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JOKER (ジョーカー)

「僕の人生はずっと悲劇だと思っていた... だが、喜劇だった」

街全体がスラム化し、人々の不平不満の悪臭が至るところに充満している。だが特権階級の人々は、広大な敷地でこの世の春を楽しんでいる。

持てる者はその地位を得る努力をしたのだとのたまい、持たざる者を愚弄する。努力が足りないのだと笑い者にする。そうして虐げられた持たざる者は、自分よりもさらに持たざる者を攻撃する。何の理由もなく。人は、いじめうる対象を本能で嗅ぎ分ける。

無限ループだ。

ほんの僅かな温かみで断ち切れるループなのに、それすらも「持てる者」は与えない。強きをくじき、弱きを助くなんて、絵空事。

「良心の呵責なんて感じなかった」

ジョーカーをオンエア中に公然とバカにした、憧れの人気司会者役にロバート・デ・ニーロ。物語でも、実世界でも「持てる者」の代表みたいな人。

そしてわたしも、持てる側の人間なのだ。だって、こないだの台風でだって、お家は沈まなかったし、電気もずっとついていた。家族も友人も。台東区のホームレスの方のお話も、月曜日まで知らなかった。

台風速報にドキドキし、その上地震が来た時は、「すわ!日本沈没か!小松左京か!」なんて思ったものの、どこかで大丈夫って思ってた。翌日以降の被害の実態を見て、心も痛むし、これからできることをしようとも思っているけれど、その画面越しの光景を、ホッとしつつ高みから見物しているみたいな自分もいる。やだ。やだけど、これが自分。

この時点で、わたしは彼らの悲劇を消費している側ではないか。わたしみたいな輩が、ジョーカーを生み出すのではないか。

血で笑みを書き、目の周りの青い三角が涙で滲んでいくのが、凄かった。

悪が生まれる理由の半分はいつだって、誰の中にでもある善の種を摘み取ってしまった周りにある。

自分への戒め。

「時計仕掛けのオレンジ」を思い出した。

言葉は言霊!あなたのサポートのおかげで、明日もコトバを紡いでいけます!明日も良い日に。どうぞよしなに。