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#小説
[小説] 流行りの番組
男は暇をもて余していた。
仕事をするという概念はもうない。人類はあらゆる事務と肉体労働から解放されていた。この社会には、作業内容や管理目的に応じてたくさんのAIが存在する。それぞれ独自の学習方法を持ち、最適化して人の代わりに働いている。人類は自分の行動に責任を負う必要が無くなり、多くは娯楽に耽るか芸術に身を捧げるかという世の中であった。
手持ちぶさたな男はテレビをつけた。スポーツ番組から
[小説] 螺鈿の思い出
私は母方の祖父母の家に来ていた。玄関から入って、廊下の途中にある階段を上がったところに、祖父の部屋はあった。中には家具も小物も少なく、無駄なものはいらないという性格がよく表れている。あまり掃除されていなかったのか、いたるところに埃がたまっていた。
祖父は普段から自分のものは自分が管理すると言って聞かなかった。祖母が先に亡くなってからは、母が時折帰ってきて家中を掃除をしていたらしい。それでも、祖