20200807 vsペンギンズ

PRE-GAME

スタンリーカップ・プレイオフ・クオリファイア4戦目。ここまで2勝1敗のモントリオール・カナディアンズは、勝てば正式にプレイオフ進出が決まる大一番になります。対するピッツバーグ・ペンギンズ、後がないこの状況で先発ゴールテンダーを変更してきました。GKトリスタン・ジェイリーはこれがプレイオフ初出場。カナディアンズの先発は、これまでのラインナップからセンターの序列を変更。1st LINEのセンターだったダノーを3rdに下げ、1stのセンターにニック・スズキ。2ndのセンターはイェスペリ・コトカニエミ。2人の二十歳のセンターをTOP6に配置して試合に臨みます。会場はカナダ・トロントのスコシア・バンクアリーナ。前の試合に続き、今回もHABSが赤のジャージーです。

LINES & PAIRINGS

FW
90タタル 14スズキ 11ギャラガー
92ドゥルーアン 15コトカニエミ 40アルミア
41バイロン 24ダノー  62レーコネン
60ベルジール 13ドミ 22ウィース
DF
8チアロット 6ウェバー
77クーラク 26ピートリー
53メテ 61ウレット
G
31プライス

前の試合で先発しながら負傷退場したエヴァンスに変わり、4th LINEにアレックス・ベルジールが入ります。28歳のフォワードですが、長く下部リーグのAHLを主戦場にしてきた選手で、なんとこの試合がNHLデビュー戦となります。前述の通りセンターは配置が入れかわったので、試合開始のフェイスオフをスズキが担います。

POST-GAME

試合序盤は予想に反して静かな立ち上がり。双方ともに背水の陣(カナディアンズは負けてもまだ1試合残っていますが)の緊張感のある、慎重な滑り出しから始まります。カナディアンズの狙いとして、「激しい打ち合いに持ち込まない」「ペナルティを取られない」という明確な方針が打ち出せれていたように感じました。的確に相手のスペースを潰し、攻撃の芽を摘んでいきます。1ピリのシュート数はカナディアンズが5本、ペンギンズが8本。HABSはペナルティなしで乗り切り、好スタートを切ります。
一進一退の攻防の中でも特に目立ったのは、この試合で3rd LINEに下がったセンター、フィリップ・ダノーのフェイスオフの上手さ。どうしてもパックを保持したい味方陣地でのフェイスオフで尽くパックを獲得し、大きな貢献をしてくれました。試合を通じて、ペンギンズのキャプテン、シドニー・クロスビーと対峙したフェイスオフは、5回のうち4回で成功。ダノーはこの試合で3つのブロックショットも決めており、攻守に渡って素晴らしい貢献でした。その努力が実ったのが、0-0で迎えた3ピリ残り4分。ダノー、バイロン、レーコネンの3rd LINEがついに均衡を破ります。

もう後がなくなったペンギンズ。残り2分からGKジェイリーを下げてエンプティネットで戦いますが、最後はHABSキャプテン、ウェバーが自ゴールの裏から壁沿いにクリア。パックはそのままペンギンズのガラ空きのゴールへ流れ込んで、これで勝負ありました!

課題だったペナルティも、この試合はチーム・トータルでたったの4分。素晴らしい「Discipline」で勝ちました。シーズン中断時にカンファレンス12位だったカナディアンズ。ポストシーズンはないものと思っていましたが、このクオリファイアーにギリギリで滑り込んで巡ってきたチャンスでした。同カンファレンス5位の強豪ペンギンズとの対決、「圧倒的不利」という下馬評を覆してスタンリーカップ・プレイオフへの進出を決めました。

ファンの中には、今年のドラフトピックで上位指名優先権を獲得できる、という理由から、「このプレイオフは早々に敗退したほうが良い」といった論調もありました。個人的にも、チームの長期的な再建計画を考えたら、ここで頑張るよりドラフトでプロスペクトの選手を獲得するほうが良いかも?とは思っていたこともありました。でも、氷上でもがいて必死に戦っている選手たちを見れば、「負けたほうが良かった」などと、言えるわけがありませんよね。むしろ、これまでプレイオフの経験のないスズキやコトカニエミといった若手のホープが、こういった舞台で経験を積めるということをポジティヴに捉えるべきだし、実際にそう思います。

プレイオフ進出が決まったお祝い、、、ではありませんが、今日は試合後のコメントもやや多めでご紹介します。

この試合でNHLデビューを飾ったFWベルジール:「今夜の勝利に貢献できて良かったよ。NHLでプレーできる機会がきっといつか訪れる。そう信じて、その時のために長い間ずっと準備をしてきたんだ。とても嬉しかった。でも同時に、緊張しすぎないようにもしていた。とても重要な試合だったから、あまりハイになりすぎないように心がけた。この状況では何より勝つことが重要なので、勝利に貢献できて嬉しいね。」
ウィニング・ゴールを決めたFWアルトゥッリ・レーコネン:「この状況下で、みんながホッケーを楽しんでいるし、誰しもがプレイオフでプレーしたがっているはずだから、進出は嬉しい。タイトなゲームばかりで、フィジカル的にも本当にタフな試合の連続だけどね。個人的には、同じチームと何試合も続けて戦うのはとても楽しいね。試合前は、誰もが私たちのことを軽視していたから、このシリーズに勝つことは本当に気分が良い。でも、これは1つのステップでしかない。今はこの喜びを分かち合っているけど、もう次に進まないとね。」
4試合通じて好成績を残し、この試合でペンギンズを完封したGKキャリー・プライス:「僕等はこのシリーズに参加するにあたって、非常に高いモチベーションを保っていたし、意欲的だったよ。カナディアンズ勝ってくれ、と願った人はいなかっただろうが、それが決定的な要因になったかもね。様々なことを差し引いても、僕等は『みんなが間違っている』ってことを証明しようとしたんだ。」
キャプテンのDFシェイ・ウェバー:「これは大きなチャンス。このクオリファイアーもそうだが、僕等にとっては一度終わったシーズンのセカンド・チャンスだ。シーズンが中断したとき、私たちが居た順位を考えたら、第2の人生を与えてもらったようなものだ。でも今、正式に、プレーオフに出ることになった。プレーオフに進出するのは簡単なことではない。これは真の戦いであり、やるべき仕事はまだたくさん残っている。それと、若い選手の活躍は見てて気分が良いね。このシリーズが始まる前、ピッツバーグの経験値が私たちよりもどれだけ多いか、誰もがそういう話をしていたけれど、むしろカナディアンズの若手は、この試合の重要性みたいなものを、いい意味であまり感じていなかったんじゃないかな。リーグトップクラスのセンター(クロスビー、マルキン)を相手に怯むことなく、しっかり戦っていた。」
プレイオフ進出を決めたヘッドコーチのクロード・ジュリエン:「私のチームは、自分たちで決めた方針を貫くこと、その重要性を理解し始めていると思う。いい試合を4回プレーしてくれた。そのうち1つは、相手の方が優れていたので負けてしまったが。7日間で4度目の試合だったが、守備はしっかりできていると思っていたし、さほど相手にチャンスも与えなかった。相手が背水の陣であることは分かっていたし、必死になって攻めてくることも分かっていたけど、守備面では良いプレーが出来ていると思っていた。必要なときに得点することができて良かった。チームが成長する良い機会が来ていることに疑念の余地もないね。ただ次の試合の日程はもう決まっているし、当たるのはトップシードの強豪になる。また大変な試合になるだろうけども、全力でやるしかない。」

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