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【水晶のような音とは】 ピアノ協奏曲コンサート:マルティン・ガルシア・ガルシア

昨年のショパンコンクールで3位入賞した、マルティン・ガルシア・ガルシア君。

くるくる巻毛がチャームポイント♪

ショパコンの時に聞いた彼の「陽」のピアノと、心の底から音楽を楽しみ愛している演奏に心を惹かれ、日本にきたら絶対に行こうと思っていたのです。

それなのに、今年前半のコンサートは、チケットを買っていたにも関わらず、ギリギリになって予定が重なり、涙を飲んでピアノ好きのメンターにお譲りすることに。

それから半年。万難を排してのサントリーホール。

秋晴れとはまさにこのこと!

今回は、ピアノ協奏曲のコンサート。

豪華すぎる

ショパンのピアノ協奏曲第二の第一楽章は、苔色の湖面の近くに建つ、深緑の中の洋館。水晶の欠片のような光が、音に化身して弾けます。

第二楽章は、大海原。凪いだ水面に反射する光。

硬度が高い音だからか、水晶のような音がする。Fazioliの特色なのかも知れない。粒がキラキラしている。昔ながらのピアノだと、音に真珠の光沢感な感じがあるけれど、彼のピアノは、もっと硬質なキラキラ度が高い。

それに由来してか、音のキレも鋭い。真珠的な音を鳴らすピアノだと、月の周りにできる光の残像のような、ホワンとしたものが音の芯の外に暫し残るけれど、ガルガル君のFazioliの音は、止まった時にスパンと消える。

残響を残したい時は残しているから、これはテクニックなのだろう。そしてそのピアノの特性を、ガルガル君は生かし切っているということなのだろう。だからfazioliを弾くのだろう。

ショパンは、全体を通して、「陰謀渦巻く緑に囲まれた王宮で、何も知らずに戯れている無邪気なワンコ」のような印象を受けた。時々、王宮の不穏さが滲み出るけれど、すぐにわんこはいつもの無邪気な感じに戻る、そんなイメージ。

ご本人の性格と、ショパンの陰影が混じり合ったような印象だった。

20分の休憩後は、ベートーベンの「皇帝」

若き皇帝が… いた。

降臨しておられた。皇帝になるまでのナポレオンの姿すら見えた、気がした。幼い時のボナパルト君も、その戴冠式の準備に湧く宮殿も。

だが、驚愕はここでは終わらなかった。

大喝采の中、アンコールに再登場したガルガル君は弾きました。

「英雄ポロネーズ」を!

わあああ、皇帝とかけてる!!!!!!なんてニクい選曲なんだろう。惚れる。惚れてまう。

その後も、リストのワルツ(多分)やら、バッハの「平均律クラヴィーア」第1巻の第1番(「蜜蜂と遠雷」!)やらを含めた全5曲のアンコールでした。

凄いのは、アンコールに再登場したガルガル君の弾き始めの速さです。

スタオベな人々が拍手する中、すすっとピアノに座り、あっという間に弾き始める。なんなら、ゆったり動くお客さんはまだ座り終えてないようなタイミングで、一音目はすでに生まれている

4回目のアンコール、ガルガルくんの、身体を揺らす笑顔満載な演奏に、私はマスクの下で終始満面の笑みでした。この曲は、ラストの音をぱぱっと響かせた後、ささっと退場したのです。

ああ、流石にこれで終わりかな、と思っていた矢先に、ホールの電気が灯りました。そうだよね、4曲もやったもんね。
でも拍手は鳴り止みません。私も当然スタオベです。おねだりしているつもりはないんです。ただ単に、素晴らしい演奏に対して、感謝観劇の拍手をしていただけ。

でもね…

ガルガル君は再度、登場したのです。

ねえねえ、あなた、さっき、本プログラムで、「皇帝」弾いたばっかりだよね?3楽章全て?!

その後で、5曲のアンコールって、どういうこと?!え、ガルガル君ってもしかして2人いるの?コピーロボットとかを持参してきてたの?!

最後まで驚愕のコンサートでした。

久しぶりに、クラシックのコンサートで涙が出そうになった。感動、とかではなく、喜びの涙。生きてるって喜びなんだ、ということを細胞のレベルで感じた2時間半でした。

ガルガル君、また来てね。また行くわ。

明日も良い日に。

追記:アンコール曲は以下の通り

ショパン:英雄ポロネーズ Op. 53
スクリャービン:ワルツ 変イ長調 Op. 38
スクリャービン:練習曲 Op.8-10
リスト:即興ワルツ S.213
J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1プレリュードとフーガ BWV846 ハ長調

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