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【Medical Emergence Talk】#3〜そもそも、健康ってなに?(後編)〜


多くの人が望む「健康」。その願いを叶えるためには、健康を正しく知っておきたい。でも、紐解いていくと、健康とは私たちが思っている「疾患がないこと」ではないと言います。「健康」って一体なんなのか?後編です。

読み逃した方は、前編からどうぞ。

「笑うこと」を笑うなかれ

朱田:もし、なんとなく健康的じゃないな・・・と感じている人から「健康的な生活を手に入れるにはどうしたら良いですか?」と相談があったら、どんな話をしますか?

川尻:そうですね・・・「楽しいことをしてください!」って言いますね。笑うとか、楽しむってすごく大事だし、実は健康に繋がるもの。まずは、「(健康になるために)何かをしなければならない」という心の負担や責任から解放される事が大切なので、僕は楽しむことを推しますね。

朱田:科学的にいうと、「笑うこと」の効果や目的は何ですか?

川尻痛みなどの症状の感じ方は、BPS全ての相互作用によるストレスレベルに左右されるので、笑うことで身体の中のストレスレベルを下げる事が目的です。身体的、心理的、環境的に安心安全な部分を増やすというのは凄く大切で、そのために一番わかりやすい方法が、「楽しむ」「笑う」といった事だから、しっかりやりましょうと強調しています。

「どこにどう目を向けるか?」が健康を左右する


朱田
:でも、笑うって、精神的、身体的、社会的、金銭的にも余裕がないとできないですよね?

川尻:それはあると思います。

朱田:余裕のない人たちに対しては、そのアプローチって効果的なんですか?

川尻:だから、自分の状況の中で探すっていうのがすごく大事なんですよね。楽しく感じる時間をどう探していくのか。

確かに「収入が上がると幸福度が上がる」と言う調査結果はあります。でも、実際は思ってる以上にお金による影響はない気がしていて・・・

お金はあった方が、楽しいことを感じる機会を作りやすいのかもしれないけれど、お金がなければ、必ずしも楽しい時間が作れない訳ではないですよね?

お金があっても、痛みや不調のような辛いところばかり見て、自分の人生の中にある幸せや素敵な部分に目を向けられなくて苦しんでいる方もいますから、やっぱり「どこにどう目を向けるか?」なんですよね。

朱田:そうですね。どう捉え方を変えるか。

川尻:例えば、新型コロナウイルスが全世界に感染拡大し始めたときに、
「怖い!怖い!最悪だ!」とネガティブに捉えた人と、「まあ、しょうがないよね。どうにかして、楽しくやっていこう」と捉えた人では、その後の数年間の生活や健康が全然違いましたよね?そういうところの差って、結構でかいですよね。

朱田:前回のタバコの話と同じですね?


(初回のタバコの話を逃した方は、先にこちらからお読みください)

川尻:そうそう。結構、捉え方によって全ての要素はどちらにも転ぶと思うので、「捉え方」というのは、健康になるためのキーだなと思います。
ただ、これって「健康」っていうのと、「幸せ」っていうのの違いもあるのかなと思って。

朱田:確かにそうですね。

川尻:そこも、またややこしいところなんですよね。
健康って、幸せのための十分条件ではないじゃないすか。

ただ、我々が今まで思っていた「健康=身体」によったところではなくて、様々な要因が関係するという事実に、今後は目を向けていかないと、なかなか変わらないのかなと思いますよね。

朱田そうですね。さっきの、WHOの定義の、健康とは?を幸福とは?に変えても当てはまりそうな・・・

川尻;本当にそう!健康とは?っていうだけでも結構難しいっすよね。
でも、健康であることをゴールにするのか。もうちょっと先をゴールにするのか?って大事だなと思ったんですよね。

朱田:それはいいかもしれないですね。確かに。

川尻健康であることだけをゴールにしてしまうんじゃなくて、
健康が何のために必要なのか」を考える。つまり、「その先にあるゴールをちゃんと見る」という事が大切なんだと思います。

朱田:そうですね。いいですね。

「健康=身体」のイメージを、少し広げて考えると
本当の健康が見えてくる


川尻:でも、医療関係の仕事をしている我々でさえ、「健康って何ですか?」って言わてれたら、「ようわからんなあ・・・」っていう結論になるわけなんでね(笑)

朱田:いやあ、難しいです。世の中の人が思う健康って、いわゆる疾患とか、怪我とか、大きな病気がない状態ですよね。

川尻:そうですね。

朱田:それが一つの健康の定義ではあるとは思うんですけど、WHOの定義とはちょっと違う。そう考えると、やっぱりWHOの定義にしても、痛みや健康の定義も、あまりにも浸透してなくないですか?

川尻:いや、本当にひどい(笑)その辺、ちゃんと小さい頃から教えた方がいいですよね。習ってなかったり、触れてなかったら、そりゃイメージも沸かないですよね。

朱田:そうですね。なかなか、まとまらなかったですね。

川尻:まとまらなくても良いんじゃないですか?難しいものを難しいよねって、みんなで考える機会になれば。ただ、多くの人が持ってる「健康=身体」のイメージを、少し広げて考えてもらえるようになったら、「どこにどう目を向けるか?」が見えてくるよねっていう風には思いますけどね。

朱田:そうですね。
健康を定義するのが難しいのは、人それぞれが思う「健康的な状態」っていうものがあって、結局のところ主観になってしまうからだと思います。
統計的に考えれば、十分に母数が多くて、健康っていうものに対する考え方が正規分布に従うとしたら、「平均的にみんなこんな考えを健康っていうよね」っていうものがあるはずです。

しかし、そこから外れる人もいるし、分散が大きくなればなかなか決まった健康を定義することが難しい。さらにWHOの言う肉体、精神、社会的な状態っていうやつは、変数としてみたら複雑すぎてしまう。こうなると、もう「みんなが共通に健康だよね」って思う状態を決めることは不可能に近い。なので、健康を一つのセンテンスでまとめられなくても仕方ないってことで・・・

次回以降、1個1個掘り下げて考えてみましょうか!

川尻:是非!

*この連載は、オンラインサロンMEG※(Medical Emergence Group)で配信されていた対談の一部を編集してお届けします。

朱田 尚徳 (所沢あかだ整形外科 院長)

富山医科薬科大学医学部医学科卒業。国内外の整形外科病院勤務ほか、Jリーグのチームドクターなどを歴任。2020年、埼玉県所沢市に「所沢あかだ整形外科」開院。理学療法士や鍼灸師とともに、チーム医療の推進を行っている。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、義肢装具等適合判定医。

川尻 隆 (SASS Centrum, Inc. 代表 アスレチックトレーナー 組織改革デザイナー) 

サンディエゴ州立大学を卒業。2007年よりアメリカカリフォルニア州サンディエゴにてIntegrated Holistic Medicine Clinic/パーソナルトレーニングジム“Body Craft”を経営。2017年に株式会社SASS Centrum,を設立し代表取締役に就任。新しい医学・医療の形を「動作学」を基礎に研究を続けている。