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202/366 【じわり】 オンライン一人芝居 「わたし」

わたしはあなたです。あなたの有効期限が切れたので、ここに来ました

引きこもりの適応障害(発達障害?)の女性の元に、ある日自分そっくりの女性が現れて、こんなことを宣言する。

そして周りとどうにもうまく馴染めない彼女に「自分のトリセツ」を渡して去って行く。

それを読んだ周りの人々は、彼女の扱い方を学んでいく。「わたし」にとっても、初めは気持ちがいい。人生が初めて楽になった。初めて周りから浮いていない気持ちになった。でも、目の前の自分を見ることなく、マニュアルだけを読んで分かった風になる周りに「わたし」は次第に違和感を感じていく。

馴染めなくても、この世界が好き。

劇中劇の人魚姫は、声と引き換えにして脚を得る。歩くたびに激痛が走り、ひょこひょこと歩く無様な姿を、周りの人は哀れんでくれる。ようやく王子様に会えたところで、人魚姫はもはや彼に想いを告げることもできない。第一彼には婚約者がいる。

それでもいい。うまく歩けなくてもあなたがいるこの世界が好き。

海へ帰って虹色のあぶくにもなれず、声と引き換えに貰った足にも馴染めず、王子様も得られず、でも消えることもできない人魚姫の姿が、自分と重なった。

日本語が好きで、日本語の国である日本に行こうと思った。馴染めないこともあったけれど、そのままただ突っ走った。今もまだ突っ走っている。その過程でも今も、多くの人をなぎ倒した。ワザとじゃないんだけど、なぎ倒された側からすればそんなの関係ないだろう。

周りとうまくやれないと凹むことも多々あるし、想いをうまく伝えられないと地団駄を踏みたくなることもある。ただただ水底に沈みたいだけの日も。

それでも、ここが好き。そして物語が好き。やらかしてもやらかしても、その結果いずれ周りに誰もいなくなることが怖くても、「分かった風」の優しい人のマニュアルに全てを委ね、刹那の安定にタプタプと浸ることが何故かできない。

わたしも孤独であなたも孤独

それが出発点。突っぱねるとか線を引くとか、そういうことではない。ゼロ地点はこういうこと。

今日も誰かが更新されていく。『更新されて良かった』と言いながら、皆笑顔で社会に自分をなじませていく。でも私はどちらの世界にもいられず、こうして一人で沈んでいる。

夏に舞台公演をやる予定だったそうだ。配信でもこんなに臓物ぐわっと掴まれてブンブン揺さぶりかけられてるのに、生の公演だったらどうなってしまうのだろう。

見終えた後、サイトから飛んでみたら、なんとこちらで戯曲が公開されていた!太っ腹〜!本編を見てから読むと、また違う気持ちが湧いてくる。あれ?ここどんなテンションで言ってたっけ?と気になるところがわらわら出てくる。これはエンドレスループの予感しかない。

視聴チケットは26日まで販売しているようです。

いつか舞台で観られますように。

明日も良い日に。

写真はアフタートークの1コマ(写真撮影OKとのことでした!)

こちらは12日目。


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