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【Medical Emergence Talk】#1〜健康を手にいれ、幸せを感じるための考え方〜

「お酒は毒!」「適量のお酒は健康に良い」
「◯◯を食べれば、免疫力を高められる」「風邪には抗生物質」・・・

医師によって違うアドバイスや、ブームに乗って
次々に現れては消えていく健康法。
「本当は何が正しいんだろう?」と戸惑うことはありませんか?
 
巷にあふれる「根拠があいまいな情報」に流されず、
自分と大切な人を守れるようになりたい。

そんなあなたに届けたくて、
2人のプロフェッショナルが対談を始めました。

テーマは「健康を手にいれ、幸せを感じるための考え方」。

この健康法は○
この健康法は✖️

そんなミクロな話ではなく、
もっと根本的で大切な「人間の健康と幸せ」の話。

ジャンルの異なる二人の専門家の話に耳を傾けることで、
人間の体が面白くなり、健康や幸せについて
自分の頭で考えたくなる対談です。

朱田 尚徳 (所沢あかだ整形外科 院長)
富山医科薬科大学医学部医学科卒業。国内外の整形外科病院勤務ほか、Jリーグのチームドクターなどを歴任。2020年、埼玉県所沢市に「所沢あかだ整形外科」開院。理学療法士や鍼灸師とともに、チーム医療の推進を行っている。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、義肢装具等適合判定医。

川尻 隆 (SASS Centrum, Inc. 代表 アスレチックトレーナー 組織改革デザイナー) 
サンディエゴ州立大学を卒業。2007年よりアメリカカリフォルニア州サンディエゴにてIntegrated Holistic Medicine Clinic/パーソナルトレーニングジム“Body Craft”を経営。2017年に株式会社SASS Centrum,を設立し代表取締役に就任。新しい医学・医療の形を「動作学」を基礎に研究を続けている。

健康と幸せの本質を理解する「きっかけ」を手に入れる対談


川尻:
こんにちは!朱田先生。

朱田 :こんにちは!よろしくお願いします。

川尻:今日は第一回目なので、メディカル・エマージェンス・トークを始めた理由を中心に、今後のテーマについても自由に雑談できたらと思っています。

朱田:僕が川尻さんに初めて会ったのは、確か6年ほど前でしたよね。当時、僕はカナダのスポーツ整形外科フェローシップのプログラムから帰ってきた直後で、バリバリの整形外科医の思考で。

「膝前十字靭帯(ACL)を手術で直せば、全ての問題は解決する!!」と信じていた時代(笑)

川尻:はいはいはい(笑)

朱田 :そんな時に、知人が「面白い人がいる」と川尻さんを紹介してくれたんですよ。確か、パンケーキ屋みたいな喫茶店で(笑)

川尻:そうそう!

朱田:川尻さんのことについては事前になんとなく聞いていたので、僕の持つ論文の知識で・・・

川尻:論破してやろうかなって?(笑)

朱田:そうそう(笑)

「この人は何もわかってねえな」って思っていたんです。本当に。その時、具体的にはどんな話をしたかは覚えていませんが、「え?この人、何言ってるの?」って思ったのは、今でもハッキリ覚えています。

川尻:あはははは!!この人、ちゃんと勉強してきたんか?みたいな。

朱田:そうそう(笑)そういう感じだったんですよ。でも、僕は新しい知識に触れると、一応、一次情報に当たらないと気が済まないタイプだから、ちゃんと調べようと思ったんです。

そこで、「痛みの定義」や「川尻さんの言ってる話」について調べてみると、ちゃんと文献があったんですよ。そこから、「あれ?あの人の言ってる事って、もしかして間違ってないんじゃないの?」と思い始めて・・・

川尻:今の話って、実はすごく大事なところだと思っていて。朱田先生は、新しい情報を受け取った時に確認する作業をしたじゃないですか。それって、多くの人がしないんですよね。

一般の人はもちろん、医師や専門家でも半数以上はしない。自分の考えやイメージの外側のものに出会うと、バーンと弾いて終わりみたいな。

朱田専門家になればなるほど、自分の信じるものを重要だと思ってしまう傾向があるから、バイアスになってしまうこともあると思います。

川尻:そうそう。そこを、朱田先生は「こいつ、何言ってんだよ!」と思いながらも、調べることによって、新しい発見や、視野を広げるきっかけを手に入れた。

本質を理解する為には、このアプローチがすごく大切だと思うんですよね。その「きっかけ」を作るのが、この対談の役割だと思っています。


「人間の体は複雑だ」と理解する事が、健康への第一歩


朱田
:はい。あれから6年経って、だいぶ僕の知識も増えました。

川尻:そして、沼にハマっていったんですよね?(笑)

朱田:そうっすね(笑)もし、川尻さんとの出会いがなかったら、今頃幸せな整形外科医でしたよ。「靭帯の位置が2ミリ違う」とかを、一生懸命考えるだけで良かったんだから。

川尻:あはははは(笑)その沼というのは、どんなものでしたか?

