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リベラリズムの5つのレイヤー(層)

 吉田徹 慶應義塾大学教授の「アフター・リベラル」(講談社現代新書 2020年)は非常に「頭の整理」になる本でした。
 「リベラル」という概念は、その使われ方が多義的で、この本でも、アメリカとヨーロッパで意味内容が異なっていることが指摘されています。
 
 全編にわたって興味深い分析がなされていますが、終章で提示される「五つのリベラリズム」という概念整理が、分析ツールとして非常に有用だと思っています。

 その5つとは、次の5つです。
   政治リベラリズム 
   経済リベラリズム 
   個人主義リベラリズム 
   社会リベラリズム 
   寛容リベラリズム 

 このうち上の4つは、教科書的な憲法論の中で、基本的人権として論じられてきたもので、次のような対応関係になると思います。
   政治リベラリズム  -政治的請求権、参政権
   経済リベラリズム  -経済的自由権
   個人主義リベラリズム-精神的自由権
   社会リベラリズム  -平等権、社会権


 最後の「寛容リベラリズム」は、グローバル化し、モビリティーの高まった世界で、改めて共存のために必要なものとして見出された、あるいは、「思い出された」ものということになるかと思います。
(この当りは、森本あんり「不寛容論」が非常に面白いです。)

 この5つの「リベラリズム」のどれかが、盛り上がったり、退潮していったりということで、そのバランスが変化することを通して第2次世界大戦後から現在までの政治や社会運動の動きを説明しており、非常に見通しが良くなります。

 また、この本で展開されている「ウーバー化」という概念も有用な概念規定だと思いますし、「ウィルソン=レーニン主義」という概念も、パワーワードだと思いますので、また機会を改めてご紹介していきたいと思います。

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