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上皇陛下って英語で何て言うの?という素朴な疑問を調べてみたら、世界の生前退位が垣間見えたこと

上皇、上皇后陛下という肩書きが音としてテレビから流れるようになっておよそ一週間。ちょっとした瞬間に聴こえてくる度、聞きなれない音の並びに、まだ少し戸惑う。そんな話を友人としていたら、彼女がふと尋ねてきたのです。

「「上皇陛下」って英語で何て言うんだろうね?」

ラ・フォル・ジュルネで、友人のバイオリニストトリオの青空演奏会を楽しんだ後、日比谷公園で日向ぼっこをしながら麦茶を飲んでいた。楠木カフェのソフトクリームが完売していたが故の、ヘルシーチョイスでの会話だった。

おお、確かに、と思って調べてみたら、

上皇陛下は  Emperor Emeritus

上皇后陛下は Emperor Emerita 

となっていた。宮内庁でも発表されていた。

http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/kohyo/pdf/kihonyogo-j-e.pdf

そうだよね、メディアでの呼び方を統一しなきゃだもんね。どんな会議を経てこれらの訳語が選ばれたかにも興味津々だが、それはまた別の話。

Emeritusという単語は、「名誉教授(Professor Emeritus)」でよく見かける言葉だが、上皇陛下で使うのか!と目からウロコがポロポロ落ちた。でもよく考えれば、確かに合っているかもしれない。

では、他の国ではどうなんだろう。

生前退位をなさった国王や女王陛下は他にもいらっしゃるだろうから、そういった方々は一体どんな肩書きになるのだろう。

調べてみたら、実は生前退位をなさる国家元首は世界的にもとても前例が少ないことが分かった。

近代では、オランダのベアトリックス女王が2013年に退位されている。御年75歳。

そしてなんと!オランダでは、女王が退位されると王女に戻る!よって現在、元Queen Beatrix  (ベアトリックス女王)は、Princess Beatrix (ベアトリックス王女)と呼ばれている。

...凄い。

女王から王女へって、何か凄い。言葉を逆にしただけなのに、家出と出家くらいの隔世の感がある。(違)

Emeritusという言葉の選択は、ローマ教皇(法王)の事例があった。

ローマ教皇ベネディクト16世(Pope Benedict XVI )が2013年に退位され、名誉教皇(Pope Emeritus Benedict XVI)になっている。

ちなみに教皇に対する「陛下」にあたる言葉は「聖下」らしい。英語だと、His Holiness。

全部書くと、

ローマ教皇ベネディクト16世聖下(His Holiness Pope Benedict XVI)

となり、退位されると

名誉教皇ベネディクト16世聖下(His Holiness Pope Emeritus Benedict XVI)

長い... 同時通訳してたら間違いなく噛むわ、これ。(お前だけや)

教皇聖下の場合も生前退位は珍しく、ベネディクト16世は719年ぶりとのこと。「名誉教皇聖下」という言葉自体がなかなかないってことね。

ちなみに「猊下」と「聖下」。どちらも使われているようで、使い分けが分からない。よく見かけるのは、ダライ・ラマ法王猊下。英語だとHis Holiness the Dalai Lama。(theがポイント!)

英語だとHis Holinessでどちらも同じ。日本語的には厳密な使いわけがあるのだろうか。詳しい人、教えてください。「猊下」の方が馴染みがあるのは、あれだな、「アルスラーン戦記」のせいだろな。

別の欧州の例だと、スペインのファン・カルロス王が、2014年に生前退位をされている。76歳。この方は日本語だと前国王となっている。英語だと、上皇陛下や教皇と同じくEmeritusという言葉が使われていて、

King Emeritus Juan Carlos (ファン・カルロス前国王)

となる。やっと前国王、というまず頭に浮かぶ単語が出てきて、妙にホッとする。

興味深いのはファン・カルロス国王が生前退位に至るまでの経緯。

日本同様、スペインでも生前退位は前例がなく、よって法整備からまずは始めなければならなかった。

2014年6月2日 ラホイ首相による譲位の決定。緊急閣議を招集。法手続きを可及的速やかに完了すると発表。憲法等の改正案を国会に提出。

2014年6月18日 「ファン・カルロス1世の譲位を実行する為の組織法」が上院下院で可決。速やかに譲位。

はやっ!!!

そもそも譲位への動きに至ったのが、国内が経済危機の最中、バカンスで象狩り(あかんやん)に行っていたことがバレた等々スキャンダルがあったかららしいが、とはいえ、早い... 

6月2日以前から準備は進められていただろうし、それは数年前から始まっていたのかもしれないが、表面化してからが早い早い。どの段階から国民は知っていたのかしら。オフィシャルではなくても、噂が出はじめたのはいつ頃からだろう。スペイン人に聞いてみたい。

儀式的なものが少ない(ってか、書類に署名しただけ!)ってのもあるかもしれないがそれにしても早いわな。(譲位の儀式の様子。12分くらいのところで署名)

翌日の即位の日のダイジェスト映像

国会で、ビバ国王!ビバスペイン!みたいな掛け声かけてます。

スペインは「今回の譲位」的な法律名だから早かったのかも知れない。今後どうなるのかは、またその時々で決めればいい、というラテンな考え方かもしれない。いずれにしても国民性が出ている気がして興味深い。

御譲位にまつわる単語レベルの問いかけから、ここまで話が広がった。それだけでもありがたい、なんて思う連休ラスト日なのでした。

写真は、藤棚@足利フラワーパーク。Purple Rain。








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