朱田:例えば、体の仕組みを理解したり、痛みなどの問題を解決する為には、靭帯の位置を直すといった構造的な問題解決だけでなく、神経と脳の働きや感情が生まれる仕組みを理解しなくては本質的な問題は解決しないことに気付かされました。

これらの深くて複雑な内容を、患者さんに理解してもらうには、どう伝えたら良いんだろう?という悩みが大きいです。

川尻:我々の体はコンプレックスシステム(複雑系)と呼ばれるように、非常に複雑なものなんですよね。原因と結果が、単一的にぴょんと結びつくようなものではない。

それなのに、人間は複雑なものをシンプルにして理解することが得意だから、体に対してもその思考パターンを当てはめてしまった。その結果、今、おかしな事が起きている。複雑なものは、複雑なんだと理解することが大事だなと思っています。

朱田:そうなんです。その複雑さを知ることによって、「実は、自分でも健康になるためにいろんなことができるよね」というのが見えてくると思います。

世の中には民間療法が溢れていて、次々に新たな治療法や商品が出てきては消えていますよね。それを世の中の人は、完全に正しいとは信じていないかもしれないけれど、「もしかしたら意味があるのでは?」とうっすら思っている人もいる。そんな方々に、僕らが話す内容を聞いてもらいたい。

きっと、この治療方法の意味って、本当はこういうことなんじゃないか、とか、もっと本質的な解決方法があるんじゃないか、ということに気がついてもらえると思います。

川尻:例えば、健康に良いと思う○○を、毎日食べているとするじゃないですか。でも、「○○を食べなければ、健康でいられない!」と思ったら、それはマイナスに働くこともある。 

タバコは医学的に健康によくないというのは証明されていますよね?でも、
タバコが本当にその方にとってストレス解消になっていて、「ああ、美味しいな。幸せだな。」と思える時間を作るのなら、プラスに作用することもある。

個人の単位でいうと、一面的に「○○が健康に良い / 悪い」というのは判断しにくいものなんです。だからこそ、どう感じるか?がすごく大事で、ご自身で自分の健康ために、何をどう選んでいくか?という基準を持ってもらいたい。その判断基準というのは、みなさんが思っているそれとはかなり違うと思います。きっと、目から鱗だと思います。


健康の本質を知れば、正しいアプローチが見えてくる


朱田:
世の中には、自分が思っているよりももっと様々な健康へのアプローチの仕方があります。健康の本質を知って広い目で見られるようになると、自分の手の中に選択肢が増えて、こうでなくてはならないという「思い込み」から解放されると思うんです。

そして、何をしたら良いかが、もっとクリアになると思います。

川尻:みなさんが持っている健康の知識というのは、主に昔ながらの考え方をベースにした医療従事者からのものが基準になっていると思うんですよね。

しかし、エビデンスと呼ばれる医療ベースの基準は完璧なものではなく、複雑な人体の一部分を見ているに過ぎません。その外にはヒトというシステムや脳、神経、痛みなど様々なことが複雑に絡み合っている。

朱田:商業化された健康ビジネスや広告の中には、科学的には明らかに誤った知識や迷信も溢れています。だから、健康や生命の本質的な理解をすることで、『実はそうだったのか!」という、発見をたくさんしてもらえると思います。

川尻:体って、複雑だけど面白いですよね!

朱田:そうなんです。この面白さと大切さを、お互いのプロフェッショナルな立場から、この雑談の中で伝えて行けたらと思います。


*この連載は、オンラインサロンMEG※(Medical Emergence Group)で配信されていた対談の一部を編集してお届けします。

※MEG(Medical Emergence Group)は、要素還元的なミクロの視点であるバイオメディカルモデルを基に、解剖学、生理学、生化学などの学問を基礎として発展してきた現代医療と、全体論的なマクロな視点による人体、生命の理解である動作学、神経学、疼痛学などが出会うことにより、ミクロとマクロの両輪によって形作られる新たな医学、医療システム、医療コンセプトを創発する医療従事者のコミュニティグループです。
https://www.medicalemergencegroup.com