【ちりとてちんとは】 落語 「春風亭一之輔 古今亭文菊 二人会」
二人会が好きだ。
独演会だと、その師匠のワールドにどっぷりと浸れる。師匠の描く街に住む誰かに、師匠ならではのスポットが当てられていく楽しみがある。
演芸ホールだと、照明が当たる対象が、社会になる。そこに住む様々な住人が入れ替わり立ち替わり登場し、それぞれが少しの間主人公になる。社会の中の個人が持つ、様々なおかしみを感じることができる。
二人会に登場する師匠らは、「我」と「われ」のままで「我々」になる。三人集まれば社会になるけれど、2人だと社会は形成されない。独立しているけれども、作用し合う2人になる。そして、その相互作用がうねりとなっていく。お互いにリスペクトを忘れず、でも迎合することもなく、相手の出方を拾ったり拾わなかったりする。それがえらく生っぽかったりするのだ。
今回だと、「肝潰し」後の文菊さんの枕がそのうねりだった。「あんなサゲの後で、どうすればいいっていうのよ、ねえ」みたいなおちょくりから、「抜け雀」は始まった。
枕で相手を受けた上でのおちょくりを入れつつ、「駕籠かき」の意味も説明していた。文菊さんの枕は、落語に慣れていない人への眼差しが常にある。SDGsで言うところの「誰も置いていかない」精神だ。
今回の4席で一番良かったのは「ちりとてちん」。一之輔師匠の演技力たるや。襖の向こうでずっと隠れているだけの人の忍び笑いまで聞こえてきた。途中から全く登場しない人の存在を、ずっと感じられたのだ。
時折登場はしている奥さんの、だが表現されることはあまりない、くすくす笑う様も思い描けた。
座布団1枚しかない空間に、あるお家の全てが立ち上がっていた。
それを受けて文菊さんも芝居重視な噺になっていた。
灘の生一本と鯛のお刺身が食べたくなった。帰りに立ち寄った居酒屋さんにはどちらも無かったけれど、日本酒は呑んだ。
落語、またやりたい。
明日も良い日に。
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