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マフィンと編集

取材執筆の仕事が忙しく、なかなかマフィン作りに時間が割けなかったこの夏。

こんなとき、自分はこれからどうしたいのだろうかと思います。ものを書く仕事が好き。でも、マフィンが焼けないなら本末転倒。

マフィンと編集の仕事、どちらか1本にしないのかと良く聞かれます。私はどちらも好きなので、そう聞かれるたびに困ってしまう。

私にとってマフィンを焼くことは感覚と手を動かす作業。編集の仕事は、理性と頭を使う作業。使う部位が違うから、ふたつとも回していることが心体にとって心地よいのです。

でも、インスタグラムだけを見てdoyoubiに来てくださる方の半数以上は、私のことをマフィン屋さんだと思っているはずです。

私も自分を紹介する時、マフィン屋ですと伝えてきたし、時にはわかりやすく焼き菓子屋ですと言うこともあります。

でも私は焼き菓子屋になりたいわけではないのだと、常々思います。

作るものがおやつではないから、甘くないから、野菜を使っているからという表面的な理由ではなく、「焼き菓子屋」という言葉にもつ限定されたイメージに当てはめられることが窮屈なのです。

たとえば「焼き菓子屋」なら、日に最低でも6〜8種は焼き菓子(クッキーやパウンドケーキなどバラエティ豊かな焼き物)を揃えていなければいけない気がします。

でも、私はそれがしたいわけではない。数を揃えるために、面白くないものを焼くよりは、今日はおいしいブロッコリーのマフィン一種類だけを焼きました、という店でありたいと思っているし、それでもお客さんが集まってくれるようなマフィンを作りたいと思います。

焼き菓子屋というと、ひとところに留まり、同じ場所でものを作り続けることがベースにあるような気がしてきます。でも、私は店にずっといることがあまり好きではない。すぐ外に出たくなってしまいます。食材を見に行きたいし、新しい味を食べたい。人にも出会いたい。

その地を訪ねて、そこでとれた食材で、その場限りのマフィンを焼く。だから今、本当はそんなことがしたいのです。

なぜ編集もマフィンも続けるの?と問われたとき、いま一番気持ちに近い回答は、マフィンも編集であると思っているからです。

素材に出合い、それを自分以外の誰かにも、面白いと思ってもらえる形に変えること。それは編集の仕事とプロセスが同じで、出すものが記事かマフィンかの違い。

そんなことを考えていたので、鎌倉に移転した時、doyoubiのコンセプトをfood edit muffin に変えました。

単体では広がりに限りのある食材を、マフィンにすることでどうやって広げていくか。味の組み合わせを考えて、マフィンにする=企画を立てるその作業が面白い。

これからどんな形でdoyoubiを広げていこうかと、この頃よく考えています。

編集の仕事にも、企画の素になる面白いなにかが必要です。取材先であったり、自分の心の内にある動機であったり。
それはマフィンにとっても同じで、マフィンの素になる面白いなにかが必要です。そして今、その部が少し足りない。

この間取材したポモナファームさん(これは後日記事に書く)のように、ユニークで刺激的な農家さんに出会うこと。自分が食べたことのない食材を作る人に出会うこと。

そんな刺激をマフィンにしたく、加えて私は書くことが好きなので、
できればそれを書くことと合わせて伝えていきたい。

編集の仕事とマフィンの仕事、どちらも続けてきて5年が経ちますが、これまではその2つをクロスしようと考えてきたことがありませんでした。

たとえば編集の仕事なら、今関わっているものは、暮らしにまつわる取材(インテリア、インタビュー、料理家さんのレシピ)、地方にまつわる取材(地域活性)、子育てに関する取材(保育園)など。
マフィンに直接的に関わるものはひとつもなく、メリハリをつけるためにも、分かれているからよいのだと思っていました。でも、もしかしたらそうではないのかもしれないと思い始めたのが最近のこと。

私個人という生き物にとっての面白みは、編集ライターであることではなくて、マフィンを焼く編集ライターであること。今まで絡めてこなかったその2つを、掛け合わせた方が自分(doyoubi)は生き生きしてくるのかもしれません。

今月、山形にある農家さんを訪ねに行きます。そこで野菜の収穫を見せてもらい、その場で採取した野菜を食べて、キッチンをお借りして、思いつくマフィンを焼き、食べてもらう予定です。

それはどこかの媒体に載る取材ではなく、完全に個人的な活動。それを始めようと思えたのは、繋げてくれる方々に出会えたからで、自分の中では大きな変化で貴重な一歩です。

そこで何かを体験したら、自分の気持ちがどう動くのか。このnoteに記していきたいと思っています。

そんな訳で、今のdoyoubiは試行錯誤の途中です。これまでのように週に1〜2度店を開け続けることがなくなるかもしれないですし、急に地方のどこかでマフィンのpop upをするかもしれない。長期間店を閉じてどこかへ行くかもしれません。

本格的に「焼き菓子屋」ではなくなるために、もう少し枠をはずれて、
思うままに自由な形で動いていきたいなと思います。

自分でもゴールがどこにあるのかわからないそんな試行錯誤を、noteに残していけたら。お暇なときには、お付き合いいただけたら嬉しいです。

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