【05】「自分が変わると相手も変わる」の仕組み
あなたは誰かの環境にもなっている
さて、前回は、自分に起こっている問題について、状況を変えたかったらまずは矢印を自分に戻そう、というお話をしました。
今回は、他の人の言動があなたにとって問題になっている場合について考察します。
その前に、もう一度、前提をおさらいしましょう。
ある人の言動、感情、パフォーマンス、症状などといったものについて、動作学的に見るときの大前提は、「その人の言動、感情、パフォーマンス、症状といったことは、『個人×環境』が掛け合わさった結果として出てくるアウトプットである」ということです。
イメージはこんな感じ。
では、この図のAさんを、上司や同僚、家族や友だちといった、あなたの身近で、あなたが悩みを抱いている相手に当てはめて見てみてみましょう。
例をいくつか挙げてみますね(太字がその人のアウトプットです)。
「妻がいつもイライラしていて、とばっちりを受けている」
「上司が無理難題を押し付けてきて、精神的にも肉体的にもきつい」
「友人がマウントを取ってくるので、話すのが不快」
「夫が嘘をついていたことが発覚して、信頼がなくなった」
このような状況のとき、私たちはついつい「妻はそもそも感情が不安定だ」「上司は現場の大変さをわかっていない」「友人は見栄っ張りだから」「夫は嘘つきで信用できない」というふうに、あたかもその相手の問題として捉える傾向にありますが、妻や上司、友人、夫の言動(アウトプット)もまた、「個人×環境」の掛け合わせによって出てきているんです。
だから、その人個人にすべての責任があるわけではないんですね。
まずはそこを理解すること。
そして、もうひとつ、忘れてはならないのが、その人にとっての環境には、あなたも含まれているということです。
これを端的に言うなら、Aさんから出てくる言動には、Aさんの環境のひとつの要素であるあなたも関わっているということです。
もちろん、 Aさんとあなたの関係性や状況に応じて、あなたがどのくらいの大きさ、濃さでインパクトを与えているかは変わってきますが、いずれにしてもまったく無関係ということはありません。
そう、妻がイライラしていること、上司が無理難題を言ってくること、友人がマウントを取ってくること、夫が嘘をついたこと、その出来事が起こるさまざまな要因の中には、あなたも含まれているのですよ。
その仕組みがわかると、相手のせいだけにすることがちょっと恥ずかしくなってきませんか?
人によっては、相手の言動に対する不快感が少し減るかもしれません。
が、ここで言いたいのは、仕組みを理解して捉え方を変えましょうというだけの話ではありません。
お伝えしたいのは、あなたが変えてほしいと思っている他人の言動について、あなたにも責任がある、つまり、あなたにも変える力があるんです、ということです。
では、どうしたら変えられるのかというと、ここでもポイントは自分に矢印を向けること。
というのも、その相手の言動は「個人×環境」の結果として出てきているわけですから、その人にとっての環境の要素であるあなたが変わることで、その人の環境が変わって、結果としてその人のアウトプットが変わるということが起こるからです。
「自分が変わると、相手も変わる」とよく言われますが、動作学的にもまさにその通りなんですね。
ですから、自分のことであれ、人のことであれ、何かを変えたかったらまずは矢印を自分に向けましょう。
と言うと、もしかしたら、「妻のイライラでとばっちりを受けていても自分が我慢すればいいんだな」とか、「上司が現場をわかっていないせいで無理難題を言われるけれど、上司も大変だって理解する努力をしよう」というふうに自分の考え方を変えようと思う人もいるかもしれません。
あるいは、「自分の稼ぎが良くなれば妻のイライラが減るかもしれないから、がんばって稼ごう」とか、「上司の無理難題もこなせるぐらいのパフォーマンスをしてやろう」と自分の行動を変えようと考える人もいるかもしれません。
でも、動作学でいう「自分に矢印を向ける」「自分で責任を取る」「自分が変わる」というのは、もう少し突っ込んだ本質的なところ。
というより、本質的なところから変わらなければ、本当には変わらないんです。
次回は、それについて解説したいと思います。