方都市の郊外住宅地で50坪で坪35万円の建築条件付きの土地があり、隣の区画は坪40万だったとします。解除費用に300万円かかるとしたら、坪6万円のアップになりますので、相場並みということになります。建築条件付きの土地の場合には、利益を建物と合算できるので、建物も受注する前提で、土地を相場より安く販売することができるという事情があります。
建築条件付きの場合には、一般的に、申し込みから契約まで3か月ほどという場合が多いようです。家を設計するのに3か月は、もし注文住宅ならば控えめに言って全然足りませんので、ある程度プランが決まっているとしてもかなりキツめのスケジュールになります。もし、建築条件付きも視野に入れて土地を探すのであれば、ある程度のHMの建築条件付きになるシリーズの標準仕様は調査しておき、自分の場合には何がオプションになるのかなどシミュレーションしておいたほうがいいです。そうでもしないと、3か月で納得のいくプランにするのは難しいと思います。

ハウスメーカー VS 工務店

ここからは土地と建物を別に買う、つまり建築は注文住宅になるというところですが、HMと工務店では明確にメリットとデメリットがありまして、ご自身に合うほうで選んでいただければと思います。
ここで言うHMも工務店も、安かろう悪かろうのところは入っていません。HMも工務店も、高気密高断熱はもちろん、パッシブデザインをちゃんと考えられるところを想定しています。

まずハウスメーカーのメリットですが、もっとも大きいものは、木造以外の選択肢が広がることです。木造でも一般に工務店ですと、在来(木造軸組)工法を採用しているのが普通ですので、ツーバイフォーを選びたいときも、HMのほうが選択肢が広いですね。工務店でツーバイフォーや鉄骨などを探すとあまりヒットしませんが、なぜかというとそのような工法は基本的に工場生産に向いているためです。そのため、HMのつくる家は外観や間取りが似てくるという面もあります。工務店で鉄骨などの在来以外の工法を採用しているところもありますが、一般住宅ですとあまりメリットが出せず、割高だったりオーバースペックだったりということが多いようです。鉄骨が良いという場合には、HMの中で選ぶようになります。
次のメリットは、倒産リスクが低いことです。建てている途中で倒産、あるいは30年保証と言いながら倒産などということがあると困りますよね。工務店よりは経営基盤の堅固な大手HMのほうが、リスクは低いと言えるでしょう。
そして工期が早いことです。打合せなどは除き、着工から引き渡しまでは3か月もあれば十分でしょう。急がせたら実際の工期は2か月、なんてことも可能です。最近流行りのタイパという考えかたにおいては、非常に良いと言えますね。
これらのメリットはそのまま、工務店ですとデメリットということになります。工務店はほとんど工法を選べませんし、会社の規模にもよりますが倒産リスクは高いと言えるでしょう。そして工期は長くなりがちですので、ローンの支払いが開始されてもまだ家が建ってないということもあります。

では工務店のメリットはなんでしょうか。
工務店の最も大きいメリットとしては、費用対効果が高くできるというのがあります。いわゆるコスパが高いというやつです。施主がしっかり勉強して、良い家を建てたいという場合には、工務店は良いパートナーです。希望に対して必要な部分にお金をかけて、不要なところは簡略にすることができます。お金を使うからには納得がいくまで細部を詰めたいものですが、工務店は小回りが利きますので、効果の高いところに重点的にお金を使えます。ただし、優良な工務店はHMより坪単価が低いということは無いと思います。ですので、HMと同じ坪単価であれば工務店のほうが自由度が高いぶん必要と思われるところにお金をかけられる、というイメージです。
二つめは仕上がりの丁寧さです。HMでも工務店でも、結局建ててる(作業している)人は大工さんであり内装屋さんであり電気屋さんであり水道屋さんなんですけど、その人たちが大手HMから仕事を受けた場合と、地元工務店から受けた場合では、手取りが違う(工務店のほうが高い)ので工務店の仕事を大事にします。
そして、人によってはこれが最重要という場合もあるかと思うのですが、完全な一点もの、ワンオフの家を作ることができるということです。愛着を持って住むということだと、この点を重視する方も多いのではないでしょうか。
同じようにこれらはHMのデメリットとして言うこともできます。まず自由度の低さから無駄にお金をつかわざるを得ない部分が出てくるとか、流れ作業で短工期でつくられるため品質が最優先にはならないとか、同じような外観、間取りの家がそこかしこにあるとか、そういうことです。

そのほかにも双方にたくさんのメリットデメリットがあるかと思うのですが、まとめて言うとこうなるかと思います。
「安心と信頼のHMはある程度お任せで建てても住みよい家がちゃんと建つけど、ありきたりな感じになりがち」→忙しい人向け、住み替えもあるかもという人向け
「自由度が高い工務店の家は自分の思い描く家を建てることができるが、勉強しないでお任せだと失敗しがち」→じっくり建てたい人向け、永住を考えてる人向け

建てるまでが家ではなく、住んでからが家

HMの研究開発力はすごいです。ポンとおすすめの仕様の家を建ててもそう不満が出るものではありません。年間1万棟とか建ててますので、それだけサンプル数が多いということですから、本当に細かいところまでよく研究されています。いろんな人の建てるときの希望や建ててからの感想などを分析して建物に反映させています。オリジナルの建材や設備なども、メーカー品より使いやすかったり値段が安かったりするものも用意したりできます。住まうということで言えば、長い期間、なるべく不満が出ないように作るというつくりかたが上手だと思います。
工務店はその人に合わせたオーダーメードのものを作るということになりますので、何が欲しいかどのようなものにしたいかというのが明確なほど、工務店の自由度の高さが効いてくると思います。住まうことに対してこの先20年30年と人生の見通しがある人が一か八かでつくるという感じです。一か八かというのは、未来のことは誰にもわからないので、見通しからはずれた場合にはこだわった設計が仇になるということもあるからです。ですから、完全に住まう人にフィットさせようとピッタリのオーダーメードを狙うようなタイプの人が自己責任でつくるのに、向くだろうと思います。
しかしながらいずれにせよ、やはりおすすめしたいのは、土地と建物を別に購入するというやりかたです。


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